人生の『皮』る服(少女たちの皮を操って身体も心も支配する話)

ドライパイン

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人生の『皮』る服(少女たちの皮を操って身体も心も支配する話)

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「あっ……あー……」
 思わず天を仰ぐ。土曜の昼、カレーを作ろうと鍋を混ぜていたら一部が跳ねて、白色のシャツに着いてしまったのだ。急いで水で流すが、黄色のシミが残る。普段料理してないから、エプロンなんてものも着ていないのが災いした。漂白剤に漬けておいても、ひょっとしたら消えないかもしれない。

「いい加減服とか靴とか、買い換えるべきかねぇ」

 ズボラな性格を周囲から指摘されて二十数年。俺、|橘正明《たちばなまさあき)は基本的に拘りというものが無い。「道具は使えればいい、服は着れればいい、飯は栄養が取れればいい」。コスパの良い生活と主張しているものの、周囲からは「人生損してる、というか粗末にしてるレベルの吝嗇家」「社会で生きていくギリギリのラインを攻めるな」「お前の食生活はディストピア飯のそれ」と散々な言われようをしている。だが、別にそんな周囲からの評価なんてどうでも良い。金を貯めればいずれやりたい事が出来た時に有用というものだろう。

 だから──カレーにじっくり弱火を通すため、いったん台所を離れた時。郵便受けに大量に投函されていたチラシから、俺が『ソレ』を見つけたのは偶然ではなく、普段からの倹約家ぶりが功を奏したのだろう。

「《新装開店、今ならこのクーポンで衣類全品50%Off!!》、だと……!?」

 店のチラシ、店名と地名を確認しスマホで検索。住んでいるアパートのすぐ近くだ。開店日は──今日、午前10時から。現在時刻は、11時30分。

「放っておいたらすぐに売り切れるぞこれ!」

 作りかけのカレーの火を止め蓋をして、ガス栓チェック。服屋に行く服が無い、なんて言っていられる状況じゃない。半額の服たちが俺を待っているのだから。財布と鍵、リュックだけを用意して、俺はアパートの自転車置き場へと駆け出して行った。

────────────────────────────────────────

 俺が自分の失態に気が付くまで、店に入って1分も掛からなかった。路地裏の雑居ビルの1階を改装したと思われる服屋「Nine-Imaginaly」。路地裏に店を構えているのだから、店の周囲は暗い。その上、ドアを開いた時にチリンチリン、と軽やかにベルが鳴るが──店の中にすら照明の類が付いていなくて、間違って廃墟に踏み込んでしまったのかと一瞬錯覚する。その上、開店セールだというのに店内に他の客が居ない事に気が付いてしまった。さらに、店に並べられている服は。

「ぜーんぶ、女性ものの服じゃん……!」

 店のチラシをちゃんと読めばよかった。こじんまりとした木造部屋の中に置いてあるトルソーは、全て胸の出ている女性マネキン。黒いパンツスーツや、私服として着るようなラフなTシャツにジーンズ。果ては服屋で扱うのだろうか、と思うようなカラフルなブラジャーまで売っているが……買えるとしても中性的なジーンズぐらいだろうか。肝心の上着は、可愛らしいフリルが首元にあしらえられたモノや、パステルカラーが映えるモノ、何故かアニメに出て来そうなメイド服とか。──どれを見ても、中年差し掛かりの俺が着れそうなモノは無い。諦めて店を出ようとした、その時。

「お客様! すみませんね、店の奥に居たモノでしたからお声がけするのに時間がかかりまして!」

 女性店員に声を掛けられ、しまったと後悔。レディースファッション店に居る男性客。彼女のためのプレゼント──という言い訳は苦しいか。そもそも俺はこの店で何かを買う事は無いのだから、さっさと店を間違えたことを宣言して撤退するべきだ。そう判断し、振り返る。古めかしく埃っぽさを感じる店の風景とは打って変わって。恐らくこの店の唯一の店員にして店主である女性は、ニコニコと笑顔で応対してくる。店員の名札には、「|定安莉々珠《さだやすりりす)」と書かれていた。

「ふふ、きちんとご用意した『招待状』はお持ちのようですね?」
「『招待状』? この店のクーポンの事、ですか?」
「ええ。貴方がいま右手にお持ちのソレで合っていますよ。これはほんの数人にしかお送りしていない特別な招待状なのです」

