群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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「結人がさ、夜中の1時くらいに帰ってきたんだ」

「うん」

「俺が一方的にだけど話してた途中で、結人が貧血になって」

顔が苦々しく変わっていく。

「楽な体勢になれるように場所を変えるために手を貸したら、払い除けられた」

拒絶された、と。でも弟君ならやりかねない。

「顔のケガはその後階段で、ちょっとね」

重要なことではない付け加えのように、言う。

「ああいう時にさえ頼れなくさせた、俺が。結人を追い詰めたのも」

「藍1人のせいじゃ、ないよ」

藍が1人で家族を壊したわけでもないし、弟君を追い詰めたって言うけど藍だけが責任を背負う必要はないから。

背中に手を回して体を引き寄せる。

Yシャツの香りは甘ったるい香水の代わりに、ほのかな洗剤の香りになっていて。

「人の気持ちは、そう簡単に変わらないよね。例えば嫌いなものを好きになったり、苦手なことを克服するのにも時間が必要だもん。……これからも弟君とは今回みたいなことが続くと思う」

「覚悟してる」

覚悟していても、時々心が痛んでしまうのは仕方ないのだ。

藍がこうして悩んでることも、当然。

自分が傷ついても決意したら一切迷わずに寄り道しないで突き進まなきゃいけない、なんて誰が決めたの。

私はそんな綺麗死んでも藍に言わない、言えない。

「上手く、いかないね」

「何でだろ」

黄色の大輪が夕焼けにより橙色に変化して空も遠くから薄く紺色に色づくなか。

人気のない1本道で私と藍は2人―――泣いた。

藍は涙こそ見せなかったけど、きっと心で泣いていた。瞳がそう物語っていたから。

藍のYシャツにポタポタ私の涙が落ちて、染みを作る。ねえとまらないよ、涙がとまらない。

「春が泣くなよ」

そんなこと言われても、悲しくなっちゃったんだもん。

「藍、辛かったら私にその気持ち吐き出して。“俺のせいだ”って、自分を追い詰めないでお願い」

藍は他人を優先するから。自分は二の次で。

「藍は頑張ってる。だからお母さんやお父さんとも関係が良くなってきてるんだよ。前に進めてる」

「……ん」

「弟君も、昔は藍が大好きだった記憶があるから苦しんでるかもしれない。裏を返せば藍を完全に嫌いにはなれてないってこと」

「そうだといいな」

クシャリ、無理に笑って私の頬に残る涙の跡を指で拭った。

「藍には私がいるよ。私が支える」

そのために、私は藍の傍にいるんだ。

「春、ありがと」

「お礼なんていいよ」

弟君の気持ちを分かってあげられるのは、藍だけだから。

いつか一緒に笑い合える日がくるって、信じてるよ。

そう想いを込めて、強く手を握った。


—————————


———……


秋の色も深まってきた今日この頃、紅色や茶色の落ち葉を踏みしめて歩く帰り道。

「藍、最近嬉しそうだね」

「結人が家に帰ってくる日が増えたから」

「良い傾向だよ」

季節が夏から秋に移る間、俺が結人にうざがられるくらい『早く帰ってこい』『夕飯一緒に食おう』『結人が帰ってくるまで待ってるから』など色々言ってきたからか、結人が家に帰ってこない日が減ったのだ。

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