JOB CHANGE

サクタマ

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第1章 目覚め

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「いらっしゃいませ、マモル様。そろそろ来られる頃かと思い、お待ちしておりました」

クリス商会は白くて大きな建物だった。

商会の門の前でモノクルを着けて執事のような白髪混じりの男性が俺を見つけて話しかけてきた。

「名乗ってないのによく判りましたね」

「マモル様は不思議な服を着てられると聞いておりましたので、見つけることができたのですよ」

門を開けて中に入るよう促されたので、素直に足を踏み入れる。

「当商会への御要望は何でございましょうか?」

「クリス商会さんは色々と手広く商売をされていると聞きましたので、……奴隷を雇おうかと」

「……なるほど」

玄関までの庭は綺麗にガーデニングされており、品がある商会だと印象づけられる。

モノクルさんが玄関の扉を開けてくれて中へ入る。

「応接間へ参りましょう。こちらです」

建物の中は綺麗に掃除がされており、入り口付近には冒険者が使いそうな物が並んでいて、カウンターで区切られた奥には階段がある。

俺はモノクルさんに2階の応接間へ案内され、テーブルを挟む形に設置されたソファーの片方へ座るように促された。

着席後に可愛らしいお嬢さんがティーセットをトレイに乗せて入室してきた。

紅茶を目の前のテーブルに置いて、一礼してから部屋を出た。

……あれは所謂メイド、なのか。

「……うちでは奴隷として売られた成人していない子達はメイドやボーイとして役立てるように教育をしております。自己紹介が遅れましたが、クリス商会会長のエビメロ・クリスと申します」

「か、会長でしたか……。ご存知のようですが、私は冒険者のマモル・クニシロと申します」

「異世界から召喚された荷物持ちポーターさんですね。ただし、戦闘力はポーターに似合わないほどお強いと」

ニヤリと笑うクリスさん。

流石は商会の会長、耳がいいようで。

「……まぁ、今後の活動に戦力がいるとなったので、懐が暖かいうちに奴隷を雇うようにと言われましてね」

「では、戦闘職の奴隷を希望ですね?」

「そうですね。ただ、出来れば全ての方とお会いして決めたいと思うのですが……」

俺の言葉を聞いたクリスさんは少し困惑した表情を見せたが、すぐに笑顔になる。

「……可能ですよ。しかし、少し時間をいただきたいと思います」

「わかりました。どれぐらいかかりますか?」

「それほどはかかりませんので、1階で雑貨を見ていてください」

そうしますと言って応接間を出て、1階で雑貨を見る。

体力回復薬ポーション魔力回復薬エーテル等があり、どれも高級品質なようで効果も値段も高めだ。

手持ちサイズの寝袋やテントがあり、伸縮効果のある魔法が付与されていてかさばらない設計のようだ。

ただし、金貨10枚と値段は高い。

鑑定を使いながら物色していると準備ができましたとクリスさんが呼びに来た。

クリスさんの後について、1階の奥の階段を降りていく。



地下の内装も綺麗になっていて清潔な空間だった。

「まずはこちらの部屋から。どうぞ中へお入りください」

左右にある扉のうちの右側の扉を開けたクリスさんが中へ入るようにと促すので部屋へ入る。

鉄格子で区画されたかなり広い部屋だ。

「この部屋には借金奴隷や犯罪奴隷の者が居ます。凶悪な者はあまりおりませんし、食いぶちに困って犯罪を犯したものが主です」

体格のいい者から線の細い者までいたが、良さげな人がいない。


「あれ? この子は?」

紫色で長髪の蒼白い肌の目隠しをされた女性がいた。

両手両足が欠損していて、他の奴隷達にはなかった首輪がついていた。

「……彼女は、鬼人族の吸血鬼リリィと言い、……戦争奴隷です」

「戦争……奴隷?」

「10年ほど前に帝国と鬼人族の戦争がありまして、その戦争で手足が欠損した彼女は奴隷となったのです」

「欠損は治らないのですか?」

首を横に振るクリスさん。

「回復魔法が効かない呪いをかけられていて、厄介なことに呪いを解いても直ぐに同じ呪いがかけられるそうです」

「目隠しと首輪は?」

「魔力封じの首輪です。魔法が使えないようにしています。目隠しは彼女の、誘惑の魔眼を見ないためです」

数名の彼女を雇った者が彼女の甘言に惑わされて目隠しを外し、誘惑状態になり、血を吸われて死んでいるそうだ。

「彼女と話をしても?」

「構いませんよ。ただし、2階の応接間でとなりますが」

「では、手配をお願いします」

他にめぼしい人がいないので部屋を出て、もう1つの部屋へ入る。

こっちは成人していない子が中心でメイドやボーイとして雇う用なんだそうだ。

気になる子達が数人いるので、先程の吸血鬼リリィがどれぐらいの値段になるのかクリスさんに聞いてみた。

「……そうですね。金貨20枚程でしょうか」

「じゃぁ、あの子もお願いします」

俺はドワーフの女の子とも話がしたいとクリスさんに伝えた。
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