竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

文字の大きさ
31 / 342
魔法学校編

王女からの申し出

しおりを挟む
いきなり国王にエンカウントして焦ったヴァイオレットだったが、寛容な国王のお陰で何事もなくやり過ごすことができ無事部屋に辿り着いた
部屋に着くとテーブルに座るよう促され、座るとそこにはポットとティーカップ、そして茶葉が置かれていた
王女様はそれを手に取ると自らお茶を淹れ始めた
ポットには刻印がされており、そこから僅かに魔力の気配を感じた
どうやらこの刻印によって中に入っている液体の温度を保つ仕組みになっているようだ
魔法が得意なヴァイオレットだが、こういう魔道具の知識には疎いので実に興味深かった


『こちらの茶葉は王宮御用達の最高級茶葉なんですよ。私のお気に入りです』
『へー、いただきます……美味しい!これなら何杯でも飲めそう!』
『どうぞこちらも食べて下さい。うちの菓子職人が焼いたクッキーです』
『こっちも美味しい。手が止まらなくなっちゃうよ~』


クッキーで甘くなった口の中を紅茶でリセット、そしてまたクッキーに手を伸ばす。正に無限ループである
王女様の前だということも忘れて夢中で頬張るヴァイオレット
そんなヴァイオレットを見て王女様が話を切り出してきた


『ヴァイオレットさん、こちらを』
『ん?これは?また違うお菓子?』
『違います。こちらは謝礼金になります』


そう言って王女様が渡してきた小袋の中にはヴァイオレットの知らない硬貨が五枚程入れられていた


『これは?』
『聖金貨を見るのは初めてですか?それ一枚で金貨百枚分の価値があるんですよ』
『ひゃっ……!?』


今自分の手に金貨五百枚分が乗っかっていると思うと途端に手が震えだした
ヴァイオレットにはこんな大金を貰うようなことをした覚えがない為、ただただ戸惑うしかなかった


『王女様、私こんな大金貰うようなことしてないよ?』
『何言ってるんですか、迷宮での一件で私を助けてくれたじゃないですか。それに対してのお礼ですよ』
『えぇ~、気持ちは嬉しいけど私こんなのはいらないよ』
『どうしてですか?』
『だって友達が危険な目に遭ってたら助けるのは当たり前のことでしょ?』


その言葉を聞いた王女様はポカンとした顔を見せる
それを見てやってしまったと思うヴァイオレット
勝手に友達だとか言って王女様の機嫌を損ねてしまったかと慌てふためく
しかしヴァイオレットとの予想とは違い、王女様はふっと笑みを浮かべた


『私の謝礼をそんな理由で断ってきた人はあなたが初めてです』
『え?そうかな?友達だったら普通のことだと思うけど。あっまだ違うけど……』
『私の周りにはそういう人はいませんので』
『いつも一緒にいる人達は違うの?友達でしょ?』
『あの方達は私が王女だから側にいるに過ぎません。友達なんて生まれてこの方いたことなんてありませんよ』


交友関係に困らなそうな王女様だが、意外にも友人はいたことがないという
国のトップの娘ともなるとやはり同じ目線で隣に立てる者は限られてくるのかもしれない
そんな人物と友達になるのはやはり難しいのか
ヴァイオレットがそんな風に考えていると王女様が続けてきた


『けどもしかしたらあなたとならなれるかも……』
『えっ?どういうこと?』
『ヴァイオレットさん、私と……友達になってくれませんか?』

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

処理中です...