群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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皐月は気づいていたようだ。私に対して碧音君が自分を守るために無意識のうちに作り上げていた壁を、無くしたことに。


長い間碧音君の傍にいる皐月にとって、その変化に驚かずにはいられないのだろう。


恐らく星渚さんも藍も、皐月と同じように考えているはず。


「私が碧音君を追いかけていった時、聞いたの。碧音君の、昔の話」


皐月が目を見開き、口をパクパクさせる。まさか碧音君が話すとは思っても見なかったようだ。無理もない、簡単に人に話せる内容じゃないのだから。


「お前、聞いたのか。碧音の過去」


「話してくれたんだ」


心地よい秋の涼風が肌を撫でていく。目の前の信号がチカチカチカ、青から赤に変わる寸前だったから急いで走って横断歩道を渡ってしまう。


CDショップへ向かうにつれ、だんだん人も多くなってくる。ぶつからないようにと上手く人を避けつつも一歩先を歩く皐月に着いていく。


人混みの中でも、皐月の明るい髪色はよく目立った。


「……そっか、碧音。話したのか」


慈愛の色に染まる顔は、子供を見守る親のようだった。


いつもは碧音君にちょっかい出したりケンカしたりしてるけど、皐月にとっても碧音君は大事な存在で。


碧音君のことを、常に気にかけていたんだろう。


「昔、自分にはこういう過去があったから、皐月に酷いこと言った浅野さんを許せなかったんだって、言ってた。自分のことを否定されるのが怖くて、必要としてくれたら嬉しいって」


「あいつから話聞いてんなら知ってると思うけど。前の両親には心の底から『お前なんかいなければいいのに』とか言われてたから。今でもトラウマで嫌なんだよ、そういう類の言葉」


「皐月と自分を重ねてもしょうがないよね」


「でも碧音、毒舌だろ。わざと相手を突き放すような言葉を言って、相手の反応や態度見てんだよ」


交差点を右折するとカフェや雑貨屋さんが立ち並ぶ通りに出た。ここを真っ直ぐ進めば目的地であるCDショップへ到着。


「不器用だなーとは思う」


「ほんと、不器用なんだよ碧音は。でも、それは碧音の周りの環境が、そうさせた。人との距離の測り方や接し方をよく知らないまま、成長したから」


台詞の端々から滲み出る、悲哀の感情。


多分言葉の裏には、もっと早く自分が碧音君と出会えていたら何かしてあげられたのにっていう後悔も、混ざってる。


「だからお前も碧音の言葉、よく聞いてやって。大切なことを伝えようとしてるときは、急かさずに待ってあげて欲しいんだわ」


街が賑わいを増すにつれ人の喋り声や車のエンジン音、店から流れてくる音楽も煩くなってくる中皐月の言葉は掻き消されることなくクリアに聞こえた。


人を想う、優しい声だからだろうか。


「……皐月は、優しいね」


「な、なんだよ急に。そんなことねぇし」


ふいっと目を逸らす皐月。分かりやすいな、照れてる照れてる。


「碧音君のこと、ちゃんと考えてあげててさ」


「仲間なんだから、当然だろ!」


「優しいよ」


「……っ」


「優しいよ、皐月は」


「っ、褒めたって何も出てこねぇからな」


言うやいなや急に早歩きになり、私を置いてさっさとCDショップに入っていってしまう。


「皐月、待ってってば!」


私も人の間を縫いながら自動ドアを開けCDショップへと入る。何なんだ。


どこに行ったとぐるり、店内を見回せば最新の週間ランキング!と銘打ちランキングごとにCDが並べられているところにいて。


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