つつ(憑憑)

九文里

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白い手

身軽な少女

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「飯田さん」
 童士は呼びながら祥子を追いかけた。
 祥子は、運動は苦手の筈なのに、素早く木を避けながら走って行く。

 (追い付けない)
 童士は、足元にはっている木の根に足を取られない様に気をつけながら、目の前に飛び出してくる枝を避けて走るので、なかなか思うように走れない。
 それなのに祥子は、足元の根も体をさえぎる枝も軽業師の様によけていった。
 どんどん先を行く祥子を、遂に見失ってしまった。
 流石に息を切らして、祥子の消えた方に歩いて行くと、大きな木の根元に座り込んで、茫然としている彼女を見つけた。

「飯田さん」
 童士が祥子の前で膝をついて声をかけると、彼女は童士に目の焦点を合わせて、「舞鼓君」「ここどこ?」と周りを見渡した。
 
「舞鼓君」
 遠くで童士の名前を呼ぶ声がした。真理子だった。

「ここです」
 童士は応えた。

 祥子に手を貸して立たせていると真理子が、姿を現した。
 
「だいぶ奥まで来ました。急いで皆なところへ戻りましょう」
 童士は、何が起こっているのか、周囲に気を配りながら二人を促す。

「飯田さん、大丈夫?」
 真理子は祥子の手を取り、童士について歩く。

 来た道を戻っていると広太が現れた、次いで佳雄も見えた。
 
 五人は、来た道を戻っていたが、なかなか元の道が見えなかった。
 昼も過ぎてだんだん不安になってきた時、「あそこに誰かいる」と佳雄が指さした。
 そちらの方を見ると遠くに何か動く物が見える。
 五人はそこを目指して歩いた。 
 人影が見えた所まできたが、誰も居ない。
 全員で周囲を見回したが、誰もいない。
 諦めて元の道に戻ろうとしたら後から声がした。

「貴方達、こんな所で何をしてるの」
 木の影から人が出て来て声をかけてきた。

 担任の新発田初枝だった。 体育会系のベテランで、厳しい指導をする先生だ。外見は、ゴリラに似ている。

「貴方達が林の中に入って行くのを見て追いかけてきたのよ。勝手な行動をしたら駄目じゃない」

 新発田先生は、険しい顔で言うが、子供達は先生の顔を見てほっとした。

「さぁ、行くわよ」

 先生を先導に、五人ともついていく。


「おかしいわね」

 来た道を戻っている筈なのに、全く元の場所に戻れない。戻れそうな気配もしなかった。
 携帯電話も圏外。もう、学校に戻るバスの時間になる。今頃は、宿泊所は大騒ぎになってるはずだ。先生も焦って来た。

(誘い込まれた)
 童士は簡単には抜け出せないと感じていた。
 
 そして、日が傾いて来る。
 日が沈むと林の中は、真っ暗になる、動き回るのは危険だ。皆、不安だった。先生は、どこか夜を越せる場所がないだろうかと考えていた。
 
「あっ」
 一番後にいた佳雄が声を出して、皆の中を抜けて前に出てくる。

「先生、こっち」
 そう言って、佳雄は右側を指さした。
 童士も、佳雄が指し示した方を見ると「あっ」と声を出し、先生に向かって言った。

「先生、大丈夫です、佳雄君の言う方に行きましょう」

 童士も佳雄のあとに続くので皆もついて行く。



 
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