すれ違いがちなヒカルくんは愛され過ぎてる

蓮恭

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18. お化けより、怖いものの回

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「真っ暗なところはお化けでも出てきそうだけど、本当に一人で大丈夫なのか?」

 そうだ、実を言えば俺は子どもの頃から幽霊だの怪奇現象だのが大の苦手で、昔から絵本に出てくる妖怪やお化けを見るだけでひどく泣き喚くような奴だった。
 つい最近もダイにいきなり見せられた心霊動画に衝撃を受けて、怒ってしばらく口を利かなかった程だ。
 賢太郎はダイからその話を聞いたんだろう。ダイの奴、きっと面白がって話したに違いない。

「……暗い道くらい、怖くない」

 高校生にもなってお化けが怖いなんて情けなくて、消え入りそうな声でそう答える。
 すると賢太郎はそんな俺を何故かすごく優しい眼差しで愛しそうに見つめてくる。

「強がっちゃって、本当は怖いんだろ? 何なら手を繋いでやろうか?」

 そう言って賢太郎が差し出した手のひらは大きくて頼り甲斐のある男らしいものだった。

――「怖かった? ほら、手を繋いであげるから大丈夫……」

 いつかの遠い記憶、ぼんやりとした思考が流れ込んでくる。
 同時に、また警告のような軽い頭痛がツキリとこめかみを襲った。胸がチリチリと焼けるような感覚がする。
 
 怖い、これ以上掘り返すのは怖い。俺はまた警告に従って頭痛と胸の痛みの元からさっさと退避する。
 自分の中の本能が、決して触れるな、近付くなと告げているのだからあの記憶には触れてはいけない。

「どうした? そんなに怖かったのか?」
 
 ドッと冷や汗が出て、自分の顔色が悪くなったのを自覚する。
 さっきまでのふざけた雰囲気から一転して、賢太郎の心配そうな顔が自分の顔色のひどさを物語っていた。

「いや、マジで大丈夫。俺が怖いのはお化けだけだから。暗い道が怖いなんて、せいぜい小学生までだよ!」

 明るく笑って差し出された手を取るのはやめて、じゃれ合うように賢太郎の背中をバンバンと叩いた。
 そんな俺の様子に、安堵のため息と同時にフッと息を吐くような笑いを零した賢太郎は目を細めて言った。

「そうか。小学生までは怖かったのか」
「まあね! だけど中学になったらそんなこと言ってらんないからな。怖くなくなったよ」
「なるほどな、それは良かった」

 賢太郎と話してるうちに本当にスゥッと恐怖が和らいだので、俺はその時にはきっと心から笑えていたと思う。

「あ、でもさ。家に着くまで通話しててもいい? 早速、俺達二人だけの部活について話そうよ!」
「分かったよ、通話な」

 公園を出てから反対方向へと足を向けた俺達は、別れ際に手を振って早速スマホを操作する。
 そしてそこからはお互いの自宅に向かいながらスマホ越しに会話した。

「じゃあ、とりあえずヒカルはどんな事をしたいんだ? その二人だけの部活ってやつで」
「まずは俺でも登れそうな整備された山を登る事から始めて、それからデイキャンプして、そのうちちゃんとしたキャンプをしたい!」

 家の近くでも勿論ある程度の自然はあるし、道端の花や青い空を飛ぶ鳥を見上げるだけでも幸せな気持ちになる。
 だけどやっぱり全身を自然に包まれて、ゆったりとした時間を五感全部使って過ごすのが俺のしたかった事。
 生き生きとした自然の中でテントを張って秘密基地みたいにして……。

「思ったよりガッツリとアウトドアをしたいんだな。まあでも楽しそうだ」
「そうか⁉︎ 良かったー! でも、本当に賢太郎まで山岳部を辞めてもいいのか? 無理して付き合わなくていいんだぞ……」

 言ってる内容に反して本心では俺の為に山岳部を辞めると言う賢太郎の言葉に喜んでる。
 賢太郎の返事なんて分かってて、試すみたいな事を言う。自分にそういうずるいところがあるなんて知らなかった。

「山岳部はヒカルが入るって聞いたから入ったって言ったろ? お前がいないなら意味ない。どうせすぐに辞める部員が多いって言ってたから、きっと責められたりもしない」
「うん、ごめんな。ありがとう」

 それから二人で今度の休み、手始めに近くの低山に登ることを約束した。

 自宅アパートの前に着いた時には、どうやら通話を終えるのが寂しいという気持ちが声に表れてたらしく、賢太郎に散々揶揄からかわれた。
 スマホ越しの俺達の間に甘ったるい沈黙が流れた時、堪えきれずに「じゃあまたな」と言って通話終了ボタンを押した。

 賢太郎も俺のことを好きなんだと意識すればするほど照れ臭くて、全身がむず痒いような感覚になる。
 先程からどうやっても緩む頬をペチッと叩いた俺は、アパートの鍵を開けた。

 
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