104 / 155
104
しおりを挟む「刹那のは、ここ」
碧音はいくら皐月の財布だからって、勝手に人の金を使うような奴じゃないことは明白。
だから買い物ではないはず。
「偶然友達と会って話し込んでるのかも知れねえな」
「人の財布持ったまま?そういうとこ、ちゃんとしてるじゃん刹那」
星渚の鋭い質問には、言葉を詰まらせる。皐月も分かってる、その確率は低いと。
碧音の携帯に電話しても繋がらない。気づいてないだけなのか、それとも電話に出られない状況なのか。
あらゆる可能性を頭の中で挙げていると、星渚のスマホがブーブーブー、振動した。
「……刹那からメッセージきた。ごめん、用事が出来たから遅れる。ライブ前には戻るから、だって」
メッセージを読み上げた星渚の顔は、碧音から連絡がきてホッとしたものではない。
それは俺も、皐月も。
「用事って、何なんだよ。あいつ一言もそんな話してなかったし、そぶりもなかった」
口元に片手を添え、眉間に皺を寄せる皐月。
「でも刹那のスマホでメッセージは送られてきたし、文面も刹那のものじゃん」
普通に考えれば碧音が送ってきたメッセージ、と受けとればいいんだろうけど……引っかかる。
「もう少し、待とうか」
静かに星渚が告げた。
控え室のドアが開く度に碧音?と思い顔を上げるけど皆別人。
俺達のライブまで刻一刻と時間が迫ってくる。けれど碧音は戻ってこない。
「……おかしいんじゃねえか、これ。大体、コンビニで俺と碧音が会えなかったってことからあり得ねえと思うわ」
「そこ。本当に刹那に会ってない?」
「ほんっっとに」
「だよね」
「ライブに間に合ってくれたらいいけど、最悪来なかったら……」
来なかったら困るのは俺達だけじゃない、運営側にも迷惑がかかる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる