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しおりを挟む碧音のことだ、遅れることは1100%ないと思う――でも、今の状況を考えると可能性を捨てきれない。
「今から刹那に電話する。もしこれに応答がなかったら探すってことでオッケー?」
「ったく、碧音の奴」
「出てくれたらいいな」
星渚が電話をかける、1回目。
ツー、ツー、ツー。
「ダメ、出ない」
少し間をおいて2回目もかけたけど『出ない』溜め息と共に吐き出し、星渚の顔つきが変わった。
「探しますか。ライブハウス内は俺、皐月と藍は外」
「見つけたら連絡すっから」
控え室を出て、各々の方向に散らばった。
「紀藤じゃん。お前もこのライブ出てんだ」
「まあね。あのさ、刹那碧音見なかった?」
ライブハウス内を歩けばバンド仲間に会うから、その度刹那のことを聞くことにした。
こういう人達の方が刹那のことは知ってるし、効率がいい。
「黒髪の奴だろ?見てねえ」
「ありがと」
こいつもダメか。周りの人間に注意しながら隈無く探していくけど、まだ見つからない。
電話には出られないけどメールはしてきたって、どういう状況なわけ。場所はどこ。
こうなってくると本気で心配になってきた。
「刹那どっかで見なかった?コンビニとか」
「いんやー、あいつとは会ってないわ。どうかしたん?」
「ちょっとね。ごめんありがと」
「じゃーな」
また収穫なし。この感じだとライブハウスの中にはいないんじゃないか。
それを確かめるために、頼みの綱である受付のスタッフに聞いてみることにした。
いちいち出入りする人の顔なんか覚えてる暇ないだろうけど、誰かしら知ってるはず。
「すみません、midnightの刹那碧音っていう背がこのくらいで黒髪の男見ませんでした?服装は俺と同じです」
「私はちょっと……、ねえ見た?」
「見たような、見てないような」
曖昧な答えはあてにならない。皐月と藍に電話してみるかと半ば諦めていた時。
「俺、見ましたよ!ファンなので会った瞬間興奮しちゃって、目で追ってました」
「刹那が外に出てったとこしか見てないですか?」
「はい!」
「助かった。ありがとうございます」
なら外にいる可能性が高い。
でも関係者しか使えないドアの方からも出入りしてることも考えられるから何とも言えない状況。
…………そっちに行ってみよう。
床を蹴って、踵を返した。
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