40 / 40
40. 二人で堕ちましょう
領内で狼男と人間の夫婦が営んでいるレストランが美味しいと評判だった為、アドリエンヌとアレックスはその店を訪れた。
突然の領主夫妻の来店に驚いた店主夫婦だったが、それでも腕によりをかけて美味しい料理を出してくれたのだった。
「とても美味しかったですわ。これからも夫婦仲良くレストランを経営してくださいね。また来ますわね。」
「また僕も知人に紹介しておきます。」
アドリエンヌとアレックスはそれぞれ店主夫婦に励ましの言葉をかけた。
狼男は興奮して耳と尻尾が飛び出したし、人間の妻はそれを懸命に叩いて仕舞おうとするなど仲の良いところが見られて、アドリエンヌも微笑ましい気持ちになった。
「ルイーズに乗るのもアレックス様との外出ともなれば気分が違いますわね。」
「そうですか?アドリエンヌは商会の視察に行く時にはいつも馬で駆けているらしいですが、落馬などしないように気をつけるんですよ。」
怪我などしてもアドリエンヌはすぐに治癒するというのに、いつもアレックスは心配するのである。
「分かっていますわ。ルイーズは賢い馬ですから大丈夫ですけれど。あっ!アレックス様!あそこですよね?以前星空を見た森は。」
「よく分かりましたね。そうです。あの森の入り口で貴女に吸血行為をされたのでしたね。」
森の入り口で以前と同じように馬たちに小川の水を飲ませ、アドリエンヌとアレックスはフワリとした草原にそのまま寝転がった。
あの時と比べて鬱蒼と茂った森は手入れをされているが、星は以前と同じで煌めいていた。
「アドリエンヌ、僕はこんなに幸せで良いのでしょうか?領地は豊かになり、領民たちも僕らを慕ってくれています。家族も健康で子どもたちも授かった。なんだか幸せ過ぎて不安になるんです。」
「アレックス様はとても心配症ですからね。それだけ貴方は頑張ってこられたのですから、幸せで良いのです。」
「貴女は僕が番いで良かったと思いますか?」
不安そうに眉を下げてアドリエンヌに尋ねるアレックスは、それでも吸血鬼の証である紅い瞳を真っ直ぐに隣に寝転がる妻へと向けている。
「貴方からはまだとても芳しくて甘くて素敵な匂いがしますのよ。だから私は辛いのです。」
「え!何が辛いのですか?」
「いつでもどこでも貴方の首筋に牙を立てたくなる衝動を我慢するのが辛いのです。でも、それだけ私は貴方のことを愛しく思っているのですよ。貴方以外など番いだと思えませんわ。」
そう言ってはじめから物凄く積極的だったこの妻は隣の愛しい夫の首に手をやり、熱い吐息をかけてから牙を埋め込んだ。
――ツプリ……
「アレックス様、貴方ももう我慢できないでしょう?だって、貴方ももう番いを持つ吸血鬼なんですから。」
そう言って妖艶な微笑みをアレックスへと向けたアドリエンヌに、アレックスは息も途切れ途切れに潤んだ瞳で答えた。
「そうですね。最初の頃の貴女の自制心には本当に脱帽しますよ。僕はこの甘美な香りと誘惑にとても耐えられない。」
そう言って、自らも吸血鬼となったアレックスは牙を突き立てた妻の首筋から甘い汁を啜った。
「アレックス様、これから二人でどこまでも堕ちましょうね。」
こうして突然王太子から婚約破棄を宣言された吸血鬼の侯爵令嬢は、偶然にも時を同じくして真実の愛と番いを見つけられたので全力で堕としにかかった結果、相手をまんまと伴侶の吸血鬼として永く愛し合ったのだった。
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!?
貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。
愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
私は平民、あなたは公女〜入れ替わりは食事だけの約束ですが!
みこと。
恋愛
平民の少女コニーはある日、筆頭公爵家に連れてこられた。
魔法で眠らされた公女・エヴァマリーの身体に入り、公女の代わりに食事をして欲しい。でなければ意識のない公女が、衰弱して餓死してしまう、と。
稀有なことに、コニーとエヴァマリーの魂の形は同じで、魔道具を使えば互いの身体を行き来出来るのだと言う。
「公女様の代わりに、ご飯を食べるだけのお仕事」
権力者相手に断れず、コニーはエヴァマリーの身体に入るが、やがてその他学習や、彼女の婚約者とのデートも命じられ……。
そんな中、本物の公女がコニーの身体で目覚めた。評判の悪女だった公女は、"使い捨ての平民"だからと、コニーの身体で悪さを始める。
公女と平民の入れ替わり物語、全7話、いっきに完結予定です。お楽しみください。
※「小説家になろう」でも掲載しています。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】「お前を愛する者などいない」と笑われた夜、私は“本物の王子”に拾われた
波依 沙枝
恋愛
毎日更新
侯爵令嬢セレスティアは、第二王子リヒトの婚約者。
冷たくされても「愛されている」と信じてきた――けれど、ある夜すべてが壊れる。
「お前みたいな女を愛する者などいない」
絶望の底で手を差し伸べたのは、“本当の王子”だった。
これは、捨てられた令嬢が見出され、溺愛され、
嘲笑った婚約者がすべてを失って後悔するまでの物語。
今さら縋りついても、もう遅い。
彼女はもう、“選ぶ側”なのだから。
魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
東堂明美様、感想ありがとうございます(=´∀`)人(´∀`=)
喜んでいただけて本当に嬉しいです。
毎回どんな風にキャラたちを動かすのか楽しみなのですが、結局彼ら(キャラたち)が勝手に動いてます(੭ ˃̣̣̥ ω˂̣̣̥)੭ु⁾⁾
感想いつも感謝しております。
まさかの吸血鬼系の恋愛小説!
一気見してしまった。
まだ終わらないで欲しいと思ってしまった…
ありがとうございます!!
mioda様、感想ありがとうございます❀.(*´◡`*)❀.
夏だから前作の幽霊からの怪物としてみたのですが、よく考えたらハロウィンのイメージの方が怪物は強いですね( ゚д゚)
そこのところ失敗しました。
感想ありがとうございました!
椿さん、感想ありがとうございます❀.(*´◡`*)❀.
積極的なな吸血鬼の令嬢はいかがでしたか\(//∇//)\
塩対応の相手役がまた私の作品にしては珍しい感じだったのですが、最後は結局溺愛になりました。
感想ありがとうございます!