 だとしたら。思いっきり、マーケティングのミスだと思うが。男性客が婦人服店に訪れる可能性は──所帯持ちか、彼女持ちかのどちらかで。それに賭けるぐらいなら、一軒家で普通に暮らしている家庭に送った方が売り上げにもつながるだろうに。

「いえ、俺はてっきりメンズの服が置いてあるものと勘違いして。その……服を贈るような女性も居ませんので。すみませんが、今日は帰らせていただきます」

 すると、店員の女性は不思議そうな顔で続けた。

「おや? この店の商品は全て『男性客向け』のファッションストアですよ?」
「…………はい?」

 今度は俺の方が困惑した顔になる。あまりに大真面目な顔で彼女が発言するものだから、俺が間違った事を言ってしまったのかと不安にすら思ったほどだ。この店にある服全て、俺が着れる様なモノじゃない。体格や身長の問題はもちろん、俺のような無精ひげもあればすね毛の処理もしていない男が女装などしてみれば、そこに広がるのは惨状でしかない。店員の彼女は──恐らく、女子大学か、卒業してすぐぐらいだろうか。若々しいのに店主を務めている彼女は、うーんと考え込むように手を顎に当て、目を瞑る。──数秒して。

「分かりました! お客様にお似合いの商品をコチラで見繕わせて頂きますね!」
「はい!? い、いやちょっとどう考えても無理が……!」

 俺が反論する間も与えず。彼女は店内をすいすいと動き回り、慣れた手つきで何本かのハンガーを手に取る。彼女の持っている服は、どれも女性モノ、しかも普通の服ではない。ミニスカートにフリルドドレス、純白のショーツにブラジャー。これを着た時の自分の姿を想像して一瞬吐き気がした。こんな質の悪い冗談はこりごりだ、さっさと帰ろうとすると。

「────あとは、『コレ』ですね」

 最後に彼女がとったハンガー。それに引っ掛かっていたのは服──ではなかった。パッと見た感じ、それは他の服と違って、しっかりと吊るされておらず。だらんとした、全身タイツを思わせる形状をしていた。頭の部分には髪の毛だろうか、銀色の長い糸が大量に張り付けられていて。目と口のあたりは空洞になっている。正体不明の茶褐色をしたソレを見て、思わず聞いてしまった。

「えーっと……店員さん。その……服? いや、全身タイツか……? こういうのも扱っているんですか?」
「はい! なにせ、これがお客様にとって合うかが最も重要なのですから!」
「……は、えっ……コレ着るんですか!?」

 それじゃ本当に仮装じみている。しかもその『全身タイツ』は──明らかに俺の体格で着るのは無理がある。ハンガーから外されたソレを彼女は目の前で広げているが、タイツの肩の部分がちょうど俺の腹に当たるぐらいの背丈。腕も胴回りも、どう考えても入る気がしない。コートのように、腹の真ん中部分を開けて着るタイプのようだ。

「い、いや……どう考えても無理ですって! 申し訳ないですけど帰らせてもらいま──」
「むぅ、仕方ないですね──『お客様、少しこちらを見てくださいますか』」

 店員の彼女が、不意に自身の服の内側に手を入れて何かを取り出す。彼女が首から掛けていたペンダントの様だ。レモン色をした球の内側に、剣の紋様が描かれている。それを見た瞬間────

(………………!? 身体が、動かない…………っ!?)

 すぐにでも店を飛び出そうとした脚も動くことも、腕はおろか指の一本すら動かない。だが、俺の身体は棒立ちになったまま。身体に力が入らなくなったのであれば倒れそうなものだというのに。

「んむぅ~、もうちょっと接客の練習をした方が良いですね、私。毎回『コレ』頼りになるのは面白くないですし。営業トークも上手くなりたいものですね……ま、今回は仕方ないという事で。それじゃぁ『お客様』。試着室へご案内しますね」

 すると。俺の足は自分の意思とは無関係に、店の奥、店員が導くままにカウンターの裏に入ってしまう。まるで、この店員が『俺の身体を操っている』かのように。店の奥、更に暗く埃っぽいコンクリ通路を、糸で引かれたマリオネットのように連れていかれて。そして、カーテン一枚で仕切られた一角に連れていかれる。

