つつ(憑憑)

九文里

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遺産相続

おろす

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 男の子は、童士である。部屋の前に着いたところだった。

「お話があります。もう一度中に戻って下さい」
 小学生の男の子は、桜子の腕を持ったまま、閉まりかけのドアを押し開けた。
 桜子は、わけが分からずそのまま引っ張られた。
 萌萌ももも、「ちょっと」と文句顔をして桜子の後についていく。

 部屋の中の息子達の視界の中で、桜子が出たあと閉まりかけたドアが、再び開いた。
 そして、そこには小学生の男の子と桜子が立っている。

 何事かと思った幸一が問い質した。
「何だ君は?」
「いま大事な話をしているんだ、出ていきたまえ」

「黙れ、馬鹿者どもが!」
 小学生の男の子がいきなり怒鳴り声をあげたので、部屋の中の全員が固まって童士を見た。
 
「幸一、おぬし、葵通信社を吸収合併する前に、ダミー会社に葵の株式を大量に買わせていたな」
 童士が、そう言うと長男の幸一は驚いた様に言葉が出た。

「な、なに、何でそれを」

「兄さん、インサイダー取引をしたのか」
 次男の達次が言う。

「達次。お前は、広告宣伝費で裏帳簿をつけとるな」
 
「えっ、なななんでその事」
 達次が慌てて言う。

「嘉三。秘書のとは、まだ続いてるのか?」
 
 三男の嘉三が立ち上がって横にいる妻の貴子を見た。

「あなた!本当なの」
 貴子が嘉三を睨む。

「わしは、病床に居ようとも、会社の情報は逐一入ってくる様にしておる」

「親父の話ぶりだ」
 幸一が混乱して言う。

「失礼しました。また、山村虎臣さんが勝手に出てきました」
 童士は一礼した。

「僕は、霊媒士です。山村虎臣さんの言葉を伝えるため、山村さんに呼ばれて参りました」
「桜子さん、萌萌さんお座り下さい」
 童士は、横で呆然としている桜子と萌萌にソファーに座るように促した。
 二人がおずおずと手前のソファーに座ると、童士はその背後で少し離れた所に正座した。

 皆、何が起こっているのか分からないまま、正座する小学生を見つめている。
 桜子と萌萌は体をひねって背後を見る形で童士を見つめた。

「それでは、正式に山村虎臣氏を我が身におろします」
 そう言って、童士は目を瞑り黙した。

 漸くして、口を開く。
「わしは、山村虎臣じゃ。」

一同にざわめきが伝播した。

「昨日、わしは死んだ。だが、お前達に言っておかなければならない事があるので、この子に頼んで再び出てきたのじゃ」
 
「知っての通り、わしは15年前、脳梗塞で倒れて右半身が全く動かなくなってしまった。」

「歩く事は、もちろん出来なくなり、物を食うことも一人では出来ない、トイレも人に支えてもらわないと出来なくなった」

「わしは、絶望した、苦しかった、既に妻を亡くしていたから頼りになるのは、お前達だけだった。しかしお前達は、面倒をみようともせずさっさっと特別養護老人ホームに押しこんだな」

 長男の妻の美耶子が慌てた様子で言う。
「押しこんだって、そんな事・・」







 


    
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