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【第18章 青い春の】
しおりを挟む「碧音君、隣に座ってもいい?」
碧音君が座っているソファをちょん、と指差す。
「出来れば半径1メートル以内に近づかないで欲しいな」
「それ遠回しに断ってるつもり?むしろ直球ですけど!」
言いつつ許可は貰ってないけど隣に座った。
「ひっつくな」
「だって久し振りに碧音君と近づけるんだもん」
あのライブが終わってから、碧音君達はそれぞれ忙しくて練習も出来ず私もテストがあったりで、漸く皆揃ったのが数週間後の今日。
練習場所は、なんとスタジオではなく碧音君の家。
好きな男の人の家にまた訪問出来るなんて、嬉しくないわけがない。
「明日歌ー、このクッキー何味?食ったことねえ」
差し入れにと作ってきたクッキーを1枚摘まんで食べた皐月が、首を傾げる。
「シナモンだよ」
「それだ!言われてみればその味するわ」
気に入ってくれたのか、シナモン味のクッキーにもう1度手を伸ばしてくれた。
「じゃあ、こっちの黄色っぽいのは?」
「実はカボチャ味なんです!」
「手が込んでるね」
星渚さんはほんのりとカボチャ味のクッキーをゆっくり咀嚼。
「碧音、飲み物貰っていい?」
「アイスコーヒーなら、冷蔵庫の中」
「ありがと」
「藍、俺の分もー」
「はいはい」
自分は動く気がない星渚さんに苦笑いしてソファから腰を浮かせ、キッチンにある冷蔵庫から1リットルペットボトルのアイスコーヒーを取り出す。
コポコポとグラスに注ぐ音がする。
秋になったと言っても残暑が続く今日この頃。ホットを飲むにはまだ早いからね。
「お前はいらないの」
碧音君は甘さ控えめチョコクッキーをサクサク食べながら、藍の方をクイッと顎で差した。
「私は大丈夫」
結局はこうして私が隣に座ることを許してくれて、然り気なく気を遣ってくれるところが好き。
「明日歌と碧音、テスト期間だったんだろ?結果はどうなんだよ」
「え!」
テストの結果、ですか。思わず顔が引きつった。なんて質問するんだ皐月!
「別に、普通ですよ?ぜ、全然普通」
「怪しすぎるから。赤点でも取ったんじゃねえのお前」
ニヤニヤする皐月に慌てて否定する。
「取ってないし!赤点は取ってない。……でも、理系の教科がよくなかったんだよね」
「分からないとこがあったら、俺に聞いて」
「藍……っ!さすがジェントルマン」
藍ならちゃんと理解出来るまで丁寧に教えてくれそう。
「碧音は?まーお前が赤点ギリギリとかねえよな」
「当然」
「碧音君って、頭良さそうだよね」
「良さそう、じゃなくて良いの」
謙虚な態度をとるわけでもなく、しれっと言う。
「刹那には俺が英語教えてあげたりするから」
「それ最強!」
外国語を専門とする大学に通ってる星渚さんに教えてもらえるのだ。
「刹那は飲み込みが早くて、教える方も楽だよ」
碧音君は照れたのか、少し顔を綻ばせた。
「私も今度教えて欲しい」
「いいよーワンレッスン9 0 0 円で」
「お金とるんだ?!」
「ははっ、冗談冗談。特別にタダで教えてあげる」
もし星渚さんが塾の先生やってたら生徒が質問しに殺到するだろう。特に女子。
「皐月は……バカそうだよね」
「てめえ表へ出ろ」
「高校の時の皐月の成績と今の私の成績比べたら、絶対私の方が上だよ!」
「根拠ねえだろ!」
根拠なら、と口を開きかけたところで『皐月』藍が流れを止めた。
「皐月、時間は?」
「おっ。そうだった、もう行くわ」
「皐月帰るんだ、用事?」
時計を確認してバッグを肩にかけた皐月を見上げる。
「昔の友達と今から会う約束してんだ。3年ぶりに」
「3年って、結構会ってなかったんだね」
「お互い都合わなかったんだよ」
「約束通り会えることになってよかったね。いってらっしゃい」
「んー」
皐月はプレーン味のクッキーを2枚口に入れてから出かけて行った。
2種類いっきに食べたら味分かんなくなるよ、と思いつつも美味しそうに食べてくれた皐月にありがとうと言いたくなる。
今度差し入れする時は皐月にリクエストしてもらおう、なんて頭の片隅で思ったのだった。
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