「初回サービスとして、今回はお客様のお着替えを私も手伝わせていただきますね。このような『服』は初めてでしょうから。あ、でも今の服を脱ぐのはご自分でお願いしますね?」

 返事をしようにも、叫ぼうにも。喉から声を発する、という事がそもそも出来ない。試着室の壁に張り付けられている、全身が映る姿見の向こうで『俺の身体』は。店員の要求通り、ボロになったジーンズと、カレー染みの着いたしろシャツを脱ぎ捨てていた。──それだけではない。下着のシャツも、そして抵抗しようにも出来ない事だったが……ボクサーパンツすら、脱ぎ捨ててしまったのだ。手で隠す事も出来ず、俺の下半身、そしてペニスが露になる。女性店員はというと。そんな俺の行為に、眉根を動かすことも無く。張り付けたような笑顔で。

「ええ、それでは。まずはこちらからお試しください」

 彼女が俺に渡したのは。店の中で一番奇妙な衣装である、茶褐色の全身タイツ。俺の腕はそれを掴むと──慣れた手つきで。その腹の部分をグイ、と広げる。触り心地はすべすべしていて、妙に肌に吸い付くような感覚。俺の身体は。開かれた全身タイツの穴に、脚を入れる。無理だ、入るはずがない。そう思ったのだが。

「……ふふっ。やはり貴方はその服を着るに値する存在。私が見初めた人間なのですから」

 足先まで届いた瞬間。五本指に分かれた部分が、指先を合わせずともすんなりとフィットした。ギチギチになるだろうし、そもそも長さが足りないはずなのに。片足を通して、床に着いた瞬間。ひんやりとコンクリの感触が伝わる。全身タイツ越しなのに、まるで素肌のように床の感覚が伝わっている。その違和感を覚えつつも、俺の身体は勝手に着用を続けていった。両足を入れ、ぎゅっと腰元を合わせた瞬間。ひゅん、と股間に寒気が走る。高い所から落ちた時の、タマヒュンの感覚。それと同時に襲い掛かる──身体の奥底が疼く様な、きゅんとした熱っぽさ。

「ええ、ええ! この『不安定』こそが私が求めているモノ……! さあ、続けてください……!」

 全身タイツの肩口を掴んで、ぎゅっと腕を通す。同じ様に、服の方から俺の身体に馴染むように五本指がシュッと入る。──だが、奇妙な事に。俺の手のひらよりも小さな『全身タイツ』の指に、ちょうど収まっているのだ。そして、ついに。フードを被るかのように、頭の部分を被る。そして、腹に開いたジッパーの穴を、ジジジと持ち上げて閉めた。

 ──鏡の向こうに立っていたのは。銀髪が腰のあたりまで綺麗に伸びた、褐色肌の美少女。緑色の瞳を驚いたかのように見開いて。生まれたままの姿である彼女の、その胸元に思わず目が行ってしまう。『全身タイツ』だった時にはこのような膨らみは無かったのに、胸元に重みを感じる。まだ成長期に差し掛かったぐらいの容貌であるにも関わらず、ソコだけは既に成長しきったかのように大きい。

「とってもお似合いですよ、お客様……! でも、このままではその服を完璧に着こなせているとは言えませんね? その服にお似合いのトップスにアンダーウェア、全て取り揃えておりますよ?」

 マネキンに着せ替えるように、あるいは褐色少女になった俺のカラダもそれを受け入れるかのように。彼女が差し出した、純白のフリルと紺色のリボンであしらってあるショーツを、『少女』はスルスル、と躊躇いもなく身に着けて。股間にきゅ、と強く宛がう。薄い生地の向こうで、マンスジが強調された。そして店員から受け取ったブラを、俺は『身体が覚えている』かのように、容易く後ろ手でホックを着けてしまう。重かった胸の感触が、僅かに支えられて楽になる。

「それでは、こちらのお召し物も……」

 さらに差し出されたのは、アニメや漫画でしか見た事のないような、まるでコスプレに近いような洋風ドレス。ふわふわのドレスに、太ももを強調するかのようなミニスカート。ちょっと動けば、ショーツが見えてしまうのではないかと危ぶんでしまうかのような服装。だが、銀髪緑目という特殊な彼女が着ると、不思議とそれが『似合っている』かのように思えてしまった。全て着た瞬間──俺の身体の自由が利くようになり、一瞬ガクンと倒れそうになった。

