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しおりを挟む藍が言うと、頑なに閉じていた目をゆっくりと開けてくれた。その様子を見て、ホッと息をつく。
良かった、やっと落ち着いてきたみたいだ。
「碧音、立てるか?」
狭くて暗いここから早く出させた方がいい。碧音の背に回していた腕を解き、立てるように手を貸す。
つってもライブハウスには行けないから、藍か星渚の車に移動だな。
碧音は足に力を入れ立ち上がった――けど、ふらりと体が傾いて危うく倒れそうになってしまった。
地面スレスレで慌てて支える。まだ動ける状態じゃないようだ。
「藍、碧音任せるわ。俺じゃ身長変わんなくて連れてくの難しい」
「そうだね。碧音、こっちおいで」
碧音から離れ、藍に交替してもらう。
「刹那は俺の車に乗せようか。皐月も一緒。藍は波江さんと明日歌ちゃんを家に送ってあげて」
「2人がライブハウスから出てくる前に俺らは帰ろうぜ。そうしねえと面倒なことになる」
「明日歌ちゃんと春には、俺が上手く言っておく」
明日歌は変に勘がいい時があるから困んだよ。ライブに関しても疑ってそうだし。バカ正直に星渚が言ったこと信じてくれまじで。
こればっかりは仮に明日会ってどうしたのか聞かれても答える気はねえけど。
碧音の様子を見ながら駐車場に停めてある車まで歩き、そこで藍とは別れた。
—————————
———……
「明日歌ちゃん、春」
ライブハウスの夕方集合したところで待っていると、藍が来てくれた。
「藍、私感動した。ライブってすごいね」
「生で聞くバンドのライブは迫力あったでしょ」
「うん!藍と紀藤君のサプライズもびっくりしちゃった」
波江さんはライブの感想を早く藍に伝えたくて、終わってからソワソワしっぱはしだったから。
あれがねこれがねと無邪気に話す姿は少し幼くみえる。
「藍、星渚さん達は?」
「あー。先に帰ったよ」
「帰ったの?!3人で?」
「皆、明日の本番に向けて準備があるとかで。だから明日歌ちゃんは俺が送ってく」
何となくだけど、やっぱり何かあったんじゃないかと思ってしまう。いや、ありえないかな。
「私、1人で帰れるよ。ですのでどうぞ藍は波江さんと2人で帰ってください」
私がいい雰囲気の2人の邪魔は出来ません!夜道を1人で歩くことに関しても怖いと思わないし。
「遠慮しないで、明日歌ちゃんも乗って」
「春もこう言ってるから」
い、いいんだろうか私がいても……。よし、車に乗ったら存在感を消して空気になろう。
私はいないものだと思ってラブラブしてもらおう。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
2人の後を着いていき、藍の車に乗せてもらった。初だ!藍の車に乗ったの初!人の車に乗る時って、緊張しちゃうよね。
車内は少しだけコーヒーの香りがした。藍、いつもコーヒー飲んでるから匂いがついたのかも。
「明日歌ちゃん、家までの道順教えてくれる?」
藍とバックミラー越しに目が合う。
「了解です!この道をまっすぐ進んで2番目の十字路を右に曲がって」
「右ね」
こうして見ると藍が本当に大人にみえる。いや、実際大人なんだけど自分との差を実感するというか。
車の免許持ってるんだもんな、とかこんなにスイスイ運転出来るんだ、とか一々感動する。
「3番目に出たバンドも、私好きだったなあ」
「3番目?……あー」
「midnightもああいう曲やったら?」
「俺らは違うって」
「だって、明日歌ちゃんもそう思わない?」
「え、あっそうですね!midnightとしては新鮮味があると思います!」
空気に近づくことへ集中していたから波江さんに話を振られても気づくのが遅れた。話も聞き流していたようなもんだから、返事も曖昧になる。ゆゆしき事態だ。
波江さんは自分がmidnightのライブを観て泣いたことこそ言ってないけれど、言葉を選び自分が感動したということを目一杯伝えようとしていて。
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