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しおりを挟むそれからは家族のことが本当にどうでもよくなったせいか、家で飯を食べる時が1人であろうとも結人とすら挨拶を交わさなくなっても、特別な記念日に全員が揃わなくても。
前は胸がチクリと痛んだけどそれがなくなった。
気分も楽になった、これが正解だと。
足枷が外れた感じがして、今まで踏み込まなかった境界線も越え自分を満たしてくれるものを求めた。
先輩の紹介で知り合った年上の女の人とも遊んで寝たり、同じ学年の子とも付き合ったり。
だけど勉強に手を抜くことはなかったから、そこそこレベルの高い高校にも難なく合格出来た。
自分の器用な性格にこの時程感謝したことはない。
高校生になったら中学よりも規則が緩くなる。
教師も生徒と自ら関わろうとする奴も殆どいないし、何をやっても関係無いよな。
入学してもっと女遊びも激しくなり、タガが外れていった。
そんな日々を過ごしていた中、たまたま行われた席替えで彼女――—春に出会ったのだ。
「波江、ノート見せて」
「いいよ。はい」
授業中3分の2以上は夢の中だったから、ノートは全くとっていない。
可愛らしい桜色のノートには、丁寧で綺麗な字で書かれている。
図も分かりやすいし、教師の板書見るより波江のノートの方が役に立つ。
ササッと要点を真っさらなルーズリーフに書き写しありがとうと言ってノートを返すと『牧田君は寝るのが好きだねえ』と呆れるでもなく、クスクス微笑みながら教科書とノートを仕舞った。
染めてない天然の黒髪が窓から吹く風にふわりと波打ち、健康的な肌が見え隠れ。
俺がつるんでる女とは違って、顔は普通だしスタイルも普通。
でも、波江の雰囲気は誰よりも好きだと思った。
「牧田君、ジッと見られると恥ずかしい」
「ごめんごめん」
「牧田君がごめんを2回言ったらそれは適当に返してる時だね」
「え、分かる?」
「分かるよー」
そう、例えるなら名前の通り春、みたいな人だった。
―――――
―—…
「最近香水変えた?大分香りが薄くなったよ」
「俺、前から香水つけてないけど」
「嘘!だっていつも香水の匂いしてた」
「多分他のやつらのが移ってたからだわ」
他のやつらを正確に言えば、遊んでた女。
俺は最初は自分の香水をつけていたけど他の女もつけてることが多いから匂いが混ざって嫌だと思い、つけるのは止めたのだ。
そして、その香水の匂いがなくなった理由は殆ど遊ばなくなったから。
「牧田君から甘い香りがしないと、何か変な感じがする」
「じゃあ香水つけようか?」
「ううん。新バージョンの牧田君もいいと思う」
「からかってるな」
「私のチロルチョコ摘まみ食いした仕返し」
「波江のくせに生意気」
気づいたら、いつのまにか波江を好きになっていた。
他の女といても楽しくないと思い始めたのは、席が波江の隣になってから少し経った後。
波江といたいって思いは確実に心の底に積もっていって、また高2の春にやった席替えの時内緒で友達にくじを交換してもらい、波江の隣の席になったのだ。
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