群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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口に出さないけれど狼狽える私に、星渚さんがコクリと首を縦に振る。本当だ、と。


「皐月が、俺に」


「ああ。直人の会社の名前をニュースで聞いた時や会社のロゴが入った商品を見た時。直人はすっげえ重いもん背負って頑張ってんだな。俺とは違う、って思ってた」


皐月も月野さんと同じ様な感情を、抱いていた。


「直人は俺の背中を追いかけてるって言ってたけど。俺はずっと、直人を追いかけてた」


月野さんが顔を上げ、涙で濡れ少し赤くなった目が露になる。


「俺は、直人に憧れてたんだって。中学の頃から」


「……嘘だ」


「嘘じゃねえよ。あーあ、俺の憧れてた直人はこんなんじゃなかったはずなんだけどなあー」


わざとらしく目を伏せる。やっといつもの調子に戻った皐月。


「直人が失くしたもの、俺が全部持ってるって言うけどそうでもねえよ。俺が持ってないもの、お前もたくさん持ってんじゃん」


月野さんはハッとした表情をする。


「今は、頭ん中グルグルしてるせいで気づけてねえだけで。1度ゆっくり自分の周り見つめ直したら、見つけられるだろ」


「俺が、持ってるもの……」


「自分で見つけてみろ。俺は教えてやんねえ」


意地悪してるんじゃない、彼自身が見つけることに意味があるのだから。


お前はこれとこれを持ってるよと教えてしまうのは、野暮だろう。


「直人。俺はこれからもお前がくれたベースを使い続けるし、お前を親友だって思ってる。そっちは?」


「俺は……」


視線をさ迷わせ口を紡ぐ。俺は嫌だ、とでも言うのかな。やっぱり嫌悪感を抱いた人間を受け入れるのは無理だとか。


ハラハラしながら答えを待つ。


「俺は。自信持って皐月の隣に立てるように、頑張るよ」


どこかスッキリした表情で告げる月野さん。色々と、吹っ切れたのかも。


「おっしゃ!それでこそ直人だ」


「ちょっ、皐月」


皐月は抱きついて背中をバシバシ叩いてる。


「一件落着、かな」


藍がやれやれといった顔で離れろいや離れないの押し問答をしてる2人に、視線を注ぐ。


「おかげで練習時間なくなったけどねぇ」


「星渚、そう言うなって」


藍が宥め役になるのはいつものこと。私が代わってあげたいけど、私に星渚さんを宥めるなんて出来るわけもなく。


「あの……皆さんにも感情的になって酷いこと言ってすみませんでした」


月野さんが謝ると皆いいよと許した――碧音君を除いては。


「……やってらんない」


「碧音君?!」


乱雑にドアを開け1人地下室を出ていってしまった。


『私、追いかけます!』とだけ言い『あっ明日歌ちゃん!?』藍の焦った声を背に受け、急いで後を追った。


「碧音君。刹那君、碧音さーん」


何度呼びかけても全く返事をしてくれず、ただ前へと足を進める。


確かな目的地があるわけじゃなく、衝動に任せて歩いているだけだろう。


「碧音君ってば」


無視しないでくださいよ。


次いでにスピードも緩めてくれませんかね、これ私走ってるのと何ら変わらないんだけど。


文句はいくつも頭に浮かぶものの、言葉は飲み込んでおく。もし言ってしまったら最悪のシナリオしか想定出来ない。


「碧音君」


「………」


碧音君に手を伸ばそうとして、でも引っ込めてを繰り返す。


容赦なく振り払われるのが目に見えているけど、だからと言ってこのまま後を着いていくだけっていうのも埒が明かないじゃないか。

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