群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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「私達も、練習始めようか。時間ないし」

「なら私は失礼して」

帰ります、と言おうとしたら。

「お前は残っていけよ」

「え、でも私必要ないよね?」

「お前が言い出したことなんだから、最後まで責任持ってここにいろ」

私の前に立って、通せんぼされた。

「俺、この学校来たの初めてなんだけど。知らねえんだけど。それなのに、1人置いてくわけ?」

私と碧音君のやり取りをハラハラ見守っている吉野先輩。

この中で1番か弱いというか、優しそうな雰囲気。

「碧音君なら大丈夫じゃない?むしろ周りの人がビクビクしちゃって近づけないと思うし。何もされないって」

「知ってる。でもいろ」

間髪入れずに返された。

そんなに私にいて欲しいって…………も、もしかして碧音君。

「1人じゃ寂しいの?心細いの?」

「ちがう」

「最初から言ってくれたら良かったじゃん寂しいって!やだ碧音君にそう言われたら断れないよぐふふ」

知らない場所で、知らない人と過ごすのが心細かったのね。大丈夫、お母さん一緒にいてあげる。

「刹那君、橘さん具合悪いのかな?変な笑い方して頭抱えてるけど頭痛いのかな?」

「こいつの通常運転これなんで」

オロオロしてハニーピンクのツインテールを振り乱す吉野先輩に、キッパリ告げる碧音君。

2人共、地味に酷い。

「俺はただ、お前の提案でこうなったんだから練習に付き合うべきだって言ってんの。寂しいとか関係無いんだよ変態女」

「それもそうか。でも、私邪魔ですよね?」

雨宮先輩にクルッと顔を向ける。私、手伝えることって多分ないし気が散ったりしないのかな。

「ううん、全然いても構わないよ。良いよね?」

「私は良いよ」

「俺も!聞いていってよ」

「橘さんが居て困る人はいないさ」

先輩達が快く賛成してくれた。見た目に反して心は優しい人ばかりだ。

「よし、決まりね。練習しようか。橘さんは自由に聞いたり何なりしてて」

「ありがとうございます」

先ずは教室の机を退かして広いスペースを作り、楽器を運び込む。

軽音は元々部員の人数も少ないせいか、専用の部屋は与えられていない。だからいつも廊下や教室で練習している。

「最初、ドラム抜きの3人でやってください」

教卓に背を預けて碧音君が指示。白石先輩も参加出来ないため、私達の側で聞く。

先輩身長高いですね!隣に立たれると自分がすごい身長低く思える。私、そこまで低くないんだけど。

「俺がカウントしよう」

「お願いします」

「いくぞ。1、2、3……」

白石先輩がカウントをとり、ドラム抜きでの演奏スタート。

カウントをとってくれたのは入りの部分だけ、更にリズムとりに重要なドラムもいない状況で、どれだけ出来るのか。

「――見えない、聴こえない、何も感じたくない。それでも僕は――」

雨宮先輩の、力強くてハスキーな声。

吉野先輩も可愛らしい外見とは裏腹に激しい弾き方。岡谷先輩も、同様。

「―――叫べ、叫べ。君に届くまで―――」

碧音君はというと、足でリズムをとりながら表情を変えずに先輩達を見たまま。今、何を考えているんだろう。

双眸はまるで音を品定めしているようで。

「―――進むしかない、振り返らずに行くしかないんだ。残像すらも―――」

サビが終わり、ラストまで後ちょっと。雨宮先輩の声量が落ちることもなく、安定している。

曲は聞いたことあるけど、それと比べると若干リズムが乱れるのが惜しい。

碧音君の目にはそれがどう映るのかが問題だ。


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