「うっあ……!?」
「どうでしょうか? とてもお似合いでしょう? ほら、こうして『服』の感覚もしっかり伝わっているでしょう?」
「ひゃぅんっ♡♡ え、あえっ!?」 

 お似合いも、何も。俺の身体が低身長の褐色少女になって、しかもファンタジー風の服装に身を包んでいて。ドレスも、胸元を露にするような扇情的なもので。しかも店員は、ドレスの内側に手を入れて直接少女の乳房を揉みしだく。すると、まるで自分の素肌を、敏感な所を刺激されたかのような感触に襲われた。それには飽き足らず、とでも言うのか。店員はぎゅ、と身体を寄せてこちらの背中を支えつつ。──ミニスカートの下に、その手を潜らせた。

「んひゅぅっ♡♡♡ な、なんなんでひゅかっ♡♡♡♡ こんなとこ、触られてっ♡♡♡♡ チンコが無いのに、こんなゾクゾクするっ♡♡♡♡♡」
「その『服』の着心地は保証しますよ? きちんと感覚共有を保証しつつ、外部からの衝撃にも耐える優秀な製品です。デザイン性もお好みでしょう? 一度その感覚を味わえば病みつきになる事間違いなしですよ♡♡」

 いや。その。ちょっと幼いぐらいの容姿が俺の好みであったというのは事実だが。こうして、店員の女性に手淫をされている状況は、あまりにも理解が追い付かない。ただ、ショーツ越しにさす、さすと『ソコ』を弄られると、身体の奥からゾクゾクとしたこそばゆく、甘い感覚。ぎゅっ、と店員が股に込める力が強くなって。

「や、ぁっ♡♡♡ ぁあぁっ♡♡♡♡ こんなの、しらな、ぁあ゙っ──♡♡♡♡」

 全身が脱力して。射精したときのような、頭が真っ白になるような。その感覚が何十秒も続く。股間に湿り気を感じて、遅れて自分が漏らしてしまった事を悟る。余りの感覚に、俺は意識を手放した。

────────────────────────────────────────

 気が付くと。俺はふかふかのベッドに寝かされていた。……先程の感覚は、まだ明確に覚えている。ふと周囲を見渡す。先ほどの店内よりも明るく、ビジネスホテルの客室を思わせるような、小さな机とベッドがある部屋。そして、振り向くと。

「……うわっ!?」

 先ほど俺が『着ていた』銀髪褐色少女。彼女がそこに立っていた。俺の驚いた反応に何かを返すことも無く、ただ無表情のまま真っすぐの方向を見ている。瞬きの一つもしておらず──彼女は、呼吸すらしていないように見えた。裸のまま立ち尽くした彼女の肩を、おずおずと揺するが。彼女は全く反応を返さない。

「起きられたようですね?」

 俺が意識を取り戻したのを見計らったかのように、店員の『莉々珠』さんはまたカゴにいくつかの『服』を持って来ていた。彼女の笑みは揺らがない。──俺は、恐ろしさのようなものを感じていた。

「あんた、一体何者、なんだ? あの『服』は……一体?」
「──残念ながら、そこは『企業秘密』というものです。『ナイフ』や『針』、『印刷機』など。あのような『服を仕立てる』方法は様々ですが、今回は比較的ユーザビリティの良い『ファスナー』を使用しているだけです」
「なんの、事を……」
「それより。もう一着だけ、試着していただきたいモノがあるのです。ちょうど先程の服の『姉妹品』に当たるものでして。セットでご購入頂くとお安くさせて頂きます」

 差し出されたそれは、また別の全身タイツ。色白な肌をした、金色のショートヘアが着いた『服』。同じように、小さな体の腹の部分に穴が開いている。雨合羽のように着る事が出来るだろう。──あるいは。彼女は有無を言わせず、俺にこれを着せる事も出来るのかもしれない。先程、俺の身体が勝手に動いたように身体を勝手に操る事が出来るのだとしたら。俺に拒否権は、無い。貼り付けたような笑顔を崩さない、店員の莉々珠からカゴのモノを受け取る。

