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「どこ行きやがった、碧音」
一度足を止め、メッセージか電話がきてないか確認しても知らせはない。
ライブハウスの周りにある建物は会社がフロアごとに入ってるビルに銀行、居酒屋程度で碧音が行く場所じゃねえ。
何やってんのかね、あいつは。
舌打ちと溜め息ばかりが溢れる。
俺らのライブの時間も結構近づいてきた、だから嫌でも焦ってしまう。
心配かけんな、まじで。
怒んねえから、俺達の電話無視したことは水に流してやるから。
今すぐ戻ってこいよ。
用事の内容を一言伝えてくれれば良かっただろ。
範囲を広げて暗がりの中碧音を探す。
1人で歩いてる、全体的に華奢な男がいて近寄ったけどそれは碧音じゃなかった。
ちげえのかよ、紛らわしい。
ライブハウスからかなり距離が離れたところまで行ったけど見つからなかったから藍に連絡してみるかとスマホを弄ろうとしたら、ちょうど星渚から着信があった。
碧音、見つかったのか?!期待を込めて画面をタップ。
「星渚、碧音いた?」
『スタッフで刹那を見た人がいて、出てったままだって教えてくれた。だから外のどっかにいる』
「俺、大分広い範囲探したけどいなかった」
『一旦戻ってきて』
電話を切り、足早にライブハウスに戻ると星渚が入り口で藍と一緒に待っていた。
その場に碧音がいないということは、藍も見つけられなかったのか。
「今藍と話して決めた。ライブまで時間がない、探すのは止めて控え室に行く」
「は!?碧音はどうすんだよ」
星渚に食ってかかると藍に止められた。
「今控え室に戻ったら碧音がいるかもしれないし、メールが本当ならギリギリ帰ってくるさ」
浮かない顔で言われても説得力がねえよ。
「……刹那が戻ってこなかった場合、俺と藍でライブに出る。皐月は刹那を探して」
星渚が下したのは、苦渋の決断だった。俺達の周りだけ空気がひたすら重い。
「分かってる。1番いい方法はそれだもんな」
ライブを当日、しかも十数分前になって出られませんなんて無理に決まってる。
ボーカルの星渚はいなきゃなり立たねえし、今日はせっかく波江さんが来てる。
藍が出ないわけにはいかないんだ。
となると、俺が出ずに碧音を探すこの方法しか残されていない。
「俺が、財布忘れなきゃこうはならなかった」
ちゃんと確認して自分で財布を持っていたら。
「皐月だけのせいじゃない。刹那を行かせたのは俺と藍」
どうしてこうなった、後悔の色が全員の顔に浮かんでいる。
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