ある雪の降る日に

喜市

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20話 (先:シヴァン / 後フレイ)

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ちゃぷん…

湯船が揺れ、水音がタイル張りの風呂場に木霊する。


「はぁ……。」

見ての通り、今俺は絶賛反省会中だ。
何故なら先程、後輩にセクハラまがいな言動を犯してしまったからだ。

「やっ、ちまった…。怖がらせる訳にはいかないって決めたんだけどな。」

先のダンジョン探索は順調に進み、予定よりも早い帰還になった。流石高位ランクの集団と言ったところか、敵のレベルに肩透かしを食らった程だ。

ただ、やっぱり疲れはあるのだろう。
明らかにいつもの対応ができていなかった。油断したなぁ。

「うーん…。」

さっき起こった情景を思い浮かべる。

それにしても、掴んだ腕もやっぱり細かった。
あれから成長期だって順調に進んで、骨格的には成人男性なんだろうけど。

頬とか、耳やうなじだってすーぐ赤くなるし。
…うなじ結構やばかったな。理性全部持ってかれそうだ。

「あー、もう……。」

のぼせそうになる頭は、立ち上る湯気のせいだろうか、それとも頭の中に思い浮かべる愛しい人のせいだろうか。

湯船の中で1人、悶々と反省会は続いて行った。





ガチャッ…

風呂から上がり、ホクホクとした様子でドアを開ける。
リビングには人影は見当たらなかった。

「お、寝に行ったみたいだな。」

キッチンに置いてあったカップは洗われており、几帳面さが伺えたが、気を使わせてしまったかとも思った。

水を1杯注ぎ、喉を通す。

誘ったは良いけど、これからの時間は軽く言って地獄だ。
今日は寝られるかどうか分からない。

せめて寝ていてくれ、フレイ。

意を決して、寝室のドアノブに手をかけた。











ーーーーーーーーーーー
ガチャッ…

寝室の扉が開く音がした。
シヴァン先輩はゆっくりとこちらに歩を進めているのが気配でわかった。

僕を起こさないように静かにベッドに上がってくる。

ギッ…ギシ…

軋むベッドは2人分の体重を抱えているが、広さは十分だった。

何故かドキドキしている僕は、はたと気づいた。

(あれ、待ってこっちの向きって……)

僕フレイは、壁に背を向けて寝っ転がっていたため、今先輩がいる方を向いているのだ。

(寝たフリバレちゃったら、めちゃくちゃ意識してたみたいで恥ずかしいじゃん!)

「…。」

先輩は何も言わないので、僕の寝たフリには気づいていないみたいだ。

先輩も布団の中に入ってきたのが動きでわかった。
少しできた隙間が冷たく感じて、身震いをする。


「よい、しょ。」

急に腰の下に手が入ってきて、びっくりしていたら、いつの間にかシヴァン先輩の腕の中にいるような体制になっていた。

薄らと目を開いてみれば、眼前には厚い胸板があって…

バクバクとなる心臓が先輩に伝わってしまいそうで頭の中は大混乱だった。

(まっ、まぁでも!先輩スキンシップ多いし、寒いからくっついてるだけでしょ…)

頭の片隅で何とか言い訳をして心を落ち着かせようとする。

それもつかの間。
さわ、と耳を撫でられている感覚がした。

静かで暗い部屋のせいで、より神経がそこに集中してしまう。

左耳に残る傷を薄らと撫でる先輩の手つきは優しくて、特別変な感じはしなかった…でも。

「っん…ふ、せ、先輩?」

いや、これはしょうがない。だってネコ科だもん。耳って結構敏感なんだよ?

思わず声が出てしまい、咄嗟に先輩を呼んでしまった。

「っーー!?…フレイ、起きてたのか?」

「あっ、いや…イマオキタバカリデス。」

「そ、そうか。」

演技力皆無な僕のカタコトな言葉に先輩もそう返す。
若干の気まづい空気に耐えられなかった先輩は口を開いた。

「…ほら、もう寝ろっ!な、はいおやすみ!」

投げやりにそう言って先輩は僕の体制をグルンと変える。

壁側を向かされた僕は少し寂しかったけど、背中側から感じる先輩の温度が暖かくて、安心しきった僕はうとうとと眠りに落ちていった。





ちなみに次の日の朝。シヴァン先輩は結構隈ができてた。

「先輩、寝れませんでしたか?」

「おまっ、…はぁ。いや、でも凄い元気だよ今日は。」

死んだ目をしているが大丈夫なんだろうかこの人。

今日は先輩の手作りの朝ごはんを貰い、1度家に帰った後、寮の入口で待ち合わせたシヴァン先輩と学校に向かった。
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