JOB CHANGE

サクタマ

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第1章 目覚め

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実力は概ね予想していた通りで、リリィに言っておいた戦法もある程度形にはなった。

上級魔法をあまり使わず、短縮詠唱が使える初級魔法中心の戦闘スタイルへ変更となった。

ガルムも無理なく魔獣と戦えてたので問題はない。

問題となったのはクロムで、職業が錬金術士なので仕方の無いことなのだが、それでもホーンラビットを見ただけで緊張でガチガチに動けなくなったり、パニックをおこして短剣を振り回したりしてしまっていた。

どうしたものかと悩むも答えが見つからず、リリィ達に聞いたところ、最初のうちはしょうがないですと言っていた。

慣れるしかないなら後方でじっくり魔獣の動きや俺たちの動きを見ているようにと言って魔獣になれるように行動してもらうことにした。



危なげもなく依頼を終えた俺たちはギルドへ報告に行き、昼食を食べて、訓練所を借りることにした。

ガルムと模擬戦をして、お互いに足りない部分を吸収していく。

「ところで、主様はポーターなのですよね? 拳闘士であるガルムと張り合えるというのは物凄く異常なのですが……」

模擬戦を見ていたリリィが質問してきた。

「うん、まぁ、その、なんだ、ちょっと変わっててね」

「ちょっと……ですか?」

ガルムも会話に入ってきてちょっとではないでしょうと突っ込んできた。

クロムもウンウンと頷いている。

「異世界人てのも関係があってね。……これを話すと俺が死ぬか異世界に帰るかするまでずっと奴隷のままだけど、いいのかい?」

「構いません。私は失ってしまった手足が再生されたときから、主様に一生ついていくと決めておりますので」

「リリィがそう言うなら、私も一生ついていきます」

固い決意を表明するリリィとそれに追従するガルム。

「わ、私も。マモル様といれば、もっと勉強になることがありそうなので、ついていきます!」

クロムもこの先俺と一緒にいればなにか面白いものが見れそうという理由でついてくるみたいだ。

「……わかった。なら、話すよ。俺の事」

俺が異世界召喚に巻き込まれた異世界人である事やスキルの構成の事、『転職』の事、そのスキルがリリィ達にも使えること、昨日の夢の事をリリィ達に伝えた。

「な、なんということでしょうか……」

「聖霊獣様が一緒なのも、これから待ち受けているであろう災厄の悪魔の為ということですか」

「……もっと武具が増えないでしょうか」

リリィは頭を抱えて理解しようとしているようで、ガルムは受け入れて何故聖霊獣が一緒なのか納得したようだ。

クロムに関しては武具の事で頭が一杯なようで、ドワーフらしいかな。

「これから出会う災厄の悪魔を討つためにリリィ達の力が必要になると思うから、お互いにもっと強くなろう。頼りにしているからね」

「「はい」」

「承知しました」

3人とも良い笑顔で頷いてくれた。


ーーーバンッ!


訓練所の扉が勢いよく開け放たれて、4人の高校生達が訓練所に入ってきた。

「その話、俺たちもかましてください」

「ひ、火口君?」

「悪いとは思いましたが、外で話を聞かさせてもらいました」

森下ちゃんが頭を下げて盗み聞きしたことを謝った。

「火口や清水は勇者だから、その脅威に立ち向かわなくてはいけないだろ? 死にに行くような事を友達だけにさせれないし。護さん、俺たちに稽古をつけてくれよ」

如月君がイケメン台詞を言う。

まぁ、イケメンで絵になるからしょうがないんだろうけど。

「……助けていただいた恩もありますし」

清水ちゃんは森下ちゃんの後ろに隠れて、頭だけだして恥ずかしそうに何か言ってた。

「……聞かれたんならしょうがないか。でも、俺たちは冒険者だから依頼をこなしてからの相手になるよ? それでも良いなら」

4人の高校生達が頷く。

彼らはそれぞれに決意と強い闘志を目に灯していた。

「でも、学園には行くんだよ。俺よりも凄い人達がいそうだし、この世界の事を学んで、俺にも教えて欲しいしね」

火口君があからさまに嫌な顔をしたけど、他の3人が強く頷くので大丈夫だろう。





王城のとある一室にて4人の影が集まっていた。

宰相であるゴルロイスと騎士団長のモルドレット、宮廷魔導士のヴィヴィアン、ユーサ王の娘(実はゴルロイスの娘)エレインの4人が卓上を囲み座っていた。

「忌々しい奴め。なんなんだあのポーターは」

「なかなか使える方だったみたいですね」

エレインが憤慨するゴルロイスを逆撫でするように言葉を発したあとに、ヴィヴィアンにある計画の状況を説明させる。

「ヴィヴィアン、彼はどうなってるの?」

「しらみ潰しに王国内にある湖を探しています。在るはずの無い伝説の剣を求めて」

「はっ、あいつが戻ってきたら厄介だかんな。勘は良いし、力もある。あいつを押さえながらになると動けないからな」

「大丈夫ですよ。まだまだ旅は中盤に入ったところですし、なにより王都からかなり遠くにいますしね」

「ははっ、あいつがまだ戻らないなら良い。ポーターなんか無視して次の段階に移ればいいだろ?」

「……ふん、もうちょい待て。負の感情が貯まりきっておらん」

ゴルロイスが懐から出した滅紫けしむらさき色に輝く鉱石。

鉱石の中には7つの珠があり、うち5つの珠が輝いていた。

「更なる絶望を……」

ゴルロイスの言葉に頷いた3人は部屋を出ていく。



「……それだけあれば、充分じゃない」

妖艶に笑うエレインの呟いた言葉を聞いたものはいない。

彼女がいるのは鳥も飛ばない上空で、彼女の背には黒き天使の羽根が現れていた。
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