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白い手
花の咲く丘
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「うわー」
広太が、佳雄の前方を見て驚いて声をあげ、体を返して反対方向に走り出した。
「前島君、見えるのか」
童士は、広太のあとを追った。
広太は見た。
佳雄の前方の藪の中から白い手が、肘から上が突き出しているのを、そして、手のひらをヒラヒラさせ佳雄を手招きしていたのを。
佳雄は、手の呼ぶ方へ進んでいた。
童士が追いかけていると、その目の前で、地面から出た白い手が広太の足首を掴んだ。
広太は、つんのめり前にある崖に頭から落ちて行った。
幸い、崖の高さは3メートルほどしかなかった。
童士は、法面に出ている木の枝を掴んで下に降りた。
広太の側に駆け寄る。そこに新発田先生が降りて来た。
「前島君」
先生が声を掛けるが広太は、返事をせずグタッとしている。
「大きな怪我はしてないみたいだけど」
広太の鼻に耳を近づけて息を確かめる。
「たいへん、息をしてないわ」
先生は、広太を平な所へ移動させると広太の胸に手を当てて人工呼吸を始めた。
そこに真理子も降りて来た。
崖の上で、祥子と佳雄が見下ろしている。
先生が人工呼吸をしているのを見て、その背後で童士は崖の前で正座した。
「呼び戻します」
そう言うと目を閉じた。
真理子は、童士の側でその様子を見ていたが、童士が体を崩したので、思わず座り込んで童士の体を支えた。
その瞬間、真理子は森とは違う場所にいた。
何処かの丘で、辺りは視界の届く限り、ピンクの花で覆われていた。丘の頂上の背後は、真っ青の空が広がっている。空には、雲がぽっかりと浮かんでいる。あまりに綺麗な光景だった。
「ここは、何処?」
真理子が呟くと、前にいた童士が振り向いた。
「後藤さん!どうして此処にいるんですか?」
「あっ、舞鼓君」
「舞鼓君が目を瞑って倒れそうだったから、体を支えたら此処にいたみたい」
「えっ、そんな事あるんですか。僕が連れて来てしまったんですね」
「舞鼓君が?」
「ここは、死んだ人が来る所です。前島君を呼び戻しに来ました」
「まだ、魂の緒が繋がっていれば体に戻せます」
「前島君を探すの?」
童士は、丘の下を指さした。
「あの川を、前島君が渡る前に見つけないと」
丘の下は砂利の河原に続いている、その先に川が流れていた。青く透き通り底の石が見えている。
数人が川の中を歩いていた。
「あっ、あそこ」
真理子が、指をさした。
童士がその方を見ると、広太が河原を歩いている。背中からは細い糸が花畑の方へと延びていた。
「前島君。良かった、まだ魂は繋がっている」
「行きましょう」
童士と真理子は、丘を駆け降りた。
広太が、佳雄の前方を見て驚いて声をあげ、体を返して反対方向に走り出した。
「前島君、見えるのか」
童士は、広太のあとを追った。
広太は見た。
佳雄の前方の藪の中から白い手が、肘から上が突き出しているのを、そして、手のひらをヒラヒラさせ佳雄を手招きしていたのを。
佳雄は、手の呼ぶ方へ進んでいた。
童士が追いかけていると、その目の前で、地面から出た白い手が広太の足首を掴んだ。
広太は、つんのめり前にある崖に頭から落ちて行った。
幸い、崖の高さは3メートルほどしかなかった。
童士は、法面に出ている木の枝を掴んで下に降りた。
広太の側に駆け寄る。そこに新発田先生が降りて来た。
「前島君」
先生が声を掛けるが広太は、返事をせずグタッとしている。
「大きな怪我はしてないみたいだけど」
広太の鼻に耳を近づけて息を確かめる。
「たいへん、息をしてないわ」
先生は、広太を平な所へ移動させると広太の胸に手を当てて人工呼吸を始めた。
そこに真理子も降りて来た。
崖の上で、祥子と佳雄が見下ろしている。
先生が人工呼吸をしているのを見て、その背後で童士は崖の前で正座した。
「呼び戻します」
そう言うと目を閉じた。
真理子は、童士の側でその様子を見ていたが、童士が体を崩したので、思わず座り込んで童士の体を支えた。
その瞬間、真理子は森とは違う場所にいた。
何処かの丘で、辺りは視界の届く限り、ピンクの花で覆われていた。丘の頂上の背後は、真っ青の空が広がっている。空には、雲がぽっかりと浮かんでいる。あまりに綺麗な光景だった。
「ここは、何処?」
真理子が呟くと、前にいた童士が振り向いた。
「後藤さん!どうして此処にいるんですか?」
「あっ、舞鼓君」
「舞鼓君が目を瞑って倒れそうだったから、体を支えたら此処にいたみたい」
「えっ、そんな事あるんですか。僕が連れて来てしまったんですね」
「舞鼓君が?」
「ここは、死んだ人が来る所です。前島君を呼び戻しに来ました」
「まだ、魂の緒が繋がっていれば体に戻せます」
「前島君を探すの?」
童士は、丘の下を指さした。
「あの川を、前島君が渡る前に見つけないと」
丘の下は砂利の河原に続いている、その先に川が流れていた。青く透き通り底の石が見えている。
数人が川の中を歩いていた。
「あっ、あそこ」
真理子が、指をさした。
童士がその方を見ると、広太が河原を歩いている。背中からは細い糸が花畑の方へと延びていた。
「前島君。良かった、まだ魂は繋がっている」
「行きましょう」
童士と真理子は、丘を駆け降りた。
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