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16. アドリエンヌよ、これは褒美だ
シャトレ侯爵はあの後すぐにフルノー伯爵へ面会し、商談を行ったのだった。
「フルノー伯爵、突然の面会に応じていただいてありがとうございます。今日はアレックス殿から聞いたフルノー伯爵領のことで娘が気付いたことがあると私に話をしてきたのですが、どうやらそれは伯爵にとっても私にとっても良いお話になりそうなので参りました。」
「アレックスが?一体何でしょうか?」
思った通り、フルノー伯爵は森林の価値に気づいておらず侯爵の話を聞いてひどく驚いていた。
伯爵領は何もないところであった為に地元の者以外が訪れることも少なく、誰も今まで森林で儲けようなどと思わなかったと言う。
それどころか、少ない平地を何とか開墾して作物を作ろうとしたものの痩せた土地で領民は貧しいと言うのだ。
そんな状況を一変させるような侯爵の商談に、伯爵は喜んで話に乗った。
「それでは、シャトレ商会に独占で木材や加工品を卸す代わりに技術者と道具を貸していただけるのですね。」
思わぬ好機に伯爵は喜びを隠せずにいた。
「はい。そして伯爵領で今後も林業を続けていくには継続的に従事する者を育てなくてはなりません。それも、領民の中から希望する者に技術者からの指導をいたしましょう。後々は私の配下の者ではなく、領民が主体となって林業を行えるようにするのです。そうすれば伯爵領は永続的に豊かな領地となりましょう。」
侯爵としても実りの多い話である。
そもそもこのやり手の商会長は儲け話に関してはシビアなのだ。
儲けにならないことはいくら娘の頼みとはいえこのように迅速には動かなかった。
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
「お任せください。あと、アドリエンヌはああ見えて私の仕事を間近で見てきましたから目利きなのです。伯爵領の現場で指示や私への報告をさせようと思うのですが、もし宜しければ領地へお邪魔させても宜しいかな?」
「それは勿論!宜しければ我が家でお過ごしいただいても構いません。……あ、でも侯爵令嬢のアドリエンヌ嬢からすれば貧相な邸だとは思うのですが……。」
人の良いこの伯爵はまんまと侯爵の策略通りに返事をする。
「いえいえ。アドリエンヌは嫡男のアレックス殿のことを好いておりますから、是非滞在させていただければ喜ぶと思います。私としても、アレックス殿が義理の息子となってくれれば嬉しいのですがね。」
侯爵は良い情報をもたらしたアドリエンヌの為に褒美を与えた。
なかなか手強いであろう人間の番いを、本物の番いとする為にはそれほどの積極性と共有する時間がないと難しいのだ。
「ははは……。もしそうなればいいのですがね。それでは大したおもてなしはできませんが、アドリエンヌ嬢には心ゆくまでご滞在くださいとお伝えください。」
伯爵は領地の経営が上向くかも知れないという喜びと、そのきっかけを作ってくれたアドリエンヌと侯爵には感謝してもしきれないという気持ちから侯爵の申し出を快く引き受けたのであった。
「ありがとうございます。これからもどうか娘共々よろしくお願いします。」
侯爵は商談が丸く収まったことに喜びの表情を隠さなかった。
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