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21. 女性にだって働き口は必要ですわ
シャトレ商会の派遣した人材が到着し、アドリエンヌも伯爵とアレックスと共に早速森林の様子を視察した。
「これらは間違いなくホワイトオークですね。今から手入れして、二、三ヶ月先には伐採できるでしょう。」
職人たちはこの森林は立派なホワイトオークの宝の山だと太鼓判を押して笑った。
「本当ですの?宜しくお願いしますわね。伯爵、良かったですね。今から下準備を行うことになるでしょうが、きちんと指導を受けて皆で頑張りましょう。」
林業を生業とするという職人に、領内の希望者も協力して下刈りやつる切りを行うことになった。
領内でも、田畑の仕事よりも今後は林業が主になるかも知れないという噂が広がると、希望者は多く集まったのだった。
「アドリエンヌ嬢、ありがとう。シャトレ侯爵にも本当に感謝する。」
「お義父様。喜ぶのはまだまだですわよ。これからはこの伐採するホワイトオークを使って家具を作るのです。その職人も育てていかなければなりませんわ。それも、父に手配を頼んでおりますから。今から少しずつでも希望者を募っておいてくださいね。」
「なんと。そのようなことまで、かたじけない。アドリエンヌ嬢と侯爵には感謝してもしきれんな。」
もう、『お義父様』とアドリエンヌが伯爵のことを呼ぶことに慣れたのか、アレックスは否定しなかった。
アドリエンヌとシャトレ侯爵はこの地で採れたホワイトオークをそのまま木材として出荷する分と、家具に加工して販売するものと両方を考えていた。
家具の職人は商会のツテで既に領内へ来てもらっていたから、早めに働き手を探さねばならない。
しかし、田畑の仕事は儲からないと嘆く若者も多くいるので募集すればすぐに集まりそうではあった。
アドリエンヌは、視察から帰ると早速侯爵へ手紙を綴った。
そうして書かれた手紙に封をして、アドリエンヌは眷属の梟ヘルメスを呼び出した。
「ヘルメス、久しぶりね。元気だった?お父様のところにお願いしますわよ。」
甘えたようにアドリエンヌに擦り寄ったヘルメスは頭を一撫でしてもらってから空へと飛びたった。
「さあ、次はローズヒップね。」
アドリエンヌはそう独りごちてから伯爵夫人のところへと向かった。
伯爵夫人はサロンで双子たちと過ごしていると家令のマシューから聞いたアドリエンヌは、そちらへと向かった。
「お義母様。お尋ねしたいことがあるのですが。」
「あら、アドリエンヌさん。ご一緒にお茶でもいかが?相変わらずローズヒップティーなのだけれど。」
双子たちは使用人と絵本を読んでいる。
夫人はローズヒップティーと焼き菓子でお茶をしていた。
「このローズヒップティーのことなのですが、ローズヒップの取れるイヌバラがこの領地では豊富に咲いているのだとか。領内のローズヒップを合わせれば大体どのくらい収穫できるのでしょう?」
「そうねえ、この領内ではイヌバラを生垣にしているところも多いし、自生しているものも多いから実が出来ていても収穫せずにそのままになっていることが多いのよ。だからもしそれを全て収穫すれば売れるくらいはあるでしょうね。ふふっ……。」
夫人は比喩と冗談のつもりで『売れるくらい』と言ったが、アドリエンヌは本気だった。
「それでは売りましょう。ホワイトオークに合わせてローズヒップもこの領地の特産品にするのです。」
人差し指を天に向けてアドリエンヌは力強く宣言した。
「ローズヒップも?ローズヒップティーは確かに美味しいけれど、それはうちが貧乏だから茶葉の代わりにハーブティーにしているだけで……。皆が欲しがるかしら?」
「お義母様、ローズヒップには美容を始め色々な効果があるのですわ。ただの美味しい飲み物ではないのです。その付加価値をもっと宣伝すれば十分に特産品になり得ますわよ。それに、収穫から加工や販売までこの領内で仕事に就くのが大変な女性たちの働き口にもなります。希望する女性たちには是非働いていただきましょう。」
「成る程。素晴らしいわ!この領内ではあまり女性の働き手を受け入れるところがなかったのよ。身近なローズヒップでそのような産業となるなんて思いもしなかったわ。」
夫人はいたく感心してアドリエンヌを褒め称えた。
「アレックス様に私を婚約者と認めていただくためには、まだまだ頑張らないといけないのですわ。」
夫人に向けて決意を述べたアドリエンヌは力強く頷いた。
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