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大変お待たせしました!!
* * * * * * * * * *
「…………何で今頃……」
東郷さんの言葉に、頭が真っ白になった後、ようやく思考が復活してきた僕が呟いたのは、そんな言葉だった。
だって、そうだろう?
父さんは、僕の事を都合のいいおもちゃかサンドバッグくらいにしか思っていないのに。
ずっと逃げたくて。でも、未成年だったから逃げられなくて。
高校を卒業して、就職したら未成年でも成人扱いになって、父親から逃げられると思っていたのに。
「どうしてまた……っ」
悔しい。
どうして、あの人が僕の父親なんだ。あんなクズ男がどうして……っ!
ソファに座ったまま、ぎゅっと強く拳を握りしめて歯を噛みしめる。
そんな僕の手を、東郷さんの大きな手が優しく、そして温かく包み込んでくれた。
「落ち着け、侑吾。大丈夫だから」
「でも……っ」
「大丈夫だ。俺がいるんだから安心しろ」
「……っ、はい」
東郷さんが小さく笑いながら言ってくれた言葉が、ふ、と僕の体の強ばりをなくしてくれた。
そうだ。東郷さんがいるんだから、相談に乗ってもらえばいい。今回の話だって、僕に話すのを悩んでいたと言うくらいには、僕の事を心配してくれていたのだろう。
その気持ちが、嬉しかった。
「一応弁明させてもらうが、侑吾は自立して働いている成人と見なされている。だから、いくら父親の借金と言っても息子には返済の義務はない」
「そう、なんですね。良かった……」
僕を安心させるためか、東郷さんが僕の肩を抱き寄せた状態で説明をしてくれる。
そうか、就職して父さんの元を離れたのは正解だったんだ。
ほ、と息をついた僕だったが、その後に続けられた東郷さんの言葉で、再び体が強ばった。
「――但し例外があって、子供が親の借金の保証人もしくは連帯保証人になっている場合は返済が義務になる」
「ぼ、僕は父親の保証人になんてなりませんよ! ――って、まさか……」
「……ああ、そのまさかだった。お前の親父の借金は、侑吾が連帯保証人になっていた」
「――――!!」
そんな馬鹿な。
僕が父親の連帯保証人になっているなんて、あり得ない。
ふるふると、力なく首を横に振るけれど、東郷さんは僕をじっと見つめたまま表情を変えないままだ。
と言うことは、恐らく僕が保証人になる、という署名がなされているのだろう。
その署名を、僕自身が書いていないとしても。
「僕、父親の連帯保証人になんてなってませんっ!」
「ああ、わかってる。アレは多分偽装されてるんだよな」
「なら……っ!」
「だからといって、あのサインが偽物だという証拠もないんだ。だから――」
「――――いやだっ! また、あの父親に奪われるのはもう嫌だ!!」
「侑吾!!」
東郷さんが、僕の体をぎゅうと抱き締めてくれる。温かい腕の温もりに、僕は縋るように東郷さんの腕を掴んだ。
「大丈夫だ、侑吾。ちゃんとわかってるから」
「…………っ」
東郷さんの大きな手が、僕の頭を撫でてくれる。
優しくて温かい手が、少しずつ僕の激情を落ち着けてくれる。
誰よりも、安心をくれる腕の中で、僕はふうぅ、と息を吐いた。
「――助けて下さい、東郷さん……僕は、僕は……もう父親のいいなりになんかなりたくない!」
学生じゃなくなって、社会人として働いてきた僕は、もう一人前の大人だと思っていた。
一人前の大人なんだから、一人でだって生きていける。そう思っていた。
でも、そうじゃなかったんだ。
一人でなんて生きていけない。周りの人に支えられながらようやく生きていけるんだ。
そのことを、東郷さんに拾って貰って気付いた。だから、僕は恥も何もかもかなぐり捨てて、助けを求めた。
そんな僕の言葉に、返ってきたのは。
「大丈夫だ、侑吾。俺に任せろ」
東郷さんの力強い言葉だった。
* * * * * * * * * *
「…………何で今頃……」
東郷さんの言葉に、頭が真っ白になった後、ようやく思考が復活してきた僕が呟いたのは、そんな言葉だった。
だって、そうだろう?
