群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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やっぱり、落ち着く。

「なみ、えはさ……いる?」

「何が?あ、お菓子くれるの?」

「違う。彼氏、いんの」

「い、いないけど……」

「そう」

絶対今、俺の顔にやけてる。気恥ずかしくて腕で顔を隠し波江に見られないようにした。

「急にどうしたの?そんなこと聞いて」

「気分的に」

「気分的にって。牧田君は気紛れな猫みたい」

「よく言われる」

「あははっ!やっぱり言われるんだ」

顔を隠していても今波江がどんな顔で笑ってるか言い当てられるくらいには、惚れてるよ、俺。

でも、波江も俺がどれだけ女を取っ替え引っ替えで遊んでいたのか知ってるから。

大抵俺が波江に分かりやすくアピールしても『はいはい』と流される。

自分に対するこのノリは誰にでも同じだと思われてるようで。

ちょっとやそっとじゃ全然ダメだった。俺って信用ないのな。

でも諦めずに攻めて漸く波江に俺が本気だと認められた。

「牧田君、このシチュエーションはもしかしなくても」

「もしかしなくても。波江の予想通り」

告白するために波江を呼んだのは、人気のない校舎の片隅。

「波江」

「はい」

「俺、波江が好き。付き合って」

「私でほんとにいいの?」

「波江がいいの」

他の誰かじゃ、意味ないんだって。

「っ……。私なんかで良ければ、こちらこそ付き合ってください」

顔をうっすら赤く染めてあたふたしてる波江が可愛いから、衝動に任せて啄むようなキスを1つ。

視線が、絡み合う。



本格的な夏に向けて青葉が萌える、頃だった。



—――付き合い始めてからしばらく経った頃。

「さあ!何か新しい変化はありましたか」

「……ない、無理だった」

注文したアイスカフェオレを口に含み、眉根を寄せた。

「根気がいるね」

春はこのカフェで人気だというチョコケーキにグサリ、フォークを刺す。

飲み物にアイスココアを頼むあたり、春の味覚は大丈夫かと心配になる。見てるこっちの口内が甘くなってきた。

「挨拶はさ、すると返してくれる。毎回めっちゃびっくりした顔で」

「何年もろくに挨拶してこなかった子供が言ってきたからだよ」

春と付き合う時に、お互い隠し事はなしにしようと約束したのだ。

それでちょうどいい機会だしいつかは気づかれると思い、家のことを話した。

春はこのままずっとずっと年月が過ぎてしまうのは切ないと、俺に家族の関係を修復するべきだと説得してきたけど、いきなり俺の気持ちも変わるはずもなく。

『俺は春がいたら幸せ』と言ったら、それは違うと抱き締められたのを覚えている。

彼女に気づかされ、考えも少しずつ変わっていって。

まずは基本の挨拶からやってみようということになり、現在実施中。

ただいまと言ったら、前とは異なり俺の顔を見て返事をしてくれる。

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