JOB CHANGE

サクタマ

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第1章 目覚め

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死を覚悟した俺は目を瞑ってしまった。

だが、矢が当たる衝撃がなかった。


「グゾッ! ビゲ!!」

目を開けると目の前には白銀に輝く体毛を持つ虎のような大きな獣がいた。

自分に回復魔法の治癒ヒールをかけていると、獣が此方を向いた。

「ぐるる……」

暖かい視線をこちらに向けている虎に敵意はなさそうだ。

虎の奥に居るはずのホブゴブリン達は逃げたようで姿がない。

「た、助けて、くれたの、か?」

そうだと言うように頷いた白い虎に鑑定をかける。


神聖霊獣ビャッコ。


名前以外の情報はないけど、どうやら聖霊獣のようだ。

「……ぐるぅぅぅ」

「お、おい! どうした!?」

痛むような表情で倒れたビャッコは左足に傷を負っていた。

清掃をかけてから治癒をかけると傷が治り、もう大丈夫といった感じに鳴き声をあげた。

「そうか。よかった!?」

ビャッコが光に包まれて小さくなった。

「ぐるッ!」

「な、なんだ? 小さくなったのか……」

俺の周りを元気に跳び跳ねる子虎はどこか嬉しそうだ。

「……ギルドに報告しに帰るか」

子虎になったビャッコにお礼を言って頭を撫でて、その場を離れる。



……ビャッコは俺の後ろをついてくる。

「なんだ? 付いてくるのか?」

「ぐるぅぅぅ!」

どうやらついてくるようだ。

これも創造神の加護の影響なのかもと思いながら、ビャッコを抱えると、抱えられるのが嫌なのか地面に飛び降りた。

不調なところはないようでピッタリと歩くビャッコに無事王都に帰れるだろうかと不安になった。




「マモル! 無事か!!」

森を抜けたところでエヴァンと出会った。

軽装のギルド職員が森の中へ駆けていく。

「なにがあった?」

「ゴブリン達に異変があると報告を受けてな。統率がとれた団体が居るらしい」

俺は思い当たる節があったので、自分が体験した戦闘を話した。

「ホブゴブリンか……。群れが大きくなってるみたいだな」

難しい顔で考え込むエヴァン。

「それに聖霊様が現れたと……。嫌な予感がするな。聖霊様はどこに行かれたんだ?」

「えっ? 俺の横に居るよ?」

「は?」
「ん?」


「……マジかよ。マジで加護持ちかよ」

「まずった……よな?」

「あぁ、大分な。ユースティリア教が黙ってないだろうな。奴等の中には霊獣が見える奴が居るからな」

それを聞いたビャッコがスッと俺の影の中に潜る。

「今、聖霊獣のビャッコが俺の影に潜った……」

「そ、そうか。……好かれてるみたいだな」

苦笑いしている俺達の側に職員達が戻ってきた。

「マスター! 報告通りです!」

「どうやらゴブリン達が活性化しているようです」

「そうか、緊急依頼を出す! 戻って緊急召集の鐘を鳴らせ! 近いうちに攻めてくるぞ!!」



森の侵入はCランク以上の冒険者だけになった。

Dランクは交代制で森から出てくるゴブリンを草原付近で待ち伏せて討伐となり、Eランク以下は王都の壁付近で王都に入られないように巡回となった。

俺は今日の依頼報告をして宿に戻った。

今日の儲けはホブゴブリン以外で1660G。

ホブゴブリンは検体としてそのまま持っていかれた。

報酬は明日に渡すとのことだ。

集会の話の内容を知っている俺は、ごった返す食堂を尻目にギルドを後にする。




ゴブリン襲撃の知らせは王国にも届いていた。

王の執務室では王と宰相、騎士団長に筆頭宮廷魔導師が集まり、今後の行動を話していた。

「ゴブリンどもが活性化しているようです」

「そのようだな。今回は勇者様達がおられるので、難なく討伐できるだろう」

今回の襲撃を宰相が話し、騎士団長が問題ないだろうと応える。

「女性の勇者様と賢者様は後方支援にし、男性の勇者様と侍殿を前線に出されたらよかろう」

「異論ないはないが、冒険者達も前線に出るのだろ?」

魔導師の提案に騎士団長が同意し、冒険者の動きを宰相に確認する。

「うむ、彼らもゴブリンどもの異常を察して行動するだろう」

「なら、我々騎士団が駐屯地を整え、冒険者達の行動も御するか」

宰相の応えに騎士団長が頷き、冒険者達の行動を制御しようと提案した。

「たしか、勇者様と召喚した者が冒険者となったのだろう?」

今まで黙っていた王が疑問を口にし、その疑問に宰相が応える。

「……その通りでございます。奴が無駄に動き回らないようにドレッド殿にはうまく冒険者を御していただきましょう」

宰相の目はひどく濁った色を輝かせ、騎士団長のドレッドに目配せをする。

「……ははっ。そりゃ大役だわ。……王様、必ずや冒険者達を御し、衝撃を被害なく抑えてみせます」

「宮廷魔導師達も助力いたしますわ」

いつから人を職業だけで判断するような者になってしまったのかと悩む王を余所に話が進んでいく。

「……期待しておるよ」

その声に期待は含まれていないが、そんなことに気付かず3人は臣下の礼をし執務室から出る。

「……神々よ。哀れな我々を見放すことなくお守りください」

王の言葉は誰に届くこともない呟きだった。

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