殿下、真実の愛を見つけられたのはお互い様ですわ!吸血鬼の私は番いを見つけましたので全力で堕としにかかりますから悪しからず

蓮恭

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32. お父様、きちんと説明してくださいませ

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「はあ……。お父様、流石に説明してくださいますわよね?」

 目の前で突然起きた出来事に、もしかしてと想像していた事が現実になったのねとため息をついたアドリエンヌ。

 やはりきちんと説明してもらう必要があるとジトっと睨んだ先の侯爵に返答を求めたのだった。



 事が起こる少し前、アドリエンヌは侯爵とともに王城へ到着した。
 そしてやはり豪華なサロンへと通され待っていれば、そこに憮然とした王太子ユベールが現れた。

「シャトレ侯爵、アドリエンヌ久しいな。」
「王太子殿下に拝謁いたします。お久しぶりでございますわね。お元気でしたか?」
「はっ!元気だったかだと?お前が伯爵家の息子と婚約を結んでも、私はネリーと未だ婚約を結べていないんだ!…………いや、今日はやめておこう。謝罪をするんだったな。ついいつもの調子になるところだった。」

 勢いよく返事をしたものの、途中からブツブツと独り言を言う王太子は相変わらず憮然とした表情で、結局本当に謝罪のために呼び寄せたのかどうか雲行きが怪しい。

「今日は私がお前たちに謝罪をしようと思ってな。先般のことについてはすまなかった。」
「はあ……。確かに謝罪ですわね。」
「十分な謝罪だろう!大体、お前のような可愛げのない女を婚約破棄したからって何故私が謝らなきゃならんのだ。」
「殿下、またそのようなことを仰っては謝罪になっておりませんわよ。」

 侯爵はずっと黙って様子を見ているようで、口を開くこともなくじっとしていた。
 段々と苛々してきた様子の王太子は、やはりいつものように癇癪を起こした。

「煩い!お前のそのような生意気なところが私にはふさわしくないのだ!いくら見目が良いからといって可愛げがなければ女の価値などないわ!」
「成る程、見目は褒めてくださると?」
「おい!私の揚げ足ばかり取るな!大体、王族である私が謝罪しているのだからお前達も少しは悪かったというような態度をしないか!これだから成り上がりは……。大体、私と婚約破棄してからすぐに他家の者と婚約を結ぶなどその相手の男も物好きなことだ。」

 そう言って王太子がアレックスのことまで言及した時、アドリエンヌの紅い瞳が揺らいでそして煌めいた。
 王太子の言葉が逆鱗に触れ、怒りのオーラを纏ったアドリエンヌは目の前の愚者に言い放った。

「殿下……いえ脳みそがアリンコ並みにしかない愚かな人間よ、私の愛しい番いについてお前にそのようなことを言われる筋合いはないわ。お前のような人間など、この国の障害にしかならぬ。殺されたくなければ口を慎め。」
「な……!何だと!お前!不敬だぞ!」

 突然アドリエンヌの口調が変わったので、王太子は動揺しながらも何とか強がった。

「アドリエンヌ、もう良いか?」

 先ほどまで口を挟むことなく黙っていた侯爵がアドリエンヌに問うた。

「最後くらいお前の気が済むようにすれば良いと黙っていたが、もうこちらの方が聞くのも耐え難い。」

 そう言って侯爵がギラリと王太子を睨みつけ、その両の手を侯爵の手で軽々と拘束した。
 少しでも王太子が動けば骨が折れそうなほどに軋んでいる。

「や、やめろ……!」
「どうせ初めからこうなる予定だったのだがな。」
「グッ!手が……痛いっ……!」

 恐怖と痛みで体が動けない様子の王太子は、どんどんと首筋に近づいてくる侯爵の顔にひどく慄いていた。

――ヅプッ……!

「うわ……ッ!…………。」

 王太子は一度小さく呻いたが、恐怖で失神したようだ。
 そしてその首筋には二本の牙の跡が残っている。

――ヅプリ……

 そしてもう一度、侯爵の牙が王太子の首筋に立てられた。
 その感覚に失神から覚めた王太子の瞳は青い瞳から、紅く変わっていたのである。

「王太子、己のすべきことは分かるか?」

 手と身体を離した侯爵が王太子に問いかけた。

「はい。」

 どこか虚な紅い瞳は王太子が侯爵の眷属となった証であった。

 そうして話はこの冒頭へと戻るのである。


 


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