不死にて最弱から最強に昇る竜とともに。

れおさん

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6話

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  グスゲル高原。ここはかつて数十年前、サンドレア王国とバレンスタ王国が激しくぶつかり合っていたところだった。
 戦火はこのかつての草原がどこまでも広がっていたグスゲル高原を燃やし、荒野へと変えた。
 今でこそ休戦状態に入ってもうかなりの時間が経っているため、少しずつ草や木が生えてきてかつての様子を取り戻しつつある面も見受けられるが、あまりにも大きなその戦争の爪痕を残した激戦区は今でも黒い地面がむき出しのところも多くみられており、かつての戦場の激しさを今でも物語っている。

 「ったく、ここまででも十分遠いよな。かったるい」

 「まぁ、休戦中とはいえまだ戦争中の相手。こんなぶつかり合う境界線が王国の近くだと大変だからねぇ」

 グスゲル高原のごつごつとした岩肌が剥きだした荒野の道を進んでいく。今までの長い経路の果てにこの劣悪な道はかなり自分の足腰に堪える。
 しかし、サラと竜の方はへっちゃらなようでひょいひょいと足取りも軽くどんどん進んでいく。
 この二者の足取りがハイペースなのも俺が激しく疲れている理由だろう。

 「サラはともかくお前結構体力あるな」

 ふんっといつも通り得意げに鼻息を噴き出していた。

 「ねぇ思ったんだけど、その子名前付けてないの?」

 「あーそういえばつけてなかったな」

 今日であったばっかりだし、あまりにも今日はこのリザードマン騒動といい、色々と動かざる負えない事情が発生していてそんなことを考えている余裕がなかった。

 「つけたあげた方がよくない?お前ってのもなんか微妙だし、とにかくこの作品を書いてる人が書きにくそうだけど」

 「おっとそこの触れるのはタブーだぞ」

 サラのメタい意見は無視して、お前呼ばわりも何かと微妙というのは確かにうなづける。

 「うーん……」

 じーっと鼻息の荒いこいつの顔をじーっと見てしばし考える。
 考えること一分。

 「ダメだ、思いつかん。もっと落ち着いてからだ」

 そんな俺の様子にサラはふふっと笑うと

 「意外と考えるよね、シーザーってそういうとこ」

 「だな。まぁこいつがずっとこれから呼ばれていく名前だ。あんまり安直だったり、呼ばれていい気分のしないものはやっぱりやめたいからな」

 「シーザー君。その優しさを私たちのパーティにももうちょっと分けてくれてもいいんじゃないかなぁ……?」

 サラのじーとっとそうこちらを見ながら言ってきた。彼女がなぜそういうのか。それはこれから追々分かることであるからここでは省略するが、俺にもそうサラに言われる自覚はあるので少々心が痛む。

 「別に意地悪したいわけじゃない。俺にもいろいろあるんだ。こうやってお前らと共闘しようとしている時点で敵意も何もないだろ」

 「だけどさぁ……」

 サラはとてもまじめでいい子だと知っているだけにこの子の要望に応えてあげられないことには自分の中でも非常に申し訳ないと感じているのではあるが……。

 「今は俺一人の方が行動しやすい。今は情報分析や一人で単独隠密行動できないと何かと不自由なところが多くてな。それが落ち着いたら必ずお前らと一緒になるということは約束する。だから今だけは__我慢してほしい」

 「だからその一人で行動ってのが……!」

 サラが詰め寄ってくる理由は分かる。俺を一人にしたくないのだ。この子といい、このパーティの連中は俺のことを本当に必要としてくれているからこそ、俺が無茶をしないか、一人で頼れる存在がいない中で危ない目にあってほしくないと常に口酸っぱいのだ。
 しかしそれに対して俺は感謝はしているものの、言うことを全く聞いていない。だからこそ申し訳なさがさらに積み重なっているというのもあるのだが。

