(仮)死神

夜々

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寒さも緩み、段々と暖かな日が増えてきた
窓から差し込む午後の日差しも
まどろむほどに温かい。
そんな日差しを全身に浴びながら
俺は死んだ。

暖かさもまどろみも感じない
あの吸い込まれそうな空の青だけを
この目に映して。











「人生お疲れ様でした。」

何処からか、女とも男ともわからない
不思議な声がした。
まだ俺の目には青い映像が映し出されたまま



なんだ。なんだ。
こんな時は川沿いの花畑か真っ白な空間って
相場は決まってんじゃねーのか。
死んだままで動けない上に致命傷の
頭の傷が痛いのに自分で撫でてやる事も
出来ないって、何の苦行だよ。

「まだ魂は体の中ですからねぇ」

その声は言った。

「焼却処分されるまでは何ともし難いですねぇ」

…ぁ?
焼却処分?いや、火葬って言え。
20年は付き合ってきた体だ。
ゴミと一緒にするな。
いやいや。待て待て。
焼かれるまで意識があるのか…?
今、傷が痛むって…?

「まぁ、生きてきた大小様々な罪滅ぼしと
思って逝って下さい」






…マジか。



仏陀も「予想外デス。」の苦行じゃね。
内心青ざめた…いや外見はそれの上いく
青白くなってる、俺を帰ってきた母親が
見つけて、半狂乱になっている姿が映った。

父親が救急車を呼んでるみたいだ。
あぁ。おかん。
パニくってるこんな時にすまないが
…もそっと優しく扱ってくれー。
死んでるのに痛いんだー。
財布から1万抜いた事は謝るから勘弁してー。
慌てた様子で近付いてくる父親が母親を
俺から引き剥がした。
グッジョブおとん。ひゅー。
と、思えば必死な形相の父親が手のひらを
俺の胸の上に重ねて置いた。

「死ぬな!ユキっ!」

大の大人による胸骨圧迫だ。
肋骨がギチギチと聞いた事もない音を
立てている。
頭の痛さの比じゃねーわ。
おとん…もはや荒行の極みだな。





あー。
さらに、この上焼かれるとか。
どんだけのドMになれば悦べるわけ。


あの後、病院に運ばれた俺は大小様々な
苦行を乗り越え、やっと火葬場に
たどり着いた。今なら思える。
焼いてくれ早く、と。
口からヨダレを垂らしたドMに成り果てて
いたんだ。懇願するように。

しめやかに葬儀が行われ、まぁまぁの
知った顔がぞろぞろと集まっていた。
死んだ日とは打って変わって、冷たい雨が降る
3月の終わり。寒い中ありがとよ。
相変わらず動けない俺は、上から覗き込む
顔を見ながら、まだまだ現実味の無い
感覚を味わっていた。

火葬場の炉の前で見た、最後の親の顔。
憔悴しきって、涙でぐちゃぐちゃのおかん
唇を引き結んでおかんを支えるおとん
これが夢で、実は次に目が覚めたら朝だった
なんて夢オチだったら、一番に親を抱きしめてたかもな…なんて。
現実味の無い感覚なのに、夢オチは無いと
思うあたりが、本当に死ぬって事なのかな。

何にも出来なくてごめん。
何にも返せなくてごめん。
最期に何も…何も言えないなんて


無情にも棺桶の扉は締められた。
ガタガタと炉に押し込まれ、一拍をおき
点火された音を聞きながら意識が遠のいた。
あぁ。なんだ、そこは温情かと思いながら
沈む意識の中に二人を思った。



元気に生きてくれよ。
今まで、ありがとう。










「では、改めて人生お疲れ様でした。
森山ゆきさん。
早速ですが、今後のお話をさせて
頂きましょうかね。」

感覚が無くなって、動かす体も無くなって
少しの浮遊感とどこまでも白い空間。
どこからともなく聞こえる声。




終わったんだな、生きることが。
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