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10(最終話)
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カチ、カチ、カチ……。
締め切った薄暗い自宅の中で、キーボードを叩く。
向かい合うのは昨日撮った実況の動画が映るPCだ。
基本的にメインで大和がやっていた編集も教えてもらいながら、なんとか字幕を付けたり、切り貼りするくらいは出来るようになった。
チラリと時計を見ると、既に20時を回っていた。
ガチャ……。
「ただいまー」
大和が帰ってきた。
俺がリビングに向かうと、大和は三つほどスーパーの袋を抱えており、白菜や肉などを買ってきたようだった。
「ありがとう、今日も食材買ってきてくれたのか?」
「そうそう、まあ帰り道にあるしな。今からキムチ鍋作るから、ちょっと待ってて」
「ていうか、やっぱり俺が家にいるから、買い出しもするし作るよ?」
「いーのいーの、当番制じゃん。それに家でも編集お願いしてるだろ」
大和はそう言って手を洗い、テキパキとした仕草でキッチンに向かった。
俺は仕事を辞めたあと、家で編集作業などをして悠々自適に過ごしている。
大和は相変わらず仕事をしているが、こうして当番の日になると二、三日分の食材を買ってきてくれる。
——そういえば、ここ最近は全く外に出ていない。
外出する用事がないし、地味な作業をコツコツやることは嫌いではないから、全く苦痛には感じないのだが……。
一旦自室に戻り、編集作業の続きをしていると、食欲をそそるような匂いがした。
「直樹ーできたよー」
「ありがとう! 今行く!」
大和と食卓を囲む。これも既に日常の一部だ。
「次何のゲーム撮る? 結構視聴者さんからリクエストがきてて。
『ホラーゲームやってほしいです! ナオさんすこい苦手そうwww』だってさ」
「いや苦手だよ! えぇー……」
「ホラー要素少ないやつからやってみようよ。絶対盛り上がるって!」
「おぉ……まあ大和もそう言うなら……」
「やろうやろう!
あとさ、ヨーチューブのチャンネル登録もこれだけいったよ」
大和がスマホのヨーチューブチャンネルの画面を見せる。
俺たちが目指していた登録者数に到達していた。
驚きのあまり思わず立ち上がる。
「まじで!?」
「すごいよなー。やっぱり俺たちいいコンビだわ」
大和も顔を綻ばせる。
友達とゲームの話で盛り上がり、
実際に遊んで、しかもこの光景を楽しんでくれる人達がいる。
俺は少し前までは考えられなかった充実感を覚えながら、俺も自然と笑みが溢れた。
大和のスマホの画面に視線を戻すと、
『kenさんから着信がありました』
というメッセージが見えた。
「あれ、大和。なんか通知きてるよ」
「あ、ほんとだ。食べ終わったら連絡しなきゃな」
そういってたわいもない話をしつつ食事をしてから、大和は席を立った。
**
俺は席を立ち、たいして気分は乗らないが、「ken」に折り返し電話をすることにした。
「あー、もしもし?」
「ken」は2コール程度ですぐに電話に出た。
「あ! 大和? 浅木だけど。折り返しありがとな」
浅木健。大学時代の知人だ。
「いやいや、どうした?」
「この前の件で、報告しようと思ってさー。俺、同期が辞めてさ、無事副店長になれそうなんだよな! あれもこれも大和がアドバイスくれたおかげだよ!」
浅木はずいぶんと上機嫌のようだ。
思わずふっと笑ってしまう。
「なんだよそれ。前言ったのは冗談だろ? まさか本当に同期を蹴落とすなんておもってなかったよ」
「いやいや、案外上手くいったんだって。まじでありがとなー」
——まさか俺もこんなに上手くいくとは思わなかったよ。
直樹は無事に仕事も辞めて、ずっと家にいてくれるしな。
「俺は何にもしてないって。まあ頑張れよ」
そう言って話もそこそこに電話を切り上げる。
通話終了のボタンを押し、
「馬鹿な奴」と思わず口にする。
今まで仕事に必要なことも覚えず、面倒な客を押しつけてきただけの奴が、副店長になって業務をこなせるわけないのにな。
とにかく、後は直樹にどうやって俺のことを意識させるかだ。
「こういうのは、いかに事前に準備しておくかが重要だよな」
ツミッターでもゲームのレビューや考察でフォロワー集めをコツコツしていたかいがあった。
最初にそのフォロワー達が実況で再生数を稼いでくれたおかげで、順調にゲーム実況でも人気がうなぎのぼりだ。
さて、準備は整った。
