つつ(憑憑)

九文里

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白い手

走る蝶々

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 林間学校は、一目目の朝、学校に集合して、小学五年生全員バスに乗り、山間部の宿泊施設に移動する。
 昼から、予定の説明と注意事項を確認して、夜にかけてキャンプファイアと飯ごうすいさんを行う。
 二日目は、朝食の後、森の中を地図を持って探索する。
 探索と言ってもコースは決められていて、道も整備されている遊歩道である。
 昼過ぎには、帰路に就き学校に戻る予定になっている。
 
 バスの中で、佳雄はずっと窓の外を見ていてそわそわしている、広太は憮然としているが、自分をふった真理子が同じ班に居るので気まずい様であった。
 真理子は、広太の事は全く気にすること無く、マイペースで過ごしていた。
 初日は無事終わり、就寝の時間になった。
 広太と佳雄の間に童士が寝る。
 もしも夜中に憑依された場合を考えて、「夜中に何か口走っても気にしないで下さい」と二人に念をおしておいた。
 両側の二人は、きょとんとして、そんなに寝言を言うのか、ぐらいにしか思っていなかった。
 
 翌日は朝食を取ったあと、森林の探索に出た。児童全員出発したが、行動するのは、班ごとで行う。
 山林の中の整備された道には、樹冠から日の光が射し込んでいる。
 児童達は長い列になってその道を進んで行く。
 その中に、童士達の班も紛れていた。
 先頭は童士が歩き、一応手に地図を持っているが、見なくても全然道が分かる。
 その後で、不機嫌そうな広太がちらちらと、後にいる真理子を見ている。
 真理子は祥子と並んで歩いている。
 祥子は、クラスで女子の人気ナンバーワンの童士が一緒の班なので浮かれているのか、ずっと笑っている。
 そして、遅れて佳雄が申し分けなげに歩いている。
 一時間も歩くと休憩時間になった。
 童士が、道行きを地図で確認しながら、立って休んでいると、真理子がやって来て祥子の様子がおかしいと言う。
 
「舞鼓君、飯田さんの様子がおかしいの」

「おかしいって、どうおかしいんですか?」

「飯田さん、機嫌がいいみたいだけど、ずっと笑っているの」

「笑っているんですか?」

「私達、会話してないのにあの子、ずうっと笑っているのよ」

 童士は、少し離れた木の下に座っている飯田祥子の方を見た。
 すると祥子が、立ち上がり
「蝶々」「大きな白い蝶々が走ってる」と言って森の奥を見ている。

「蝶々?」
 童士が祥子の見ている方を目で追うと、白い物が動いているのが目に入った。
 しかし、それを見た童士は、顔をしかめた。

「あれが蝶々に見えるのか」

 それは、白い手だった。白い手が地面を滑って森の奥に入って行った。
 祥子は、走り出した。白い手を追って森の中へ姿を消して行く。
 童士は、直ぐに祥子を追って森の中へ走っていった。
 そして、真理子も童士のあとを追って森の中へ入って行く。
 それを見ていた広太も真理子を追いかけて行く。
 皆が森の中へ入って行ったので佳雄も森の奥へ走って行った。
 
   
 
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