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遺産相続
朝から憑依
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勝淞寺の朝御飯の時間。
朝早くからお寺の掃除をしていた小学5年生の舞鼓童士は、食卓の席に着いた。
今、起きたばかりの高校一年生の早瀬夏実も食卓の席に着いた。
夏実の母の早瀬君子が、忙しく食卓に食事の皿を並べていく。
夏実の父の玄人と祖父の仁栄は、本堂で読経中である。
童士は、目のくりっとしたかわいい男の子である。ある理由から親戚である勝淞寺に預けられていた。
童士が目を瞑り、手を合わせて、いただきますと言った直後、ビクッと背筋を立てて目を見開いた。目の玉をぐるぐると忙しく動かすと、首を振って辺りを見回した。
挙動不審。
(これは、入られたわね)
君子と夏実は、様子がおかしい童士をじっと見た。
「おや、君子さん。朝御飯かの」
童士が早瀬君子に目を留めて言った。
そしてテーブルの上を嘗める様に見る。
「納豆は無いのかの?わしは、朝は納豆を食うことにしておるで」
「あら、そのしゃべり方は、山村さんのご主人。昨日、亡くなった」
君子がそう言うと、夏実が続いた。
「おじいちゃん。元気そうですね、死んだばかりなのに」
「おや、夏実ちゃん。相変わらずべっぴ・・・・すいません。不意をつかれました。邪気が全然無かったので警戒していませんでした」
童士の顔が元の愛らしい表情に戻った。
童士は、霊に憑依され易い生まれつきの霊媒体質なのである。
今、童士に入ったのは、昨日、75歳で亡くなった山村虎臣の霊である。
「ちょっと、今、相変わらずべっぴんって言おうとしたの?」
夏実が体を乗り出して童士につめよった。
「山村のおじいちゃん、どうしたの?」
君子が童士に聞いた。
童士は憑依されてる間に山村虎臣と話をしていた。
「今日10時からご自宅で遺言書の開示があるそうです」
(私は、無視か)
夏実はテーブルに乗り出したまま固まった。
童士は、君子の顔を見て言う。
「その席に行って、桜子さんが相続を放棄しない様に言いたいそうです」
「桜子さんって、住み込みで山村さんを介護していた方よね。娘の萌萌ちゃんと一緒に住み込んでいる」
君子に続いて夏実が言う。
「三人で散歩している姿、よく見たわよ。桜子さんがおじいちゃんの車椅子を押して、中学生の萌萌ちゃんが楽しそうに横についていたの。本当の家族みたいだった」
童士が、淡々と語る。
「山村さんは、長い間、お世話してくれた桜子さんにも感謝の印に遺産を分けたいそうです。」
「よくやってたもんね、桜子さん」
夏実が姿勢を直して童士を見る。
「しかし、山村さんの三人の息子さんとその嫁達が、桜子さんに遺産を放棄する様に迫るに違いない、それに負けて桜子さんなら遺産を放棄すると言い出すだろうから、そんな事があってはいけないと。それで、その席に出たいと言ってます」
山村虎臣は、同じ町内に住む、会社をいくつも持つ資産家である。
15年前、70歳の時に脳梗塞を発症して右側半身不随になった。
当時、既に妻は亡くなっており、同居の家族は居ず、直ぐに特別養護老人ホームに入れられた。
5年間は、施設で暮らしたのだが残りの10年間は、自宅で過ごし、昨日、老衰で亡くなったのだ。
そして、その自宅での10年を世話したのが立川桜子さんであった。
「そういう事なら、童君、行ってあげたら?」
「行ってあげなよ童」
「しかし、僕には学校があるので」
「行ってあげたら?」
「行きな童」
「皆勤賞が・・・分かりました行きます」
「じゃあ、学校にお休みしますって連絡しなくっちゃね」
君子は、楽しそうに台所仕事を続けるのだった。
朝早くからお寺の掃除をしていた小学5年生の舞鼓童士は、食卓の席に着いた。
今、起きたばかりの高校一年生の早瀬夏実も食卓の席に着いた。
夏実の母の早瀬君子が、忙しく食卓に食事の皿を並べていく。
夏実の父の玄人と祖父の仁栄は、本堂で読経中である。
童士は、目のくりっとしたかわいい男の子である。ある理由から親戚である勝淞寺に預けられていた。
童士が目を瞑り、手を合わせて、いただきますと言った直後、ビクッと背筋を立てて目を見開いた。目の玉をぐるぐると忙しく動かすと、首を振って辺りを見回した。
挙動不審。
(これは、入られたわね)
君子と夏実は、様子がおかしい童士をじっと見た。
「おや、君子さん。朝御飯かの」
童士が早瀬君子に目を留めて言った。
そしてテーブルの上を嘗める様に見る。
「納豆は無いのかの?わしは、朝は納豆を食うことにしておるで」
「あら、そのしゃべり方は、山村さんのご主人。昨日、亡くなった」
君子がそう言うと、夏実が続いた。
「おじいちゃん。元気そうですね、死んだばかりなのに」
「おや、夏実ちゃん。相変わらずべっぴ・・・・すいません。不意をつかれました。邪気が全然無かったので警戒していませんでした」
童士の顔が元の愛らしい表情に戻った。
童士は、霊に憑依され易い生まれつきの霊媒体質なのである。
今、童士に入ったのは、昨日、75歳で亡くなった山村虎臣の霊である。
「ちょっと、今、相変わらずべっぴんって言おうとしたの?」
夏実が体を乗り出して童士につめよった。
「山村のおじいちゃん、どうしたの?」
君子が童士に聞いた。
童士は憑依されてる間に山村虎臣と話をしていた。
「今日10時からご自宅で遺言書の開示があるそうです」
(私は、無視か)
夏実はテーブルに乗り出したまま固まった。
童士は、君子の顔を見て言う。
「その席に行って、桜子さんが相続を放棄しない様に言いたいそうです」
「桜子さんって、住み込みで山村さんを介護していた方よね。娘の萌萌ちゃんと一緒に住み込んでいる」
君子に続いて夏実が言う。
「三人で散歩している姿、よく見たわよ。桜子さんがおじいちゃんの車椅子を押して、中学生の萌萌ちゃんが楽しそうに横についていたの。本当の家族みたいだった」
童士が、淡々と語る。
「山村さんは、長い間、お世話してくれた桜子さんにも感謝の印に遺産を分けたいそうです。」
「よくやってたもんね、桜子さん」
夏実が姿勢を直して童士を見る。
「しかし、山村さんの三人の息子さんとその嫁達が、桜子さんに遺産を放棄する様に迫るに違いない、それに負けて桜子さんなら遺産を放棄すると言い出すだろうから、そんな事があってはいけないと。それで、その席に出たいと言ってます」
山村虎臣は、同じ町内に住む、会社をいくつも持つ資産家である。
15年前、70歳の時に脳梗塞を発症して右側半身不随になった。
当時、既に妻は亡くなっており、同居の家族は居ず、直ぐに特別養護老人ホームに入れられた。
5年間は、施設で暮らしたのだが残りの10年間は、自宅で過ごし、昨日、老衰で亡くなったのだ。
そして、その自宅での10年を世話したのが立川桜子さんであった。
「そういう事なら、童君、行ってあげたら?」
「行ってあげなよ童」
「しかし、僕には学校があるので」
「行ってあげたら?」
「行きな童」
「皆勤賞が・・・分かりました行きます」
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君子は、楽しそうに台所仕事を続けるのだった。
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