群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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「いねー」


待ち合わせ場所は駅前で合ってんだけど。


なにせ最後に会ったのは数年前だ、今は背の高さや容姿がどうなってるか知らないっていうのはこういう時困る。


時間は約束の6分前。俺が早く来たからあいつはいないだけかも。壁に寄りかかり、駅から出たり入ったり忙しなく行き交う人の流れを目で追う。


もし昔の面影が残っていたら、見つけ出せるのに。あっちも俺のこと、見つけられるんだろうか。


自分の顔が変わったかどうかは、俺自身じゃよく分かんねえし。


過ぎる時間が、やけに遅く感じる。


会えることが嬉しくて、1分でも時間が惜しい。話し込んだらあっという間にそれはなくなってしまうから。


ひたすら行き交う人の中からあいつを探そうとしていると、1人の男がこちらに向かって歩いてきた。


注意深く男の目、鼻、体つきを見てあ、と思わず口からこぼれる。


男と目が合い数秒。


「……直人?」


「さ、つき?」


お互いの名前を確かめあうように呼んだのは、同時だった。


「おーっ直人?まじで本物の直人?!」


「本物の月野直人だよ」


昔の雰囲気とは変わり、どこか上品な立ち振舞いや仕草。髪色も俺みたいに明るいものではなく黒々とした髪。


「3年以上経ってもお前は変わらないな、皐月」


「前より更に格好良くなったって言えよ」


「ばか、言わないし」


3年振りに会ったというのに妙な距離感もなく、普通に接することが出来た。


直人といると、いい意味で気が抜ける。


「俺、まだ昼飯食ってないんだ。どっか店入っていい?」


腹を撫でて苦笑いし、肩を竦めた。


「それならうまい店知ってる。行こうぜ」


人が集中する駅から離れ、入りくんだ路地を歩く。


「こんな場所に店あんの?」


「実はあるんだなこれが。最近オープンした店でさ」


「へーえ。隠れ家っぽい」


前なら『早く行こう!』って小学生みたいにはしゃいで俺の前を走って行っただろう。


でも今はそんなこともなく、隣で笑ってる。ちょっとしたことでも以前と比較してしまうのは仕方ねえよな。


そうして歩いていくうちに、目的地の隠れ家的カフェへ到着。


カントリー調の外見でこじんまりとしているけど、結構人は来てるのだ。


「いらっしゃいませ。2名様で宜しいですか?」


「はい」


「こちらへどうぞ」


案内され座った椅子は木で作られていてアンティークな感じ。店主の趣味なんだとか。


「何食おうかなー。オムライスか、スパゲティか」


メニュー表をまじまじと見つめて、料理名を指の腹でなぞる。


「おすすめは?」


「人気なのはカルボナーラだな」


「んじゃそれにする。皐月は?」


「俺はアメリカンコーヒーでいいや」


何を食べるか決まったところで注文し、料理が運ばれてくるのを待つ。


「最近どう?会社のこととか、大学は」


「まだ知識や経験が足りないから会社の業務に関わることはさせてもらってない。出来て見学くらい。大学も、毎日忙しいかな」


「休みってあんの?毎日大変じゃね?」


「次期社長だからね。俺は」


直人の父親は有名な外資企業の社長。そしてその息子である直人は会社を継がねばならず、日々経営学やら語学やら色々と学んでいる。


だから忙しくて都合が合わず3年も経ってしまった。


でも嬉しいことに今日は俺のうちに泊まってくらしい。そのために今日と明日分の勉強や用事を完璧に終わらせてきた、と。


すげえよな、まじで。俺には真似できねえ。


机に向かって勉強すんのは大学だけで十分だっつーのに、家に帰っても夜遅くまで勉強ってさ。

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