不死にて最弱から最強に昇る竜とともに。

れおさん

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9話

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  サンドレア王国内に戻ってくると、グスゲル高原よりも王国に近い地域であるレグザル平原に進軍しているリザードマン部隊の討伐に役割を与えられていた冒険者が一足先に戻ってきていた。
 その冒険者を見て、土や血の全くついていない綺麗なもともとの姿のまま帰ってきている様子から俺は瞬時に悟った。

 「ユノのやつ本気で殲滅したな……。ルーシアとサラに対する恨みが爆発したか……」

 たぶん、俺と話がしたいというのはユノも同じだろうとレイが言っていたことからしてグスゲル高原組に入れなかった苛立ちが爆発した可能性がある。
 あちこちで冒険者が話をしているのが聞こえてくるがその内容はどうやら全てユノのついての話のようだ。

 「あの美少女魔法使いすごかったな!」

 「ああ、可愛いしあんなに強い魔法使い見たこと無いよ!どっかのパーティに所属してるのかな?」

 「なんか色んなとこがスカウトに言ったらしいけど相手にもしてもらえなかったらしいぜ?しかもあの愛らしい見た目に反して言葉が厳しかったとか」

 やっぱりストレスが随分と蓄積しているようだ。今度会ったらしっかり話し相手にされるだろうが、がんばってくれたようなのでそれくらいは応えてあげなければならないだろう。
 そんなことを思っているとユノの話をしていた男の冒険者達がこちらに気がついてあからさまに嫌悪感を抱いている表情を浮かべてまたひそひそと話を始めた。

 「ちっ、帰ってきたぜ」

 「あの魔法使いの子もあの男の名前を言っていたな。私はあの人のものだからお前らみたいな奴らと関わるわけがないってな!」

 聞こえないようにはなしているつもりらしいが、俺にはしっかり聞こえている。
 
 「ランサー、ヒーラー。今度は魔法使いの美少女もはべらせてるのか。いいご身分だな」

 別にイラついたわけでもないが、街の石が敷き詰めれた路地をおもいっきり足でばんっと叩きつけた。
 するとビクッ!と人間離れした飛び上がりを見せた。
 そのあと縮み上がったまま、そろそろと暗がりの小道へとそそくさと逃げるように消えていった。

 「別にはべらせたくてはべらせているんじゃないって言うことを知らないやつらは自分の素直な欲求だけで物事を考えられていいよな……」

 別れる前に念押しで言われたレイの話。そして先ほどの冒険者達の話によるユノの様子を聞くと改めて早く合流しなければと思う。
 ルーシア、サラ、ユノ。このそれぞれのジャンルに特化した誰もが認める美少女。それだけ聞けば理想の塊男の冒険者なら誰もが出合いたいとなるだろう。
 しかし、この3人との過去の話を聞けばそんなことを思うかは考え直すことになるだろう。
 彼女達がそこまで俺に固執しているのもちゃんとその経緯に理由がある。それを把握しているのはレイしかいない。
 俺が信用し、レイも信用してお互いに信用できているからこそ3人をレイの元で行動させることが出来ている。
 しかしそうだからと言っていつまでもレイにまかせっきりではいかないし、レイも間近で彼女たちの本当の姿を見てより神経質にさせてしまっているのも俺のせいであるのだから。
 この3人についての話をするときも近いうちに訪れるだろう。

 そしていつも通りの酒場。
 どんなクエストであろうが、ここで受付嬢に報告に来る必要があるのだ。
 酒場に入ると、いつも通りの光景が広がっている。
 真昼間から酒を飲みまくって大酔いしている者、受付嬢を口説いている者。
 正直言ってまともなやつが誰一人としていない。これなら自分があたかも功績を上げましたとウソの報告でもいいからやってくれているほうがまだましと言った光景である。
 そして一際そんな底辺冒険者からより多く口説かれている受付嬢のリア。
 その彼女の顔は優れず、俺の目から見ても雑音程度で聞いているいない以前に聞こえているのかもわからないような遠い目をしている。
 そんな彼女の元にずんずんと進んでリアに群がる冒険者の方をつかんで引き剥がして、彼女の前に進んだ。