「……分かった」

 そして、もう一着の服を着ようとした、その時。『服』の一部が。頭の部分が、ビクンと勝手に跳ねて。そして、金切り声を突然上げた。

「きゃぁぁあっ!? 痛いッ!? や、嫌ぁぁっ! お、お姉様ッ!? はやく逃げて──ど、どうしてそんな所で立ったままなのっ!?」
「な、にっ……!?」
「お客様、落ち着いてくださいませ。『服』は抵抗する術を持ちません。先程と同じように着用すれば問題ありません」
「や、ヤダヤダっ!! なにか、アタシの中に入ってくるッ!?」

 動揺しきった俺は。店員の進めるまま、急いで全身タイツの着用を進める。グイ、とフード部分の頭を被った瞬間。俺の頭にガンガンとした痛みが走る。それを一刻も早く収めたいと、俺はチャックを股からぐいと胸元まで一気に引き上げた。痛みが、彼女の叫びとシンクロしているが──やがて、彼女の声が小さくなり、消える。同時に痛みも無くなった。

「うぅっ……何だったんだ、今、の……」
「やはり。不完全な『服』も着用できる。魔力の素養も高い──くふふ、これは『実験』のし甲斐があるというものです。お客様、先程着用した『服』。一度着られた服は、初めて着用された人間を所持者として認識します。ですから──今お客様が着られている『妹』の服を通じて、『姉』の服にご命令を下す事も出来るのです。さながら『道具』のように」

 そうして『俺』は──いや、『アタシ』は。この『服』の使い方が分かってきた。こことは違う世界、科学ではなく魔術で動いていた世界。アタシたちはある国の王女姉妹と国を統治してきて──どのようにして『服』にされたかは、記憶を読むことができないが。いつも美しく、聡明だった姉。それに『アタシ』は憧れてきた。そんな感情が俺にも流れだしてきて──劣情のままに。

「ねぇ、『お姉様』……アタシのココ、舐めてくれる?」

 すると、マネキンのように虚ろに立ち尽くしていた彼女はぴくりと動き。

「──畏まりました、所有者様」

 彼女は虚ろな瞳のまま、アタシのクリトリスをぺろ、ぺろと舐める。そこに、『知啓の聖女』と呼ばれた王女の姿はない。ただ『アタシ』の命令のままに従うだけの人形。彼女を完全に支配している事を理解して、アタシの心に意地の悪い感情が芽生える。これが『服』だというのなら──アタシの、『俺』の中身を出す事だって可能なはずだ。

「こう、やって……少しずらしたらっ……あひぃっ♡♡ っはぁっ……これ、不思議な感じっ……♡♡♡」

『アタシ』のワレメから、下着をずらすようにして。『俺』の肉棒を外に出してやる。幼さを感じさせる体躯には、あまりに不釣り合いな太い肉棒。自分の膣内を逆側から犯しているようなものなので、思わず喘ぎ声が漏れた。これを、白くてすべすべな『アタシ』の手で扱くのも良いかもしれない。だが。アタシの股間を舐め続ける『お姉様』を見て。

「ねえお姉様……♡♡ お姉様のエッチな身体で感じてから、アタシのおちんちんが熱くて硬くて仕方がないの……♡♡ だから責任取って、お姉様がアタシのオナホになって、射精させてくれる?」
「分かり……ました……」

 常軌を逸した提案にも、彼女は無表情のまま従う。まだ濡れても居ないそこに、勃起した俺のものをあてがって。ずん、と前戯も無しに挿入した。

「っはぁっ♡♡ きっつ……♡♡♡ んぐ、チンコが動くとっ♡♡♡♡ アタシの膣内も刺激してっ♡♡♡♡ これいいっ♡♡♡♡」

 痛みも反応も返さないが、『姉』は処女だったはず。とん、とんと機械的な動きで陰茎に刺激を与えてくるが、本来なら挿入される彼女の側は痛みで行動できないだろう。──彼女が、言いなりのマネキン同然でなければ。彼女を完全に掌握したことを認識して、余計に興奮が昂ってしまう。

