殿下、真実の愛を見つけられたのはお互い様ですわ!吸血鬼の私は番いを見つけましたので全力で堕としにかかりますから悪しからず

蓮恭

文字の大きさ
33 / 40

33. やはり只者ではないお父様の考えは壮大なのです

しおりを挟む

 急に大人しくなった王太子は直立不動で部屋の隅に居て、よく見れば何故か片足立ちで立っている。

はどういうことですの?」
「あれ、とはあの愚者を眷属としたことか?それとも奴が今大人しく部屋の隅で待っていることか?」
「両方ですわ。それにフルフルと震えながらも片足立ちですし。」

 侯爵はチラリと王太子に目をやり、フンっと鼻で笑って答えた。

「元々この国に来た時から考えていたことだ。片足立ちなのはただの鬱憤晴らしだ。ここ王城では話せん。一旦帰ろう。」
「そうですわね。では、王太子殿下ごきげんよう。」

 アドリエンヌはもはや自分の意思はないであろう虚な目の王太子に、美しいカーテシーで別れを告げた。




 王都の商会へと戻り、会長室で親子は話し始めた。

「この国に来てお前と王太子を婚約させろとあの国王が言ってきた時、このような展開は既に予見していた。結論から言えば、私はこの国に人間と共存を望む同胞を呼び寄せて故国であるバリアント国とは別の我々のような異形の者たちの国を作ろうと考えていたんだ。」
「何故お父様はバリアント国から同胞を呼び寄せようと?」
「バリアント国には人間に友好的な者と、ただの家畜のように考えている者が混在しているのを知っているだろう。我々シャトレ家は古くから人間と共存しようという考えで、早くから国外へ出て見聞を広めたり人間相手に商をして栄えてきた。同じように人間と共存を考える同胞たちは今も各国にバラバラに存在しているが、昨今バリアント国内で両者の小さな摩擦が増えている。これが大きな争いとなる前に、人間と共存を望む同胞たちの受け皿を作ろうと思ってな。」

 アドリエンヌはまだ幼い頃にこのガンブラン王国へ渡ってきたから、故国のそのような状況は初めて聞いたのであった。
 そのような考えの下、侯爵はこの扱いやすそうな王族が治める国へと狙いを定めたのだ。
 そうして恐れを知らぬ国王がアドリエンヌと王太子の婚約を望んできた為、これを好機だと侯爵は了承した。
 折を見て内側から王族を眷属に変え、思うままに操れば良いのだから。

 アドリエンヌが王太子のことを好まなければ、適当な時期に婚約破棄をさせるつもりであった。

 それを愚かな王太子が先走った為に、少しばかり計画が変更となったのだ。

「侯爵領には既に同胞が多く入国しているのですね?」
「そうだな。既に多くの同胞が我が領地に住まっている。あの国王が有難いことにの受け入れを何の疑いもなく許可したから非常にやりやすかったよ。」
「お父様はこれからどうなさるおつもりですか?」
「まずは侯爵領から始まり、やがてフルノー伯爵領へ同胞を送る。あの王太子はもはや私の傀儡だからそのうち国王が退位すれば、より多くの同胞を国内各地に送ろうと思う。」
「ですからあの愚かな王太子との婚約をお父様が許したのですね。どこかおかしいと思いましたわ。それに、フルノー伯爵領に同胞たちが送られてきたことも納得がいきました。」

 シャトレ侯爵であるヴィンセント・ド・シャトレは故国バリアント国でも力のある吸血鬼の家系であった。
 バリアント国の王は同じ吸血鬼であるが、その血筋を引く由緒正しい家柄なのだ。
 それと同時に優れた能力を持ち、その力はバリアント国の王族と匹敵するほどであった。

 しかし、バリアント国の王はあくまで中立の考えであったから人間を家畜のように扱う同胞に対しても寛大であったのだ。

 それならば、と侯爵ヴィンセントは同じ考えの同胞だけの国を別に作ろうと考えたまで。
 その土台となるのがこのガンブラン王国であった。

「お前にもいつか話そうと考えていたが、それは同胞たちをうまく呼び寄せてからと思っていた。そうこうしているうちに王太子が勝手に暴走し、お前は人間の番いを見つけたんだ。そこまでは私も予見していなかった。」
「それではこれからお父様は商会の職務だけではなく、このガンブラン王国の国政まで担うことになるのですわね。」
「まあ、眷属である王太子を操って国王をはじめ王城内に眷属を増やし、簡単なことは其奴らにさせるさ。」
「それでも、お身体を壊しませんようお気をつけくださいませね。」

 アドリエンヌは壮大な計画を実行しているこの父を心配した。
 いくら身体が丈夫な吸血鬼とはいえ、あまりに無理をすれば疲れも溜まるのだから。
 人並みならぬ回復力があるとはいえ、娘としては心配であったのだ。

「分かっている。アドリエンヌも、フルノー伯爵領の事業をくれぐれも頼んだぞ。」
「お任せくださいませ。」

 こうしてアドリエンヌは父親である侯爵の壮大な計画を知り、自分もその一翼を担っていることを実感した。


 





しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。 そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。 お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。 愛の花シリーズ第3弾です。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

政略結婚だと思っていたのに、将軍閣下は歌姫兼業王女を溺愛してきます

蓮恭
恋愛
――エリザベート王女の声は呪いの声。『白の王妃』が亡くなったのも、呪いの声を持つ王女を産んだから。あの嗄れた声を聞いたら最後、死んでしまう。ーー  母親である白の王妃ことコルネリアが亡くなった際、そんな風に言われて口を聞く事を禁じられたアルント王国の王女、エリザベートは口が聞けない人形姫と呼ばれている。  しかしエリザベートの声はただの掠れた声(ハスキーボイス)というだけで、呪いの声などでは無かった。  普段から城の別棟に軟禁状態のエリザベートは、時折城を抜け出して幼馴染であり乳兄妹のワルターが座長を務める旅芸人の一座で歌を歌い、銀髪の歌姫として人気を博していた。  そんな中、隣国の英雄でアルント王国の危機をも救ってくれた将軍アルフレートとエリザベートとの政略結婚の話が持ち上がる。  エリザベートを想う幼馴染乳兄妹のワルターをはじめ、妙に距離が近い謎多き美丈夫ガーラン、そして政略結婚の相手で無骨な武人アルフレート将軍など様々なタイプのイケメンが登場。  意地悪な継母王妃にその娘王女達も大概意地悪ですが、何故かエリザベートに悪意を持つ悪役令嬢軍人(?)のレネ様にも注目です。 ◆小説家になろうにも掲載中です

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

処理中です...