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107.
しおりを挟む「時間がない、行こう」
先頭をきって星渚がライブハウスのドアを開けた。頼むから間に合ってくれ、碧音。
「碧音が来なかったら、観客とスタッフには何て誤魔化すわけ?」
「それは考えてある」
最悪の事態を考えて先手を打つのが星渚は早い。次へ次へと考えを巡らせていく。敵わねえな。
ライブは星渚と藍に任せるとして、俺は全力で碧音を探し出す。
出来るだけ範囲も広くして。
「いてよ、刹那」
小さな声で祈るように言いつつ控え室に入り――僅かな期待はあっさり打ち砕かれた。碧音はいない。
嘘だろ。驚きで言葉も出ない。
時間が許す限り待ったけどやはり現れず、碧音と俺がライブに出ないことは決定。
こんなライブ、初めてだ。碧音がライブを投げ出すことも初めて。
「皐月、あとはよろしく」
「絶対見つけてやっから」
言葉少なに俺達は視線を交わした。
碧音、待ってろよ。
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