チャラ男に囚われた忌み子の僕は

蓮恭

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49. 種明かし

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 病院を出たのは正午を少し過ぎた頃。
 僕はスマホの電源を入れながらホテルの方へと足を運んだ。
 
 ホテルの近くのコンビニで食べ物を調達してから部屋に戻る。
 ここは連泊可能なホテルで、近くに色々な店があってすぐに間に合うから助かる。

「明からのLIME?」

 明から、割とすごい数のLIMEが来ていた。
 内容は、宗次郎が突然居なくなった僕を探しているようだということから始まっている。

 仕事終わりに、グッドネイバーズで事情を知ってそうな明を張り込んでる様子だということ。

 宗次郎の実家でもある楢原ハナエさんの家で、送迎のデイサービスの職員にさりげなく僕や明のことを尋ねたということ。

 宗次郎からも、もちろん馬鹿みたいにたくさんのLIMEが来てたけど、僕は見ることもせずにまたスマホの電源を落とした。

「今更何でぼくを探してるんだろう。あ、もしかして合鍵を持ったまま来ちゃったから、それを返せとか? 元恋人が持つのは無用心だし、心配性の明なら……」

 そこまで言うと、ふいに僕の瞳からはポロポロと涙が溢れてきた。

 まるで角野さんのように、ぐしゃぐしゃな顔になるのも厭わずに僕は遠慮なくベッドの掛け布団に顔を埋めて声が広がらないようにしっかり抑えて泣き叫んだ。

 宗次郎のばか。
 きらいだ。
 嘘つき。
 
 浮かんでくる悪口よりも、宗次郎との思い出の方が多すぎて。
 僕は悪口を考えるのをやめた。

 とにかくワァーッと布団に向かって泣き叫んで、ボロボロと遠慮なく涙を流した。
 そしてそのまま眠ってしまった。

 目を覚まして、枕元の時計を確認すると朝の七時だった。
 結局食べなかった夕食のパスタを朝食として食べた僕は、熱いシャワーを浴びて心なしかすっきりした。

 鏡に映る僕の目は真っ赤になって、瞼は腫れているし明らかに泣いたと分かる情けない顔だった。

 あと少ししたらまた病院へ向かおう。

 僕は一応明からのLIMEを確認するためにスマホの電源を入れた。

 案の定、明から大量のLIMEが来ている。
 なんかあちらに残してきた明には悪いことをしたなぁと思いながら目を通していくと、僕のスクロールする手は動かなくなった。

 着信音と共に画面に表示されているのは、宗次郎からの着信を知らせるメッセージだ。

 僕はそっとスマホを置いた。
 随分と長く鳴っていた着信音も、諦めたのかやっと切れた。

 明とのLIMEの続きを見ていて間違って電話に出てしまったら大変だと思って、明には電話をすることにした。

「もしもし!」
「あ、明。ごめんね……」
「伊織! お前俺からのLIME見たのか?」

 尋ねる明の声は真剣そのもので、何なら少し怒っているようにも聞こえた。

「え……、まだ途中までしか……」
「もういいや! じゃあ今から口頭で伝えるからよく聞けよ、楢原さん宗次郎はお前を騙したりしてないぞ。嘘を吐いたのはその妊娠したとか言う女の方だ」

 嘘? そんな嘘吐ける?
 
「でも、エコー写真を見たよ。確かに間違いなく週数も書いてたし」
「友達のを借りたんだと。そもそも楢原さんの子どころか、妊娠すらしてなかったんだよ」
「へ……?」
「へ? じゃねえよ! とにかく、楢原さんは悪くないから! 仲直りしとけよ!」

 妊娠は嘘で、宗次郎は嘘なんか吐いてない……。

「ちょ、ちょっと待って! 何で明がそんなこと知ってんの? 宗次郎と直接話したの?」

 宗次郎はやっぱり明を訪ねたんだ。

「もう、俺なんかあの人とんでもない裏切り者なんだと思ってたのによ! いきなり俺の帰りを待ち伏せしてめっちゃくちゃに頭下げるからさー」
「え、頭を下げる? 明に?」
「そうだよー、『伊織の居場所知ってたら教えてください』って。それで俺がキレて妊娠の話したらさ、俺のLIMEだけ教えてって、まーたすっげぇ頼んできて……。俺も何かこの感じはおかしいなあって思って一応LIME教えたんだよ」

 それで柴田さんと話した宗次郎は、明に事の次第を話したってことらしい。

「何で柴田さんは僕に嘘吐いたりしたんだろう……」
「なんか、随分前に楢原さんとは遊びの関係が終わってたらしいんだけどさ。店に久々に顔出したら伊織がいて、明らかに楢原さんとデキてるって分かったから腹が立ったんだと。ついでに言うと、その女は彼氏に逃げられたばかりでムシャクシャしてたらしいぞ」 

 なんだ、僕は他人のイライラのけ口にされただけなんだ。
 それなのに確認もせず真っ先に宗次郎を疑って……。
 ばあちゃんが居なくなってまともな思考回路じゃなかったのかも知れない。

「ごめん、明。またそっち帰ったら宗次郎と話してみるよ」

 謝って許してくれるだろうか。
 僕が宗次郎の気持ちを信用しなかった癖に。

「あ、伊織」
「なに?」
「言い忘れるところだった! もうそっちに楢原さん行ってるから! じゃ、頑張れよ! またなー」

 何で僕の行き先まで話しちゃうんだよ。
 そんなに日にちかからずにそっちに帰るって知ってる癖に……。

 まあ……、明のお節介のおかげで僕は暗い気持ちから抜け出す事が出来たんだけれど。

 スマホの着信音が鳴り響いた。
 液晶画面には『宗次郎』の文字。
 
「も、もしもし……」


 

 




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