 「リア、生きてるか?」

 「んー……。……はっ!シーザー!おかえりなさい!」

 どうやら本当に頭が働いていなかったらしい。慌てていつものピシッとした姿に戻る。

 「グスゲル高原の殲滅は終わった。その報告だ。処理手間かけるが頼む」

 その討伐達成内容を詳しく記した報告書を提出する。

 「はい!お疲れ様。報酬の配当はどうする?」

 「要らない。貧しい住民やなかなかうまくいかない冒険者に支援と言う形で提供してやってくれ。その提供の基準は適当に任せる。めんどくさいならお前が全部受け取っても構わん」

 いつも通り要らないと手を振って報酬受け取りに対して拒否。そして報酬の使い道を尋ねても全く同じ答え。
 いつもリアに使ってもいいぞと言うのだが……。

 「私がもらうわけには……」

 「そんなに気にしなくてもいいんだぞ?色々リアも困ってることやほしいものがあれば俺のいつも放置してる報酬使えばいい。もしそれに誰か文句言うやつがいたら俺が黙らせるし」

 「その気持ちだけで幸せですから」

 ここまでがいつも報酬受け取り時にこのやり取りがテンプレだ。
 この空気に酒場に住み着く底辺どもが悔しそうにしているが、俺にまともに対面勝負できないため、悔しそうに小さくしたうちや足蹴りするものばかりだったが、俺は無視してリアとの話を進めて話を終えた。
 リアは早速報告書の処理をしようと目を通していた。
 作業の邪魔になるし、ここは引かせてもらうとしよう。
 
 「じゃあ、リアまたな」

 「あ、あの……!」

 報告書に目を通していたリアはあるところでハッと何かを思い出したようにリアが申し訳なさそうに声をかけて俺を呼び止める。

 「どうした?」

 「こ、これ……是非とも見てほしいんです……」

 リアが引きつった顔で恐る恐る大きく古びた辞書のような本を俺の前に差し出した。
 見ればそれは1000年ほど前の旧サンドレア王国時代のことが記された書物だった。関係者以外は持ち出したり見たりはできるものではないのだが……。

 「私の祖父が主に国関連の本の管理者なんですけど、今の上の人たちがあんな感じなので管理も適当にしろみたいな感じで警備もずさんで……。孫である私くらいになら見せてもいいだろうとよく見せてもらってたんです。そして昨日も見たんです。その時に開いたページに乗っていたのが……」

 その語るリアの顔色はあまりよくない。そしてその弱弱しい顔から送られる視線の先には。
 眠たそうに欠伸をする俺の相棒だった。
 この数日で俺の威圧に加えて、誰にも危害を加えない上におとなしくしているため快く思っているものは少ないままだが、誰も悲鳴をあげたりはしなくなった。
 しかし、リアの今の表情のおびえ方は初めて目にした以上のものであった。

 「その時はまだ実感がわかなかったし、とにかく仕事と周りがこんな感じで深く考えている余裕がなかったんです。でも今、改めて間近で姿を見て_そしてこの報告書の内容。失礼ですがユノさんはいなかったはず。ならばこんな結果を起こせるのはあなたのお隣さんということになるのでしょう……?」

 「そ、そうだが……それがどうかしたのか……?」

 俺のその質問に肯定した瞬間、リアは頭を抱えて

 「なんてことなの……」

 と力なく小さく呟いた。
 そのリアのただならぬ様子に俺は、

 「どういうことだ。説明してくれ、リア」

 と、説明を求めたのだが彼女からの回答は差し出された書物を指さして_

 「ここの私の付箋のつけたところを読んでください。あくまでも私の誤解ということもあります。ここから先はあなたの目で確認してください」

 それだけしか言ってくれなかった。
 1000年前の旧サンドレア王国の書物。そして俺の横を常についてくる黒き竜。
 報告書の結果と照らし合したときのリアの尋常ではないおびえ方。
 果たしてこの書物に答えが書かれているのか。
 俺は早速この国にある自分の仮住居に戻って調べてみることにしよう。
 俺は震えるリアの手から書物を受け取って酒場を後にした。

 彼のいなくなった酒場で私は止まることのない震えに襲われていた。
 ペンで文字が書けないどころか物を持つことすらままならないほど。
 もし、あの存在が”災厄”だとしたら。
 自分にまさか降りかかるとは思わなかったことが現実として目の前に突き付けられる可能性が大きくなったということがここまでの恐怖心を生むとは。

 「シーザー……」

 そのぽつりと言った一言に込められた意味は計り知ることのできないほどのたくさんの意味を持っている。
 
 
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