殿下、真実の愛を見つけられたのはお互い様ですわ!吸血鬼の私は番いを見つけましたので全力で堕としにかかりますから悪しからず

蓮恭

文字の大きさ
12 / 40

12. まことに愚かな人間だな


 シャトレ侯爵は国王からの呼び出しに王城へと訪れていた。
 先日のパーティーでこの城に来た時とは違って、どこか足取りは軽かった。

「あの愚か者の王太子と婚約破棄をしてもらえて、その上国王からの謝罪を賜るなど僥倖だな。ここはしっかりと誠意を見せてもらうことにしよう。」

 吸血鬼の証である紅目を細め、フッと笑った侯爵はこれから起こる事を想像してか極めて満足気な表情であった。

 


 何度来たか分からない謁見の間は相変わらず豪華絢爛で、この貧乏国には相応しくないものであった。
 それも、この愚かな王族のくだらない見栄のせいである。

「シャトレ侯爵、本日はわざわざご足労いただいて申し訳ない。それと、先日の生誕記念パーティーでの出来事は本当にすまなかった。」

 玉座に腰掛けた国王は恐縮した様子で小さくなっており、玉座の下で堂々と礼を取る侯爵とどちらが立場が上なのか分からないほどであった。

「国王陛下、婚約破棄の件についてはユベール王太子の一方的な宣言によって我が家の不名誉となりましたこと、大変遺憾なことです。」

 侯爵は厳しい表情で国王に向かって遺憾の意を述べた。

「誠に申し訳なかった。この件については慰謝料の支払いをすべきところではあるのだが……貴殿も承知のようになにぶんわが国は金銭的な余裕がなくてな。そこで、儂のできる範囲のことにはなるが侯爵家の望みを叶えよう。」

 侯爵は思った通りの展開になったことに、危うく浮かびそうになる喜びの笑みを堪えている。

「我が侯爵家の望みですが、面倒な手続きなどせずとも侯爵領への移民の受け入れをすることを認めていただきたい。」
「移民の受け入れだと?」
「その通りです。実は侯爵領をもっと発展させる為、労働力を補う為に他国からの移民を受け入れたいのです。しかし移民の受け入れは面倒な手続きがあり、今まではなかなか実現するのは難しかった。そこで陛下のお力によって我が侯爵領への移民受け入れ手続きを簡素化し、積極的に許可していただきたいのです。」

 侯爵領が発展すればますます税収が上がるかもしれないと考えた欲深い国王は、そのようなことでこの侯爵の機嫌が取れるならばと快諾した。

「陛下、我が侯爵家の願いを聞いていただいてありがとうございます。ユベール王太子には、是非あのネリー・ド・ブリアリとかいう令嬢とお幸せに。我が娘も真実の愛に出会ったようですから、ちょうど良かったですね。」

 侯爵としては娘があの愚か者に嫁ぐことにならず、その上移民の受け入れについても良い返事が貰えたことで何ら損はしておらず、何ならメリットしかない話であった。

「それでは陛下、どうかよろしくお願いします。」

 こうして謁見室を後にした侯爵は、やっと遠慮なく喜びの笑みを浮かべられるのであった。

「親子揃って愚かな人間よ。」

 侯爵は肩を竦めて独りごちた。


感想 5

あなたにおすすめの小説

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

私は平民、あなたは公女〜入れ替わりは食事だけの約束ですが!

みこと。
恋愛
平民の少女コニーはある日、筆頭公爵家に連れてこられた。 魔法で眠らされた公女・エヴァマリーの身体に入り、公女の代わりに食事をして欲しい。でなければ意識のない公女が、衰弱して餓死してしまう、と。 稀有なことに、コニーとエヴァマリーの魂の形は同じで、魔道具を使えば互いの身体を行き来出来るのだと言う。 「公女様の代わりに、ご飯を食べるだけのお仕事」 権力者相手に断れず、コニーはエヴァマリーの身体に入るが、やがてその他学習や、彼女の婚約者とのデートも命じられ……。 そんな中、本物の公女がコニーの身体で目覚めた。評判の悪女だった公女は、"使い捨ての平民"だからと、コニーの身体で悪さを始める。 公女と平民の入れ替わり物語、全7話、いっきに完結予定です。お楽しみください。 ※「小説家になろう」でも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

阿里
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……