 「無理はしない。ちゃんと約束する」

 「うう……。約束だよ?」

 「それはちゃんと守る」

 サラにちゃんと無理をしないという約束をしたところでさらに歩みを進めて一時間後。
 グスゲル高原のサンドレア王国寄りの山の一角にテントを張った拠点がある。

 「おーい!連れて帰ってきたよーー!」

 そのサラの一声に反応したものが約二名。
 一人はゆっくりと、もう一人は俺やサラが反応するのが遅れるようなスピードで

 「シーザーたあああああああああああああん!」

 俺に飛びついてきた。

 「お、おいこら!離れろ!」

 「嫌だぁ、絶対離れないー♪」

 たわわに実った胸を俺にぐいぐいと押し付けて俺に抱き着いてきたのは神官のようなローブをまとった金髪の少女。

  「その格好してるんだから、もっとその格好に見合った行動をしろ!ルーシア!」

 「そんなの関係ありませーん。愛はすべてを超越するのです!」

 「嬉し気に格好つけた言い方すんな!」

 この抱き着いてきたルーシアという少女は今サンドレア王国内において最強のヒーラーだと言われている。回復魔法、補助魔法の中でも彼女にしか扱えない高度な呪文が多数ある。
 それだけでなく、アンデッド系に重要な光魔法も最高レベルで扱える今俺の知る最強のヒーラーだ。
 ルーシアも相当な美人でしかもスタイルも抜群。その女性としての魅力はサンドレア王国の枠にとどまらず、他の国でも噂になっているだとか。
 冒険者曰く、回復魔法じゃなくてその体と容姿を見るだけで癒されるからほしいだとか。
 全く、どこまでも汚れた冒険者どもである。

 「あはは、やぁシーザー元気そうで何よりだ」

 「おう、そっちもな。変わりはないかレイ。こいつら率いるのも大変そうだな」

 ゆっくりと俺の前に現れたレイと呼ばれる高身長の紫髪の俺と同い年くらいの青年。左右の腰に剣をさして、俺とは違ってローブのようなものをまとっている。
 彼こそが少し前に俺が一騎打ちで倒した”剣聖”だ。
 ぶっちゃけて言うとただ、本気で模擬戦をして俺が打ち勝っただけなのに律儀に”剣聖の僕は彼に負けた”などと言ったおかげでこうなっただけなのだ。
 しかし、ちゃんとどうしてこういう風に広めたかにはちゃんと理由がある。
 剣聖以外にも相当やれる冒険者の存在をチラつかせるだけで色んな所にけん制できるからだ。

 「随分と有名になったようだね。どっかのギルドやパーティに属したのかい?」



 「誰のせいでこうなったと思ってるんだ……。心配しなくてもこの俺が属すると思うか?サラにも言われたが、いづれはここに入る。それまでは俺はもうちっと隠密単独行動とりたいからソロだけどな」

 「それを聞いて安心したよ。ルーシアといい、サラといい君がいないといつも会いたい会いたいと言うものでね。一刻も早く君には一緒になってもらいたいよ」

 レイはやれやれといった様子でそう言った。リーダーという立場も大変なようだ。
 一通り話が落ち着いた後、本格的に話を進めた。

 「今回の件、やはりバレンスタ王国が噛んでいると思っていいのか?」

 「ああ、間違いない。冒険者同士の戦争にするとバレンスタ王国の品格が問われ、他の国からの視線が厳しくなる。ということで魔物を使ったんだろう」

 冒険者という同じ人間同士がぶつかるということにこの休戦でかなりお互いに抵抗ができ始めているため、どこもそこまで思い切った行動には移さない。
 しかし、他国に損失を与え、衰弱させるために魔物を送り込むという作戦は極秘に何回か行われているようだ。
 魔物であれば送り込んだという明確な理由を見つけるのは難しい。
 魔物が勝手に変な行動を移したとシラを斬れば何もわからない。
 それもリザードマンのようにバレンスタ王国特有でほかの国でいない存在の間のであればあるほど。

 「しかし分析の結果を見たが、このリザードマンの数多過ぎないか?」

 「そうだ、そこなんだ」

 バレンスタ王国との境界線いずれの場所もリザードマンの存在が確認されている。しかも100を超えるほどの。

 「ということから導かれて結論なのだが……」

 レイが少し間を取ってから、

 「この件、リザードマンキングとバレンスタ王国が絡んでいると考えられる」

 「な、何ぃ……!?」

 俺は自分でも珍しいと思えるほど大きな驚きを表していた。
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