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しおりを挟む「ちなみにメニューはオムライス」
「超好き」
「おっしゃ、母ちゃんに言ってくるから待ってろ」
優希が『母ちゃーん!藍があ』とここまで聞こえてくる大音量で伝えている。
優希のお母さんにはお礼言っておかないとな。お母さんも優希と似ておおらかな人だしきっと『たっくさん食べてきな!』って言う。
床にだらしなく寝転がりゴロゴロしていたら、足音がドタドタドタドタ!忙しなく部屋に向かってきた。
お前は家の中でくらい落ち着いて行動しろよ。
「藍も食べるって言ったら、母ちゃん張り切って夕飯の準備してたぜ。藍はあんま食わねえっつったのにさあ」
「いいよ、限界まで食べる」
「でも誕生日に食い過ぎで腹痛くなったら笑えるよな」
そしたら帰りにドラッグストアに寄って薬買うし。せっかく作ってくれたものを残すのは嫌だ。
「夕飯まで何する?他のゲームやるか?」
「他のやつって?」
「じゃじゃん!最新のゲームソフト」
「知らないそれ」
「おまっ、知らねえのかよ。話題作じゃん」
俺は家でテレビゲームをやらない、というかそのゲーム機が無い。
親を好きじゃないのにそういう時だけ甘えて買ってと頼むのは都合が良すぎるし、ゲームを買えるお金があるなら部費や他の方に使えばいいと思ったから。
「早速やろうぜこれ!超面白いから」
「俺が勝っちゃうのがセオリーだな」
「藍は初めてやるゲームでも上手く出来るもんなあ、ずりいー」
「器用だからね」
最新というだけあって今までやらせてもらったゲームとはやはり設定も面白くなっていて、のめり込んでしまうほど楽しかった。
「手加減する?」
「されなくても勝てるしっ」
負けそうなくせして一生懸命粘る優希の必死さったら。
この諦めない姿は部活の時も同じだ。3年になって部長をやるのはこいつなんじゃないかと薄々感じる。
「俺勝っちゃうよ?」
「勝たせねえ」
「なら遠慮なく」
「ぁああ!!ゲームオーバー……」
「勝利2個分のプレゼントありがとう」
「てめっ!」
優希がコントローラーを放り投げ俺にふざけて掴みかかってきたところで『ご飯できたよー!下りてきなさい』戦い終了のゴングが鳴らされた。
足早にリビングに行く優希の後ろを急がずゆっくりと着いていき『夕飯、俺の分までありがとうございました』とお礼して椅子に座った。
「牧田君、こんにちは。初めましてだね」
「はい。牧田藍です」
優希のお父さんに会うのはこれが初めて。温厚そうな人だ。俺のお父さんは寡黙で無駄なことは話さない。
「いっただきます!」
「優希、口に頬張り過ぎ」
お母さんに苦笑いで注意されても優希は大口で食べ進めていく。よく噛んで食えよ。
お前のは飲んでるって言うんだよ。
「牧田君、美味しいかしら?」
「すごく美味しいです。俺、オムライス好きで」
「あら、良かったわ。お腹いっぱい食べなさいね」
「頂きます」
家族揃って食事。ニコニコ笑って今日はこういうことがあっただとかテレビ番組がどうとか話し合っていて、会話が途切れない。
暖かくていいな。飯がもっと美味しく思える。
……家族で何か一緒のことをして楽しんだ経験は、いつが最後だったんだろうか。最後になってしまったのは、何年前だろ。
思い返すのも、億劫だけどね。
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