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久々の投稿です!時間が空いてしまって申し訳ありませんでした。
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「……眠れない……」
夜。
東郷さんに貸してもらっている部屋のベットの中で、僕は1人悶々と考えていた。
仕事をしている間は気が紛れている所為かあまり考えずにいられるけれど、1人になるとダメで、ベッドの上で膝を抱えて小さくなる。
家を出て、仕事をしながら1人で暮らしていくようになった事で、ようやく父さんの呪縛から解き放たれたと思っていた。
――それなのに。
「……どうして、働いているのに未成年ってだけで親の犠牲にならなきゃいけないんだろう……」
逃げられたと思ったのに、また父さんにいいように扱われるなんて嫌だ。
だけど、知恵のない僕には、どうやって父さんから逃げていいのかわからない。
『大丈夫だ。俺が侑吾を嫌う事なんて絶対ないから、安心しろ』
――脳裏に、東郷さんに言われた言葉が蘇る。
そして、頬にキスされた感触まで思いだして、今度はベッドの腕で羞恥に転げ回る。
(――っああああぁぁぁぁ!!!!! 恥ずかしいよぅ!!! ちゅ、て……ちゅって……!!!!)
さっきまでは父さんの事を思いだして憂鬱になっていたのに、今度は羞恥で死にそうになっている僕。
うう、だって、だって、だって!!!!
頬にちゅ、なんて誰にもされたことないし!! あんなの物語の中だけだと思ってたもん。
一生1人で生きて行くんだと思っていたから、誰かにキスされるなんて一度も想像すらしてこなかった。
頬にキスなんて、海外じゃただの挨拶だと言う人もいるかもしれない。
でも、ほとんど誰かと接触するような付き合いをしたことがない僕にとっては大事件なのだ。
(……でも、両親にすら愛されなかった僕だから、同情されたのかな……)
ゴロゴロと転がっていたけれど、ふとそれに思い当たって動きを止める。
だって……東郷さんは最初から優しかったけれど、それって僕が無意識とは言え自殺しそうになっていたのもあっただろうし。
そうじゃなきゃ、僕みたいな役に立たない人間に、こんなに優しくするはずないよね。
母親には捨てられ、父親にはいいように利用されるしか能のない僕なんて……。
「…………はぁ」
さっきまで羞恥の所為で変にテンションが上がっていたけれど、父さんの事を思いだしてまた落ち込む僕。
東郷さんは何とかしてくれるって言ってくれたから、間違いなく何とかしてくれるんだと思うけれど、お世話になっている身としてこれ以上迷惑を掛けるのはやっぱり申し訳なくて。
「…………僕なんて、いない方がいいのかな、やっぱり……」
そんな事を呟くけれど、自殺する勇気もなくて。
結局、一晩中ベッドの上で悶々と悩み続けたのだった。
* * * * * *
翌日。
寝不足とわかる僕の顔を見た東郷さんは、ピクリと眉を上げて「侑吾」と僕の名前を呼んだ。
「は、はい」
「眠れなかったのか?」
「え、えと……」
素直に寝ていない事を認めるのは何かダメな気がして、どうやって誤魔化そうかと視線を彷徨わせる。
だけど、東郷さんにそんな誤魔化しが効くはずもなく。
「目の下にクマが出来てるぞ」
「う…………す、すみません……」
「ったく……」
口ではぶっきらぼうに言いつつも、僕の目の周りに触れる東郷さんの指は優しかった。
女性のような柔らかさはないけれど、ちょっとガサツいてるけど、大きくて優しい指にうっとりと目を閉じる。
――あ、やばい。このまま寝てしまいそう。
「お、おい、侑吾!?」
「ごめ……なさ……ね、むくて…………」
急激な眠気に抗いきれなかった僕は、そのまま東郷さんの腕の中に倒れ込むように眠ってしまったのだった。
「……ったく、寂しがり屋で甘えたいくせに、臆病だな、侑吾は。眠れないなら、今夜から添い寝してやるから、今はそのまま寝ちまえ」
意識を失うように眠ってしまった僕の頭を、東郷さんが優しく撫でて、そんな風に言ってくれていた事など前々知らなかった僕は、その日の夜「おい、今日は俺の部屋で一緒に寝るぞ」と言われて「ひょえっ!?」と変な声を上げてしまったのだった。
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「……眠れない……」
夜。
東郷さんに貸してもらっている部屋のベットの中で、僕は1人悶々と考えていた。
仕事をしている間は気が紛れている所為かあまり考えずにいられるけれど、1人になるとダメで、ベッドの上で膝を抱えて小さくなる。
家を出て、仕事をしながら1人で暮らしていくようになった事で、ようやく父さんの呪縛から解き放たれたと思っていた。
――それなのに。
「……どうして、働いているのに未成年ってだけで親の犠牲にならなきゃいけないんだろう……」
逃げられたと思ったのに、また父さんにいいように扱われるなんて嫌だ。
だけど、知恵のない僕には、どうやって父さんから逃げていいのかわからない。
『大丈夫だ。俺が侑吾を嫌う事なんて絶対ないから、安心しろ』
――脳裏に、東郷さんに言われた言葉が蘇る。
そして、頬にキスされた感触まで思いだして、今度はベッドの腕で羞恥に転げ回る。
(――っああああぁぁぁぁ!!!!! 恥ずかしいよぅ!!! ちゅ、て……ちゅって……!!!!)
