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122.

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「そう」


全部自分のせいだ、って自分を責めてる。誰だってそうなるよな。


いくら人にお前のせいじゃないと言われても責めずにはいられないのだ。あの時、もっとこうしていたらと。


「碧音がああなったことは、波江さんと明日歌には話してねえし俺らしか知らないから、心配すんな」


「……うん」


「で、今日のライブ。出れそう?星渚は気持ちの整理がついてなくて、いつも通りのライブが出来ないなら出せないっつってた」


キツいことを言ってるようだけど、これが星渚の優しさだ。


碧音も分かってる。それを踏まえた上で、どうするかだ。


「……―――出る、ライブ」


「無理してねえだろうな」


「してない。最高のライブをやれる自信があるから。それに、今日のライブに出ることが今1番やるべきことだと思う」


碧音の目に、言葉に、迷いは感じられなかった。俺がどうこう言う必要はないな。


「星渚に連絡しとけ、出るって。あと藍にも」


「知ってる」


ベッドに座ったままバッグに手を伸ばし、スマホを掴む。面倒だから極力動きたくないのだ。


「…………あ、星渚。うん、出る。……自信?あるから。……ありがと、うん、じゃあ」


「何つってた?」


「ライブ、今日は4人で出来るねって」


星渚も碧音をライブに出させることにした。続いて電話するのは藍。


「藍、俺ライブに出る。……平気、ましで大丈夫。そう、……分かってる、切るよ」


藍のことだ、碧音を心配しまくってたんだろうな。電話の碧音の答え方を聞いても伝わってきた。


「碧音」


「何」


「あのさ、犯人のこと。気にしなくていいから」


「別に、気にしない。皐月達がどうにかしてくれたんでしょ?」


「まーな」


あいつらも懲りて反省してるはずだ。


「何かまた眠くなってきた、2度寝してえ」


碧音のベッドに寝転がる。


「狭いんだけど」


「碧音が端に寄れよ」


わざと碧音を端に追いやってくっつく。


「暑苦しい」


「ふかふかのベッドが俺を離してくれない」


「俺が離れさせてやるよ」


「ってえ!!蹴りやがった」


おかげでベッドから落ちる羽目に。お前容赦なく蹴んなよな。腰がいてえ。


「ねえ、バカじゃん」


クツクツ笑う碧音に、ホッとする。もしこれでリアクションもなく笑いもしなかったらゾッとした。


大丈夫じゃねえじゃんか、って説教するとこだったわ。


「見つめてくんなよ、何なの」


「ばっ、見つめてねえし!」


物思いにふけってる最中、ずっと碧音の顔を見てたらしい。


碧音がベッドの上から目を細めて見下してきたから『顔にゴミがついてますよー』と嘘言って頬をつねってやる。


ついでにクシャクシャ頭を撫でた。



お前のドラムが俺達には必要なんだよ、そう意味を込めて。


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