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第1章 目覚め
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しおりを挟む「リリィ、ルフルさんを安全な場所へ」
リリィに安全な場所へ行くように促し、小太刀のカグツチを構える。
「エヴァン! ルフルさんは無事だぞ! お前も目を覚ましやがれ!」
「ぐぁっ、くっ……がっ……」
急に痛み出したように頭を押さえるベルゼビュートだが、サタンの鳩尾への一撃で気を失わされた。
「受肉には成功しているのだ。易々と戻させるか」
ベリアルに投げて渡すサタンを睨む。
ビャッコを纏うことでスピードが上がっている今が好機なのだろうが、一切の隙がないサタンに攻めれない。
「クリムゾン」
一太刀入れることができても傷を治されては厄介なので、カグツチの傷を癒せない効果を発動させておく。
「来ないのか? なら、こちらから行くぞ!」
力強く踏み出すサタンは瞬時に俺との間合いを詰める。
振り上げた右手が俺の胴を目掛けて振り下ろされるのでその軌道にカグツチを滑らせる。
右手の甲から右肩にかけて刀傷が入り、黒い血が流れる。
それでも、サタンは俺の右脇腹を狙う左拳を振るう。
「ぐあっ」
それをモロに受けて吹き飛ばされる。
殴られた衝撃で脇腹の骨が何本か折れ、ギルドの建物に打ち付けられた衝撃で背中がかなり痛い。
ミクマリにはヒビが入っていて、かなりの衝撃だったことを物語る。
回復魔法をかけて立ち上がる。
使用できる回復魔法が柔軟に効果を発揮してくれるのでかなり助かる。
「ん? 傷が回復してないか……。ベリアル!」
「……傷を癒せないようです。回復魔法は効果がなさそうです」
「そうか。わかった」
サタンはベリアルに回復魔法をかけてもらおうとしたみたいだが、ベリアルが傷の状態を確認して的確に状態を告げる。
それを聞いたサタンは傷に向かって火を吹く。
「血は止まったが、派手な傷をつけられちまったな!」
刀傷を焼くことで血を止めたサタンは俺を睨む。
「厄介な武器だな。しかし、もう攻撃を受けないぞ」
さらにスピードを上げたサタンが赤黒く光る炎を纏って迫ってくる。
繰り出される攻撃を刀でいなして傷をつけようとするが、炎に阻まれて傷がつかない。
しかも、スピードが上がったことでこちらが受ける攻撃が増えてきて徐々に体力を削られていく。
「ぐっ……がはっ」
右足で力強く蹴られた俺は宿屋の壁に激突し、室内に派手に転がる。
「マモルくん!?」
マルサさんが駆け寄ってきてハイヒールをかけてくれる。
「マルサさん、メルちゃんを連れてここから離れて」
よろけながら立ち上がった俺は彼女たちを背にして構える。
「でも……」
「いいから早く!」
「なんだ? そいつらが大事か?」
室内に入ってきたサタンは素早い動きで背後にいるメルちゃんの腕を掴みあげる。
「てめぇ! 離しやがれ!」
「ふは、ははは、はーっはっはっは」
手が出せない俺を見てサタンが大いに笑う。
「その武具を手放せば、この小娘を離してやろうじゃないか」
傷を癒せない状態にしたカグツチや致命傷となる攻撃を防ぐミクマリを警戒してか、サタンが交換条件だと言わんばかりに発言する。
「くそっ」
手放せばこちらがやられる。
それを見越してか、ミシミシと音を立てるようにメルちゃんの腕に力を入れるサタン。
「やらせないよ!」
マルサさんが手に清らかな魔力を込めて、サタンを殴る。
「ぐおっ、……なんだ? やるじゃねえか」
マルサさんを睨むサタンの一瞬の隙をついてカグツチをサタンの頭目掛けて投げる。
「ぐっ、ぐあああぁぁぁ……」
サタンは左目に突き刺さったカグツチの痛みにメルちゃんを離した。
床に落ちたメルちゃんを抱えてマルサさんが駆け寄ってくるので、2人を抱えて室内から飛び出す。
「まだ生きているとは驚きだな」
外に出た俺が見た光景はアスタロトに捕まった火口君たちとリリィたちだった。
ベルゼビュートは気絶から覚めたようでルフルさんを大事そうに抱えており、ベリアルが頭を撫でながら聞きとれない呪文を唱えていた。
「手を出すなよ、お前たち!」
サタンがカグツチを左目から引き抜きながら室内から出てきた。
絶体絶命だと、心が折れかけた俺は藁にもすがる気持ちで天を仰いだ。
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