「いいっ♡♡♡♡ お姉様オナホっ♡♡♡ とっても気持ちよくてっ♡♡♡♡ もう、射精しそうぅ♡♡♡」
「はい……お願いします……」

 機械的な反応を返す彼女に、僅かに物足りなさを感じながらも。『アタシ』の我慢ももう限界で。

「イっ──♡♡♡♡♡ あ、ひゃぁあ゛っ♡♡♡♡」

 射精と同時に、アタシの身体からもぷしっ、と潮が吹き出す。女性と男性、両方の性感を同時に味わってしまって。この快楽を知ってしまった俺は、もうこれ以上を望むことは出来ないとすら思った。そこに、一部始終を傍観していた店員が語り掛ける。ずっと張り付けたような笑顔を見せていた彼女だったが──その時だけは。何か、まったく違う表情に見えた。──本当に面白い玩具を見つけた時のように。

「流石です……私の予測通り、いえ予想以上のパフォーマンスを見せて頂きました。お客様、これは提案なのですが──貴方様を今後『テスター』として登録させて頂けませんか? 新しく仕立てた『服』を試す代わりに、私は貴方のデータを取らせて頂く。『服』やそれに付随するものの料金は私には全く必要ありません。ただ、とても興味深いサンプルであるところの貴方を──『測定』したい」

 ……あまりに一方的だ。あまりに、俺に利益が有りすぎる。何か裏があるのでは、と思うが──その『裏』すらかくことの出来ない存在なのだろうと、俺は悟る。ならば、この契約を受ける以外の選択肢は無くて。静かに頷いた俺に対して、店員は。

「ありがとうございます。それでは、さらに別の服もご用意して、いったんご自宅で試着してくださいね」

 そう言い残して、一度部屋を去る。俺は──これからの生活に、一抹の不安と、どうしようもない興奮を抑えることが出来なかった。

──────────────────────────────────────────────

「たっだいま~」

 西村里緒奈。都内私立の女学園に通う彼女は、都内タワーマンションの高層階の一室に、カードキーを当てて帰宅する。セキュリティがしっかりしている事もあり、有名なアイドルグループも住んでいると世間では噂されている高級マンションだ。帰宅の声に、返事が戻って来る。メイドドレスに身を包んだ、彼女の母親だ。

「お帰りなさいませ、所有者様」
「や~だなぁ、お母さん。外でそんな風に言わないでよ? 変な風に誤解されると嫌だから」

 もっとも。このマンションの高層階一帯、それも『居住者を含めて所有』している彼女にとっては些細な問題だった。多少の事であれば誤魔化しが効く。里緒奈が純白のセーラー服を、それまでの所作とは違って乱暴に脱ぎ捨てると。別の人間がそれを素早く拾って洗濯の準備を始める。同時に、別の女中が幾つかの私服を持って来た。

「うーん……白のセーラー服も好きなんだけど、今日はスク水の気分かな? ほら、おんなじぐらいの娘を用意してきて?」

 ──『西村里緒奈』も、そしてその家族も。俺の着た服の1つだ。つまりは、彼女たちの全てを掌握しているという事。今は華の女学生として、学生生活を愉しんでいる。元はいい所のお嬢様だったようだが、俺が『着て』以降はエッチな事ばかりに耽るよう調整した結果、すぐに発情のスイッチが入るエロボディになってしまった。メイドとして動かしている『服たち』が持って来たスク水に身体を通すと、ぴっちりと身体のラインが浮き彫りになって。少し締め付けられる感覚で、また身体が熱を帯びる。

「御主人様、ご用意できました」

 そうしてぞろぞろと、数人の少女たちがやって来た。里緒菜と同じ学校の制服を着ている娘、同じようにスク水を着た娘、ロリっ娘体型でありながら、ほとんど紐のようなマイクロビキニを着た娘、様々な女性たちが広い部屋に集う。この部屋は俺の居住区であり、ヤリ部屋でもあった。

「しっかし、本当に便利な道具を手に入れたよねぇ……♡♡ んうっ♡♡♡」

 あの後も、奇妙な店主との交流は続いている。店を転々としているようだが、俺が引っ越したり別の『服』を来て住居を移したとしても、必ず俺の元に『招待状』が届く。──さながら、今も俺の事を監視しているかのように。だとしても、俺にとってはただ利益がある取引なのだから、断る理由もなく。そうして、多くの『服』を手に入れた。一世を風靡しているアイドル少女の服、異国や異世界の女性の服、そして俺の住む世界の住人の服。それらがこのマンション一帯の『住人』として暮らしている。全て、俺の『道具』だ。

