群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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【第8章 曖昧な瞳の奥】

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「うは!これだよこれ。俺が飲みたかったの」

透明なプラスチックの蓋付きカップに入ったブラックコーヒーを、皐月が指差す。

表面についた水滴が、ツーとカップを伝い滴り落ちる。

「皐月がブラック飲めるって、意外だなっていつも思う」

「俺、大人だからなー。子供舌じゃねえからな」

キメ顔で軽口を叩く皐月にイラっとして、足をテーブルの下で軽く踏んづけてやった。

そしたら無言で私の飲み物に横に置いてある小瓶の中の砂糖をぶち込んでこようとしたから『ごめんなさい!』と全力で謝る。

「お前の、何味っつったっけ?」

「抹茶チョコアイスラテクリーム乗せ、更にトッピングに抹茶フレーク」

「なげえ!つか、奢りだからって高いの選びやがって」

「ご馳走さまでーす」

「可愛い子ぶるなガキ」

何故、私と皐月が2人でお洒落なカフェにいるのか。

それは、数十分前に遡る。

―――――――


――……



「藍、星渚さんお疲れ様でした!」

スタジオの外に出て、練習を終えた2人に手を振った。

「明日歌ちゃんもお疲れ様」

「また来週ねー」

2人を見送ってから、反対方向に体を回転。

「じゃ、私も帰ろっと」

家に向かって歩き始めようとした、ら。

「よし明日歌!これからあそこ行くぞ」

ガシッ、皐月の腕で首をホールドされた。私すごい間抜けな体勢になってる気がする。

何なんだ一体、と慌てつつも皐月の言うあそこにグルリと首を回す。それは、橋を渡った向こう側の道路沿いに建てられているカフェ。

「あの店のコーヒー、まじでうまいんだよ。だから行こうぜ!」

「いや、別に私と行かなくても」

「1人より2人の方が良いだろ?藍達は皆用事あって付き合ってくれないし、しかも今日夫婦かカップルで行くと割り引きになんだよ。だから、お前と行く」

言い分は最もだけどさ、突っ込みたいところがある。

「今、カップルで行くと割り引きって言った?」

「言った。俺とお前で付き合ってるフリして行けばよくね」

さも当たり前のように言ってのけた後、皐月は『俺としては』とつけ足す。

「お前が彼女とか不服だけどな」

「その言葉、そっくりそのまま返す!皐月が彼氏?冗談」

「年上にそんな態度で良いのか?ん?」

「調子に乗りまじだ」

妙な鼻声になりながらも反省の言葉を述べると、パッと離してくれた。自分の鼻をさすって労る。伸びちゃうでしょ!

「とにかく、ちゃんと付き合ってるフリしろよな!」

「フリって必要ある?」

「一応な。店員に疑われて冷めた目で見られたくないじゃん?」

「うん、実際偽カップルだけどね」

「細かいことは気にすんな!ほら、行くからチャッチャと歩け」

この後用事があるわけでもないし、別に良いかと皐月とカフェへ歩みを進めたのだった。



―――――――――

―――……


そして今に至る。

「で?私を誘った理由は別にあるんだよね?」

抹茶ラテに口をつける。

「は、別に、俺は」

「またまたぁ。分かるよ、それくらい」

女の勘をなめちゃいけません。犯人を問い詰める刑事の如く、ズイッと身をのり出し『当たりでしょ?』と再度聞く。

「……そうだよ。お前に聞きたいことがある。外で話すのは暑いし怠いだろ?それに、あいつらがいるとこで言うのも何だと思って」

皐月がストローでブロックの氷を突つけば、ガラリと音をたてて底に沈む。

「んじゃ遠慮なく聞くけど。お前さあ、何気にしてんの?何で悩んでんの?」

皐月の、力強い眼光。

「悩み?」

「ライブ終わってから、俺らの練習見に来ても妙に静かじゃん。いつもみたいに騒がないし」

立場逆転。今度は私が皐月に問い詰められる番だ。

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