さっきまでは父さんの事を思いだして憂鬱になっていたのに、今度は羞恥で死にそうになっている僕。
うう、だって、だって、だって!!!!
頬にちゅ、なんて誰にもされたことないし!! あんなの物語の中だけだと思ってたもん。
一生1人で生きて行くんだと思っていたから、誰かにキスされるなんて一度も想像すらしてこなかった。
頬にキスなんて、海外じゃただの挨拶だと言う人もいるかもしれない。
でも、ほとんど誰かと接触するような付き合いをしたことがない僕にとっては大事件なのだ。
(……でも、両親にすら愛されなかった僕だから、同情されたのかな……)
ゴロゴロと転がっていたけれど、ふとそれに思い当たって動きを止める。
だって……東郷さんは最初から優しかったけれど、それって僕が無意識とは言え自殺しそうになっていたのもあっただろうし。
そうじゃなきゃ、僕みたいな役に立たない人間に、こんなに優しくするはずないよね。
母親には捨てられ、父親にはいいように利用されるしか能のない僕なんて……。
「…………はぁ」
さっきまで羞恥の所為で変にテンションが上がっていたけれど、父さんの事を思いだしてまた落ち込む僕。
東郷さんは何とかしてくれるって言ってくれたから、間違いなく何とかしてくれるんだと思うけれど、お世話になっている身としてこれ以上迷惑を掛けるのはやっぱり申し訳なくて。
「…………僕なんて、いない方がいいのかな、やっぱり……」
そんな事を呟くけれど、自殺する勇気もなくて。
結局、一晩中ベッドの上で悶々と悩み続けたのだった。
* * * * * *
翌日。
寝不足とわかる僕の顔を見た東郷さんは、ピクリと眉を上げて「侑吾」と僕の名前を呼んだ。
「は、はい」
「眠れなかったのか?」
「え、えと……」
素直に寝ていない事を認めるのは何かダメな気がして、どうやって誤魔化そうかと視線を彷徨わせる。
だけど、東郷さんにそんな誤魔化しが効くはずもなく。
「目の下にクマが出来てるぞ」
「う…………す、すみません……」
「ったく……」
口ではぶっきらぼうに言いつつも、僕の目の周りに触れる東郷さんの指は優しかった。
女性のような柔らかさはないけれど、ちょっとガサツいてるけど、大きくて優しい指にうっとりと目を閉じる。
――あ、やばい。このまま寝てしまいそう。
「お、おい、侑吾!?」
「ごめ……なさ……ね、むくて…………」
急激な眠気に抗いきれなかった僕は、そのまま東郷さんの腕の中に倒れ込むように眠ってしまったのだった。
「……ったく、寂しがり屋で甘えたいくせに、臆病だな、侑吾は。眠れないなら、今夜から添い寝してやるから、今はそのまま寝ちまえ」
意識を失うように眠ってしまった僕の頭を、東郷さんが優しく撫でて、そんな風に言ってくれていた事など前々知らなかった僕は、その日の夜「おい、今日は俺の部屋で一緒に寝るぞ」と言われて「ひょえっ!?」と変な声を上げてしまったのだった。
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