 この道具たちの便利な点は、「『服』の着用、保持に関しては一定の修正力がある」事。例えば明らかに異世界から来たような、一番最初に着用した王女たち。彼女を脱ぎ、マネキンとして動くように命じれば。彼女たちは、『もともとこの世界に居た住人』として存在する事になる。戸籍も、今俺が着ている『服』との関係も自動的に構築される。なので、最初に着た彼女たちは見た目麗しい少女だったこともあり、今はアイドルユニットとして世に売り出している。かなり人気を博しており、テレビ番組で彼女たちの姿を見る事も多い。ちょうど、彼女たちのライブ映像がテレビに映っていた。

「……はぁっ♡ 今ライブしてるあの娘たちも、ぜーんぶ『私』の所有物に過ぎないってしったら、ファンの皆はどう思うんだろうなっ……♡♡♡♡ あっ♡♡ あちゃぁ……♡♡」 

 ゆるゆるになった『里緒菜』のおまんこ。中身の俺が興奮すると、たまにチンポがはみ出てしまうのが勿体ない。そろそろ別の服にしようかな、とは思いつつ。まだ学生気分で楽しみたい思いもある。キングサイズのベッドにゴロンと横たわって、俺はスク水をずらしてチンポだけを露出させた。

「……それじゃ、まずはこの娘。こっちに来て、オナホになって♡♡ マイクロビキニの娘は私とベロチューね♡♡ 他の子はしばらく待っててね♡♡♡♡ あ、オナニーしておまんこの準備だけしててね♡♡♡♡」
『畏まりました』
「里緒菜ちゃん、もうこんなにおっきくしてる♡♡ そんなにアタシとえっちな事したかったんだぁ……♡♡ いいよ、里緒菜ちゃんだけ、だよ……♡♡♡♡」
「里緒菜お姉ちゃんっ……♡♡♡♡ アタシ、お姉ちゃんの事考えるとおまたが勝手にぬるぬるしちゃうの……♡♡ これって、変なのかな……♡♡♡」

 放置を宣言した娘以外は、思い思いに愛の言葉を囁きながら『里緒菜』の身体を愛撫する。『服』の元になった人間の感情を操作できるようになり、特殊なプレイを楽しむ事も増えた。勃ちあがったペニスを愛おしそうにフェラした後、里緒菜の同級生の彼女は。制服のスカートを被せるように、対面騎乗位でまぐわう。同時に彼女の妹は、『里緒菜』への恋慕の情を囁きながら、明らかに少女のテクとは思えないディープキスでお互いを味わう。──そして、その他の娘たちは。一切の感情を表に現さないまま、女性器を弄り続けている。

「いいよっ……♡♡♡♡ ちゅぱっ♡♡ 2人とも大好きだからね……♡♡♡ そのおまんこにいっぱい精液注ぎ込んであげる……♡♡♡」

 道具は使えればいい。服は着れれば良い。飯は栄養が取れればいい。──そう思っていたが。こうして色々な道具を扱うにあたって、不思議と愛着も湧いてくる。この『服』は何処が性感帯だとか、どういうプレイで興奮できるかとか。そういう事を知っていく内に、どれも手放したくないと思うようになっていた。それに。

「あん゛っ♡♡♡ こ、この身体でイったらっ♡♡♡♡ 次は妹ちゃんを着ようかなっ♡♡♡ ロリマンでディルドをごりゅごりゅするの、またやりたい、しっ♡♡♡♡」
「やった~っ! 里緒菜お姉ちゃんにまた着てもらえるんだ、もうおまんこがビショビショになっちゃいそうっ♡♡♡」
「むぅ~、それより先にアタシにちゃんとせーえき頂戴よねっ♡♡♡」

 『服』を変えれば、色んな生活も楽しめる。見える世界も変わる。どれ1つとして、飽きさせない道具。

「──み~んな、いっぱい『使って』あげるね♡♡♡」

『人間』ではない『服たち』にそう告げる。皆、歓びの表情を浮かべていた。──夜が更けるまで、歪なカタチのセックスは形を、姿を変えて続き。翌朝は幼い少女として登校する事を予定しながら、俺は快楽を貪り続けた。






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(Pixiv版にて挿絵あり。そちらもご拝読いただけますと幸いです。)

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