34 / 44
第1章 目覚め
34
しおりを挟む「おやじ!」
「オウグさん!」
俺たちを覆うように展開させていた防御魔法は効果を成していなかったようで、内側にサタンが現れていた。
一番近くにいたと思われるオウグさんが襲われてしまったようだ。
他の4体の悪魔は防御魔法の外にいて、ベリアルが防御魔法に手を伸ばす。
バチッと音を立てて弾かれた手が焦げているところを見ると効果はあるようだが、焦げた手を見てこんなものかといった感じで歩を進める。
バチバチと火花を上げて進んでくる姿が骨になっていき、かなりホラーだ。
ただし、防御魔法の内側に入ったらすぐに筋繊維が、肌が、服が巻き戻るように再生する。
「少々バチッとする程度です」
その言葉を聞いた他の悪魔が歩を進める。
アスタロトは暴風を纏い、レヴィアタンは防御魔法に穴を開けて、アスモデウスはレヴィアタンの後ろからついてきて防御魔法を越えてきた。
「ベリアル、こいつを使え」
サタンの隣へ移動したベリアルが胸元から怪しく光る石?を取り出す。
「なんだありゃ!? それで何をするんだ……」
エヴァンの言葉に答えられる人は居らず、知っているであろう悪魔たちはこちらのことなど無視だ。
「がう!」
影から飛び出たビャッコが威嚇の姿勢で悪魔たちを睨む。
石から黄土色の光を取り出したベリアルはその光を遊ばせながらオウグさんの体に入れる。
「その手を離しやがれ!」
堪らずサタンに斬りかかるエヴァン。
火口君たちに走れと声を上げ、先走ったエヴァンに続く。
「主!」
「彼らの護衛! あとで追いかける!」
ガルムとクロムが火口ちゃんたちを追いかけて走るが、リリィとビャッコはその場にとどまる。
「ぬるいな」
オウグさんを地面に落とし、エヴァンの剣を片手で掴むサタンはエヴァンの剣を折って使えなくする。
「なっ……」
折れた剣を見るエヴァンにサタンの右手が胸に突き刺さる。
「エヴァン!?」
「大丈夫だ!」
拳は左脇の隙間に入っていたようで大丈夫だというエヴァン。
小太刀を抜き、サタンに斬りかかるも、避けられ、エヴァンを俺に向かって放り投げてくる。
エヴァンを片手で受けた俺ごと蹴り飛ばしたサタンはつまらなそうにため息をつく。
「この程度か。期待して損した」
踵を返すサタンの後ろにオウグさんの姿が見えた。
無くなっていた両腕が生えているけど、元の鍛冶で鍛えた筋肉は無く、ひょろりとした腕だった。
「オウグ……さ、ん?」
頭に鯨のイッカクのような角が生えてきて、120cmほどだった身長は160cmを越え、肌は焦げ茶色に、目の色は琥珀に輝いていた。
「目覚めたか、マモンよ。早速で悪いがやつらのことは好きにして良いぞ」
「ありがたき幸せ」
恭しく礼をするオウグさん立った人、強欲を司る悪魔マモン。
「ッ……死にやがれ、オウグ!」
「五月蝿いですぞ」
サタンから標的をマモンに移したエヴァンが殴りかかるも受け止められて、逆に袖口から出てきたナイフで手足を切りつけられる。
「いい加減にしろッ!」
マモンの胴を斬るように振るった小太刀だったが、なんの手応えもない。
「これで終わりよ」
マモンのナイフがエヴァンの頭へ一直線に飛んでいく。
マモンが邪魔で位置の悪い俺はナイフが刺さるまでに間に合わないだろう。
ーーーグサッ
ナイフの刺さった左胸から赤い血がジワッと服に染み込む。
革鎧があったにも関わらず突き刺さったナイフ。
水色の髪が綺麗な女性、サブマスターであるルフルさんがエヴァンを庇い、左胸にナイフが刺さる。
「ルフル!」
手足の動かないエヴァンはルフルさんの名前を呼ぶことしかできなかった。
「よかった。……エヴァン。あなたを、まもれたわ」
倒れる彼女を受け止めて上げられず、地面に倒れる。
「今すぐ回復魔法を……」
「おっと、させませんわ」
ルフルさんの近くへ寄ろうと動き出した時に、俺の体は全く動かなかった。
レヴィアタンが額にある3つ目の目を開いて、俺を見ていた。
「女に救われるとはな。運の良いやつだ」
「なぁ、あいつ試してみればいいんじゃない?」
サタンがエヴァンの運の良さを誉め、アスタロトがベリアルに目配せをする。
ベリアルが頷き、石から白い光を取り出し、エヴァンの体へ押し込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる