群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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152.

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明日歌は、『自分が碧音に大丈夫だよって言って立ち止まらせてあげたい』と強く言う。


きっと今、こいつの頭には碧音が浮かんでいるんだろう。


――――そして。


「もう。碧音君に対しての気持ち、再確認させないでよね」


照れくさそうな、それでいて愛のこもった笑顔。チリチリと、酷く胸が焦がれた。


もう、誤魔化せねぇじゃねえか。


明日歌の『今の時間がずっと続けばいいのに』この言葉に焦ったのは。今の関係も距離感も変わらずこのままなことに困るのは、俺だった。


あー、くそ。


「私と碧音君の関係が気になるなんて、もしや皐月私に惚れちゃってるな?」


バカみたいに下手くそなウィンクして髪を後ろに払ってみせる明日歌。お前ね、人をむやみに煽るんじゃねぇよ。


「そうだ、って言ったら?」


「――……ん?」


少し、賭けに出てみることにした。明日歌はどんな反応をするのか、試してみたくて。


「さ、皐月さん?」


壊れたロボットみたいに動きも喋りもぎこちなくなり、俺が嫉妬しているのは碧音と明日歌が仲良くしてるせいだとか苦し紛れの言い訳を並べてる。


……そうじゃねぇのに。お前って、ほんと。


明日歌に対して切羽詰まった思いをしていた自分が何だか急にバカらしくなり笑ってしまった。


「ちょっと、驚かさないでよ!!本気で心配しちゃったじゃん!」


「いやー、笑った笑った。冗談で『明日歌と碧音に嫉妬してるって言ったら?』って聞いたつもりだったのに、お前真剣に受け止めるからさぁ」


「誰だってあんな真面目な表情で言われたら本当なのかなって騙されるよ!あーもう、たち悪すぎ」


むすっと口を尖らせ文句をぶつけてくる。


でもさ、もしここで俺が冗談だって言わなかったらそれはそれでお前もっと困ってただろ。


「人をからかうにも限度ってものがあるでしょ!?」


眉を寄せ頭に角が生えそうな勢いで喋ってくるから、今回は悪いことしたなと思って『ごめん、悪かったって』と謝るも明日歌は聞こえないフリしていじけたまま。


こういう時は甘やかしてご機嫌取りするのが1番効果的だろ。


「何か奢ってやるから」


「どうしようかなぁ」


「じゃあ特別、ケーキ頼んでもいいぞ」


明日歌はケーキ、その単語に分かりやすく反応する。ケーキの誘惑に釣られないわけがないもんな。


そして案の定小さく『……チーズケーキ』と呟くから店員に追加注文した。


お前のご機嫌取りは簡単でいいな。碧音の機嫌損ねちまった時なんて一筋縄じゃいかねぇもん。


「ケーキ、うまい?」


年下の彼女はさっきまでの不機嫌でむすっとした顔はどこへやら、目をキラキラさせてケーキを口に運ぶ。お子様め。


「……美味しい」


「よかったじゃん」


こくりと頷いてサクッとフォークで刺したチーズケーキを口の中へ。幸せそうに食うよなー、お前。


残りのライチティーを喉に流し込みつつその様子を見て自然と頬を緩ませていたことに気がついたのは、それから少し後のことだった。





―――――――――――


――――…………


「北山駅ー、北山駅に到着です」


最寄り駅に到着したことを知らせるアナウンスが響く中電車から降りて、改札を出る。


カサカサと乾いた音をたて色づいた落ち葉が足元を舞い、冷たい秋の風が全身を撫でていく。


そろそろマフラーすっかな。さみいし。信号を待つ間、ふと紺色に呑み込まれそうな空を仰ぐ。


「あー…………」


引き返せる?いいや、気づいてしまった。今の関係が壊れる覚悟はある?あるさ。


振り向かせる自信は?相手は手強い、けど。俺は。


「――――好き、だ」


想いを乗せた言葉は、道路を走る車の音に掻き消されたせいで周りの人間には聞こえなかっただろう。


でも自分の鼓膜には、それがこびりついて離れない。


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