これから二人の世界を作っていこうな、直樹。
——絶対に、逃がさないから。
締め切った薄暗い自宅の中で、キーボードを叩く。
向かい合うのは昨日撮った実況の動画が映るPCだ。
基本的にメインで大和がやっていた編集も教えてもらいながら、なんとか字幕を付けたり、切り貼りするくらいは出来るようになった。
チラリと時計を見ると、既に20時を回っていた。
ガチャ……。
「ただいまー」
大和が帰ってきた。
俺がリビングに向かうと、大和は三つほどスーパーの袋を抱えており、白菜や肉などを買ってきたようだった。
「ありがとう、今日も食材買ってきてくれたのか?」
「そうそう、まあ帰り道にあるしな。今からキムチ鍋作るから、ちょっと待ってて」
「ていうか、やっぱり俺が家にいるから、買い出しもするし作るよ?」
「いーのいーの、当番制じゃん。それに家でも編集お願いしてるだろ」
大和はそう言って手を洗い、テキパキとした仕草でキッチンに向かった。
俺は仕事を辞めたあと、家で編集作業などをして悠々自適に過ごしている。
大和は相変わらず仕事をしているが、こうして当番の日になると二、三日分の食材を買ってきてくれる。
——そういえば、ここ最近は全く外に出ていない。
外出する用事がないし、地味な作業をコツコツやることは嫌いではないから、全く苦痛には感じないのだが……。
一旦自室に戻り、編集作業の続きをしていると、食欲をそそるような匂いがした。
「直樹ーできたよー」
「ありがとう! 今行く!」
大和と食卓を囲む。これも既に日常の一部だ。
「次何のゲーム撮る? 結構視聴者さんからリクエストがきてて。
『ホラーゲームやってほしいです! ナオさんすこい苦手そうwww』だってさ」
「いや苦手だよ! えぇー……」
「ホラー要素少ないやつからやってみようよ。絶対盛り上がるって!」
「おぉ……まあ大和もそう言うなら……」
「やろうやろう!
あとさ、ヨーチューブのチャンネル登録もこれだけいったよ」
大和がスマホのヨーチューブチャンネルの画面を見せる。
俺たちが目指していた登録者数に到達していた。
驚きのあまり思わず立ち上がる。
「まじで!?」
「すごいよなー。やっぱり俺たちいいコンビだわ」
大和も顔を綻ばせる。
友達とゲームの話で盛り上がり、
実際に遊んで、しかもこの光景を楽しんでくれる人達がいる。
俺は少し前までは考えられなかった充実感を覚えながら、俺も自然と笑みが溢れた。
大和のスマホの画面に視線を戻すと、
『kenさんから着信がありました』
というメッセージが見えた。
「あれ、大和。なんか通知きてるよ」
「あ、ほんとだ。食べ終わったら連絡しなきゃな」
そういってたわいもない話をしつつ食事をしてから、大和は席を立った。
**
俺は席を立ち、たいして気分は乗らないが、「ken」に折り返し電話をすることにした。
「あー、もしもし?」
「ken」は2コール程度ですぐに電話に出た。
「あ! 大和? 浅木だけど。折り返しありがとな」
浅木健。大学時代の知人だ。
「いやいや、どうした?」
「この前の件で、報告しようと思ってさー。俺、同期が辞めてさ、無事副店長になれそうなんだよな! あれもこれも大和がアドバイスくれたおかげだよ!」
浅木はずいぶんと上機嫌のようだ。
思わずふっと笑ってしまう。
「なんだよそれ。前言ったのは冗談だろ? まさか本当に同期を蹴落とすなんておもってなかったよ」
「いやいや、案外上手くいったんだって。まじでありがとなー」
——まさか俺もこんなに上手くいくとは思わなかったよ。
直樹は無事に仕事も辞めて、ずっと家にいてくれるしな。
「俺は何にもしてないって。まあ頑張れよ」
そう言って話もそこそこに電話を切り上げる。
通話終了のボタンを押し、
「馬鹿な奴」と思わず口にする。
今まで仕事に必要なことも覚えず、面倒な客を押しつけてきただけの奴が、副店長になって業務をこなせるわけないのにな。
とにかく、後は直樹にどうやって俺のことを意識させるかだ。
「こういうのは、いかに事前に準備しておくかが重要だよな」
ツミッターでもゲームのレビューや考察でフォロワー集めをコツコツしていたかいがあった。
最初にそのフォロワー達が実況で再生数を稼いでくれたおかげで、順調にゲーム実況でも人気がうなぎのぼりだ。
さて、準備は整った。
これから二人の世界を作っていこうな、直樹。
——絶対に、逃がさないから。
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