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103.
しおりを挟む「ただいま戻りました」
ソソソ、遠慮がちに控え室に戻ってきた皐月。
「はぁ?皐月何で手ぶらなの?」
「それにつきましては突っ込まないでいただきたいです」
何も言ってくれるなと耳を塞ぐ皐月に、星渚は怪訝な顔をする。
「刹那と会わなかった?」
皐月は何のことだかさっぱり分からない様子で首を傾げた。
「碧音は皐月に財布を届けるためにコンビニに行ったんだ」
「……俺、会ってねえよ?」
碧音が皐月が財布を持って行ってないことに気づくまでそう時間は経ってなかったし、会えないわけがないと思うんだけど。
「刹那はコンビニの中でお前を見つけられなくて探してる間に、お前が店内から出てきちゃった、はないかー」
「あのコンビニ広くねえし、混んでなかったから分かんだろ」
「そのうち帰ってくる。待ってよう」
「だね」
皐月がコンビニにいないと分かれば、碧音もすぐ帰ってくる。
「皐月、明日歌ちゃんのことバカにしてるけどお前も大概だよ?」
「た、たまたま忘れただけだし」
「ベタ過ぎて笑えないネタみたいだった」
「俺もやりたくてやったんじゃねえ!」
「明日歌ちゃんに教えてあげようかな」
「まじで止めてください」
「そう言われるとやりたくなっちゃうのが人間ってもんでしょ」
芝居がかった仕草で首を横に振り、ニヒルな笑み。
「あいつにバカにされるの、すっげえ気にくわない」
「悔しがるお前の表情も見物だよ」
「星渚さん止めて」
んーどうしようかな、なんて考えるそぶりをして慌てる皐月を見て楽しんでる。
星渚が言わなくても碧音が言うんじゃないか?
テンポよく進む会話が面白いから、仲介に入るのは止めよう。
何故そこまで会話が続くのか不思議なくらいポンポン口から言葉が出される。
音漏れで聞こえてくるライブ中のバンドの曲も、少しは聞け。
ライブも大体予定通りの時間で進み順調。
あんまり時間がおしてライブが延びると、春が疲れてしまう。それは困るから。
他のバンドメンバーとも他愛ない会話をしながら過ごし約30分以上経過。
「なあ、遅くね?」
「何してんだろ?刹那ってば」
「連絡もないしな」
3人で顔を見合わせる。
「コンビニとは別の場所で買い物してんのかね、あいつは」
「碧音、財布は皐月のものしか持ってなかったぞ?」
言うと少し難しい顔をして星渚は碧音のバッグを開け、内ポケットから財布を取った。
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