父さんは、僕の事を都合のいいおもちゃかサンドバッグくらいにしか思っていないのに。
ずっと逃げたくて。でも、未成年だったから逃げられなくて。
高校を卒業して、就職したら未成年でも成人扱いになって、父親から逃げられると思っていたのに。
「どうしてまた……っ」
悔しい。
どうして、あの人が僕の父親なんだ。あんなクズ男がどうして……っ!
ソファに座ったまま、ぎゅっと強く拳を握りしめて歯を噛みしめる。
そんな僕の手を、東郷さんの大きな手が優しく、そして温かく包み込んでくれた。
「落ち着け、侑吾。大丈夫だから」
「でも……っ」
「大丈夫だ。俺がいるんだから安心しろ」
「……っ、はい」
東郷さんが小さく笑いながら言ってくれた言葉が、ふ、と僕の体の強ばりをなくしてくれた。
そうだ。東郷さんがいるんだから、相談に乗ってもらえばいい。今回の話だって、僕に話すのを悩んでいたと言うくらいには、僕の事を心配してくれていたのだろう。
その気持ちが、嬉しかった。
「一応弁明させてもらうが、侑吾は自立して働いている成人と見なされている。だから、いくら父親の借金と言っても息子には返済の義務はない」
「そう、なんですね。良かった……」
僕を安心させるためか、東郷さんが僕の肩を抱き寄せた状態で説明をしてくれる。
そうか、就職して父さんの元を離れたのは正解だったんだ。
ほ、と息をついた僕だったが、その後に続けられた東郷さんの言葉で、再び体が強ばった。
「――但し例外があって、子供が親の借金の保証人もしくは連帯保証人になっている場合は返済が義務になる」
「ぼ、僕は父親の保証人になんてなりませんよ! ――って、まさか……」
「……ああ、そのまさかだった。お前の親父の借金は、侑吾が連帯保証人になっていた」
「――――!!」
そんな馬鹿な。
僕が父親の連帯保証人になっているなんて、あり得ない。
ふるふると、力なく首を横に振るけれど、東郷さんは僕をじっと見つめたまま表情を変えないままだ。
と言うことは、恐らく僕が保証人になる、という署名がなされているのだろう。
その署名を、僕自身が書いていないとしても。
「僕、父親の連帯保証人になんてなってませんっ!」
「ああ、わかってる。アレは多分偽装されてるんだよな」
「なら……っ!」
「だからといって、あのサインが偽物だという証拠もないんだ。だから――」
「――――いやだっ! また、あの父親に奪われるのはもう嫌だ!!」
「侑吾!!」
東郷さんが、僕の体をぎゅうと抱き締めてくれる。温かい腕の温もりに、僕は縋るように東郷さんの腕を掴んだ。
「大丈夫だ、侑吾。ちゃんとわかってるから」
「…………っ」
東郷さんの大きな手が、僕の頭を撫でてくれる。
優しくて温かい手が、少しずつ僕の激情を落ち着けてくれる。
誰よりも、安心をくれる腕の中で、僕はふうぅ、と息を吐いた。
「――助けて下さい、東郷さん……僕は、僕は……もう父親のいいなりになんかなりたくない!」
学生じゃなくなって、社会人として働いてきた僕は、もう一人前の大人だと思っていた。
一人前の大人なんだから、一人でだって生きていける。そう思っていた。
でも、そうじゃなかったんだ。
一人でなんて生きていけない。周りの人に支えられながらようやく生きていけるんだ。
そのことを、東郷さんに拾って貰って気付いた。だから、僕は恥も何もかもかなぐり捨てて、助けを求めた。
そんな僕の言葉に、返ってきたのは。
「大丈夫だ、侑吾。俺に任せろ」
東郷さんの力強い言葉だった。
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