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30. これが所謂ザマアというものですのね
「父上!どういうことですか!?ヴィオレットとの婚約破棄だけでなく私を勘当するなどと、何の冗談なのかと驚きましたよ!」
我が家のドローイングルームはまさに地獄絵図、阿鼻叫喚状態ですわ。
いつものようにドカドカと突き進んできたフェルナンド様は、お父上である辺境伯様へ問い詰めたのです。
「父上、私を勘当したなどと……ご冗談ですよね?」
「フェルナンド、お前は既にブルレック家の人間ではない。市井に降りて平民として好きに生きるがよい。ワシはお前の良心と心根を信じていたが……残念だ。」
呆然とした様子のフェルナンド様は、視線をモニクへと向けられました。
「モニク……。お前は私といてくれるのだろう?」
「フェルナンド様、残念ですわ。モニクはこのブラシュール伯爵家を継ぐ者としてアルフォンス様に婿入りしていただくの。そして、より一層ブラシュール領を発展させていきます。」
モニクのトンデモ理論には心底感心させられますわ。
後ろのラングレー会長がどのような表情をなさっているのか気になるところではありますが、後ろから覆い被されらように抱きしめられている私の方からは何も見えないのです。
「やれやれ、皆さんお好きなことをおっしゃってくださる。今までヴィオレット嬢が苦労してきたのも頷けますね。」
背中側が何やら少し温度の低いような気がいたしますが……。
「まずブラシュール伯爵、貴方は長年の脱税を市井で出会った元娼婦である現夫人に知られ、脅されて後妻へと迎えたのですね。」
「な、なにを……。アルフォンス様、そのような与迷いごとは困りますな。何を証拠に……。」
「この領地で取れる作物の取れ高と国へ納めた税金の差額やこの邸にある帳簿を、見る人が見ればすぐに分かるのですよ。」
お父様、そのようなことをなさっていたのですか……。本当に存在感がないだけならば無害ですが、脱税は重罪ですわよ。下手すれば爵位没収となるのですから。
「アルフォンス様!私が元娼婦などと失礼ですわよ!謝罪を求め……」
「貴女もご存知の上で脱税を続けていたのですから同罪ですよ、伯爵夫人。それに、間男との間のお嬢さんであるモニク嬢も同罪ですよね。」
「な!?何だと?おい、モニクは私の子ではなかったのか?」
もうお義母様は貝のように黙ってしまいましたわ。
「辺境伯様が憲兵隊も呼んでくださっておりますので、どうかお元気で。」
あらあら、お父様もお義母様も、お二人とも顔面蒼白で震えてしまってますわ。
壊れた扉の向こう側から、数名の憲兵隊が入室してらっしゃってお父様お義母様のお二人と、妹ではなかったけれど喚きながら連れて行かれるモニク見ても、何とも感じない私は長年の嫌がらせに何か大切なところが壊れてしまったのでしょうか。
「大丈夫、あと少しですから。」
背後のラングレー会長が耳元で囁きますと、とても心臓に悪いですわ!
「どういうことだ?何故このようなことに……。」
呆然と呟いているフェルナンド様に会長は話しかけます。
「フェルナンド様、貴方は騎士の備品や備蓄を密かに売り払ってその金銭をモニク嬢や多数の御令嬢への貢ぎ物として使っていましたね。これはうちの商会で全て売買されており、しっかりと裏が取れています。ちなみに、我が商会に入った金銭については既に国へ返還済みですので。」
フェルナンド様はお顔を赤くしたり青くしたり忙しくしておりましたが、そのうち真っ白なお顔になって憲兵隊に大人しく連れて行かれてしまわれました。
所謂ザマアの場面というところなのでしょうが、私は思いの外スカッとしないのです。
なぜなら、下から見上げたラングレー会長のお顔がとても辛そうなのですから。
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