殿下、真実の愛を見つけられたのはお互い様ですわ!吸血鬼の私は番いを見つけましたので全力で堕としにかかりますから悪しからず

蓮恭

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7. 双子ちゃんたちはとても可愛らしいわ

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「アレックス様、これで水やりは終えたと思いますが他に何かお手伝いすることはありますか?」

 アドリエンヌのドレスは泥と水で汚れ、一部分はどこかに引っ掛けたのか破れていた。
 それでもそんなことを気にする風でもなく、次の仕事を求めるアドリエンヌに、アレックスはため息を吐いた。

「今日の作業はここまでです。やっぱりドレスがボロになってしまいましたね。……もし良ければ邸内で汚れを落としてください。」

 アレックスは相変わらず仏頂面だが、それでも少し柔らかな口調に変化していた。

「ありがとう存じます。それでは遠慮なく。玄関から入るのは初めてですのに、このような格好で申し訳ありません。」
「いや、そもそも勝手に屋根裏から入るのはやめてもらえますかね。」

 アドリエンヌはアレックスの言葉に微笑みで返したのみで、玄関ホールに入るまでにパンパンとドレスの泥を出来る限り払った。



「「アレックスー!おかえり!」」

 玄関ホールへ足を踏み入れるとすぐに廊下から金髪で青い目をしたまるで対の人形のような二人の幼な子が走り寄ってきた。

「「その人、誰?」」

 同じ顔をした男女の子どもは声を揃えてアレックスに尋ねた。
 アレックスが口籠もっている間にアドリエンヌは華麗なカーテシーを決めた。

「アドリエンヌ・ド・シャトレと申します。アレックス様の婚約者になる予定ですわ。どうかよろしくお願いしますわね。あなた方のお名前は?」
「いや、婚約者にする予定はないですけどね。」

 アドリエンヌの完璧な仕草に一瞬惚けに取られた様子の子どもたちは、パアアーッと頬を上気させて笑顔で答えた。
 アレックスはその様子に辟易とした表情をしている。

「「アレックスの婚約者!可愛いお姉さん!」」
「私はマリーよ。」
「僕はフィリップ。」
「「私たち、双子の姉弟なの。」」

 声を揃えて元気に答える双子に、アドリエンヌは頷きながら微笑んだ。

「よろしくね。マリー、フィリップ。宜しかったらこちらをどうぞ。」

 そう言ってアドリエンヌは持参した焼き菓子の入った籠を双子へ渡した。
 双子は籠の中を覗き、クンクンと鼻をピクピクさせてから喜びの表情を浮かべた。

「「いい匂い!お菓子だー!」」

 そう叫んだ双子は廊下をバタバタと奥へ走り去って行った。

「すみません。焼き菓子など、久しぶりだったもので。ありがとうございます。」

 気まずそうに視線を斜め下の床に下ろしながらアレックスは礼を言った。
 
「宜しいのです。双子ちゃんたちが喜んでくだされば我が家の料理人も喜びますわ。」
「……それでは、サロンへどうぞ。」

 アレックスはアドリエンヌの少し前を歩き、サロンへと案内した。
 邸内は昨晩アドリエンヌが窓から盗み見た時と変わらずに落ち着いた雰囲気で、廊下に飾る絵画や調度品は年代物のようであった。

「こちらへ。ソファーにお掛けになって少々お待ちください。」

 アドリエンヌをサロンへ案内したアレックスはさっさと部屋の扉から出て行った。
 はしたないと思いながらも、部屋の中をキョロキョロと見回したアドリエンヌはやはり家具や調度品が綺麗に手入れされており、どれも年代物でどこか居心地が良いことにホッとした。

「お待たせしました。ハーブティーですが、宜しいですか?」
「アレックス様が淹れてくださるのですか?」
「我が家はこちらのタウンハウスには使用人を置いていませんので。」

 そう言ってハーブティーを慣れた様子で注ぐアレックスに、アドリエンヌは頬を赤く染め熱い視線を送るのであった。

「お茶を淹れるアレックス様……とても素敵ですわ。」
「何ですか、それ。このハーブティーは自家製なのでお口に合うか分かりませんが。」
「ありがとう存じます。とてもいい香りがしますわ。お色もとても美しい赤ね。あら、酸味が感じられて美味しい!」

 普段は紅茶ばかりで、ハーブティーは初めて口にしたアドリエンヌはその美味しさに思わず目を瞠った。

「これはローズヒップティーです。紅茶の茶葉は高価なので、我が家では自家製のハーブティーを飲んでいるのです。侯爵家の御令嬢には失礼かと思いましたが。我が家はこのように茶葉さえ買えぬ貧乏伯爵家ですから侯爵令嬢の貴女との婚約などとても釣り合いません。」

 自らもローズヒップティーを口にして、アレックスはアドリエンヌへ頭を下げた。

「アレックス様、お顔を上げてくださいませ。このローズヒップティーはとても美味しゅうございます。それに私にとっては貧乏だろうが何だろうが些末なことなのですわ。だってアレックス様は私の番いなのですから。もし貴方が平民だとしても、私は気にしませんわ。それほどまでに番いとは絶対的な存在なのです。ですから是非私との婚約を前向きに検討していただけませんか?」

 それほどまでに言われればこれ以上何も言えないアレックスは、黙ってカップを傾けた。


――バーンッ……!

「「アレックスー!アドリエンヌ!お菓子、食べよう!」」

 サロンの扉が勢いよく開き、双子たちが飛び込んできた。

「おい、お前らもっと扉を丁寧に扱えよ。」

 そう言って双子たちを睨みつけたアレックスだったが、やがて二人の頭をワシワシと撫でた。

「アレックス、素敵な御令嬢がいらしているとか。私にも紹介してくれないのかしら?」

 開きっぱなしのサロンの扉から、とても華奢な体格のアレックスと同じ濡羽色の髪をした夫人が笑顔で現れて声を掛けた。





 
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