殿下、真実の愛を見つけられたのはお互い様ですわ!吸血鬼の私は番いを見つけましたので全力で堕としにかかりますから悪しからず

蓮恭

文字の大きさ
13 / 40

13. どこか具合でも悪いのですか


 あれから毎日のようにアドリエンヌはフルノー侯爵家のタウンハウスへと足を運んでいる。

「アレックス様、今日は何をお手伝いいたしましょう?」

 アドリエンヌはアレックスの手伝いをする為に作業用の簡素なワンピースを仕立てた。
 リネンの白いワンピースは、初めて手伝いをした日にアレックスが身につけていたシャツと同じような素材で、少しでもアレックスと同じでありたいと願うアドリエンヌの気持ちを表しているかのようだった。

「今日はまず野菜とハーブの収穫を。それにしても、アドリエンヌ嬢のような令嬢が毎日のように畑仕事をして疲れないのですか?」

 アレックスは飽きもせず毎日訪れては手伝いを申し出るアドリエンヌに、初めて会った時よりは少しだけ態度を軟化させていた。

「私たち吸血鬼は体力もありますし、力もあるのです。ただの御令嬢ならいざ知らず、私は全く平気ですわ。ご心配ありがとう存じます。アレックス様に心配していただけるなど、嬉しいですわ。」
「別に心配している訳ではありません。毎日飽きもせずよく来るなと思っているだけです。」

 そんな突っ慳貪つっけんどんなアレックスの態度に隠された優しさにアドリエンヌは気づいていたから、明るい表情で嬉しい気持ちを隠せなかった。

「アレックス様、畑の手入れはアレックス様の役割なのですか?」

 アドリエンヌが訪れた時、いつも庭で畑仕事をしているのはアレックスであった。

「別に決まっている訳ではありません。ただ、僕は野菜を作ったり花の手入れをすることが好きなのです。ですから好んでしているだけですよ。」
「そうなのですね。私もこちらで初めてこのようなことをさせていただきましたが、とてもやりがいがあって楽しいことだと知りましたわ。これからも是非一緒にお手伝いさせてくださいませね。」

 そう言ってニコニコと笑うアドリエンヌを、アレックスは今までとは違って僅かにではあるが柔らかな視線を向けた。

「貴女は変わり者です。どんなに突き放しても面倒な事を頼んでも前向きで、笑顔なのですから。」

 アレックスの言葉にアドリエンヌは暫し瞠目したが、やがて花が綻ぶような華やかな笑顔を浮かべて首を傾げた。

「だって、私はアレックス様のことをとてもお慕いしているのですもの。こうして傍に置いていただけるだけで幸せなのですわ。」

 アドリエンヌの銀の髪がサラサラと揺れて、ルビーのような美しい紅い瞳はアレックスを見つめて煌めいた。
 そんなアドリエンヌに、束の間アレックスは見惚れたのである。

「貴女のその楽観的な性格を僕も見習いたいですよ。……そうすればもっと気楽に吸血鬼の貴女を受け入れることが出来るのかもしれない。」

 アレックスは少し離れた場所に居たアドリエンヌには聞こえないほどのごく小さな声で呟いた。

「……アレックス様。」

 しかし、優れた五感を持つアドリエンヌにはしっかりと聞こえていたのだ。
 アドリエンヌは頬を朱に染め、熱くなった顔を両手で扇いだ。
 しかしそれでも身体の熱は逃げないようで、そのうち苦し気な呼吸へと変化した。

「はあ……ハア……っ……はあ……。」

 突然苦悶の表情で胸を押さえ、しゃがみ込んだアドリエンヌに驚いてアレックスは走り寄った。
感想 5

あなたにおすすめの小説

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

私は平民、あなたは公女〜入れ替わりは食事だけの約束ですが!

みこと。
恋愛
平民の少女コニーはある日、筆頭公爵家に連れてこられた。 魔法で眠らされた公女・エヴァマリーの身体に入り、公女の代わりに食事をして欲しい。でなければ意識のない公女が、衰弱して餓死してしまう、と。 稀有なことに、コニーとエヴァマリーの魂の形は同じで、魔道具を使えば互いの身体を行き来出来るのだと言う。 「公女様の代わりに、ご飯を食べるだけのお仕事」 権力者相手に断れず、コニーはエヴァマリーの身体に入るが、やがてその他学習や、彼女の婚約者とのデートも命じられ……。 そんな中、本物の公女がコニーの身体で目覚めた。評判の悪女だった公女は、"使い捨ての平民"だからと、コニーの身体で悪さを始める。 公女と平民の入れ替わり物語、全7話、いっきに完結予定です。お楽しみください。 ※「小説家になろう」でも掲載しています。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】「お前を愛する者などいない」と笑われた夜、私は“本物の王子”に拾われた

波依 沙枝
恋愛
毎日更新 侯爵令嬢セレスティアは、第二王子リヒトの婚約者。 冷たくされても「愛されている」と信じてきた――けれど、ある夜すべてが壊れる。 「お前みたいな女を愛する者などいない」 絶望の底で手を差し伸べたのは、“本当の王子”だった。 これは、捨てられた令嬢が見出され、溺愛され、 嘲笑った婚約者がすべてを失って後悔するまでの物語。 今さら縋りついても、もう遅い。 彼女はもう、“選ぶ側”なのだから。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。