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宿貰い
雨宿り
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楓香が高校一年生になってしばらく経った五月の朝。
撫子は、掃除をするため門の前に出てきた。
空は暗い雲で重たく覆われている。
何処からか飛んで来た落ち葉を掃いていると、首筋に水滴が落ちてきた。
空を見上げると雨の筋が見える。慌てて門の屋根の下に入ると、あっと言う間に雨が屋根を叩く音が聞こえてきた。
門から家の玄関まで少し離れているので、雨に打たれて家に入ろうか迷っていた。
すると、道の向こうの方から誰か歩いて来るのが見える。傘を差していない。
雨の中を傘も差さずに歩いているわ。
そう思いながらよく見ると中折れ帽によれよれのコートを着た男が、雨の中を濡れながらやって来る。
その男が門の前までやって来ると、撫子は男に声を掛けた。
「どうぞ、こちらにお入りください」
男は、立ち止まりそれから撫子を見た。
「いいのですか」
「どうぞ、どうぞ」
男は、門の屋根の下にやって来て「ここでいいですか」と聞いた。
撫子は、少し端に寄って言う。
「私は、こちらの場所にいますから、そこはあなたの場所です」
「本当によろしいんですか、これ程の恩恵にあずかるとは、何とお礼を言ってよいのか」
「いえ、困った時は御互い様で」
撫子は、これぐらいの事で、大げさな人だな、と心に過った。
雨が止みそうもないので、撫子は家の中に入る事にした。
「それじゃ、好きなだけ居て下さい」
門を出て大急ぎで玄関まで走り、戸を開けて中に入った。
「早瀬さんの家お寺さんなんだ。じゃあ、お化けとか見たことあるの?」
富貴楓香は、隣を歩いている早瀬夏実に話しかける。
「いや、私は無いけど、しょっちゅう霊に憑依されてる奴は知ってるよ」
「えーっ、そうなんだ」
楓香は、なんと言っていいか分からず、とりあえず相槌を打った。
富貴楓香と早瀬夏実は、高校に入学すると同じクラスになった。
席も近い事もあり、喋っているうちお互い気が合う事が分かってきて、帰り道も途中迄は一緒だ。
今日は、朝から雨が降っていた。その雨も、昼過ぎにはあがり
夕方だが青空も見えていた。
学校からの帰り、楓香は夏実と別れて自分の家に向かった。
撫子は、雨なので家に入ってからは、一目中家の中でマンション管理を委託している不動産会社の書類に目を通していた。
夕方になると、夕飯の支度を始めようと席を立った。買い物に行って無いので、有り合わせの物で何を作ろうか思案していた。
すると、台所の勝手口が凄い勢いで開いた。
「お母さん、あれ何?」
楓香が飛び込んで来たと思ったら、ただ事では無い様子で叫んだ。
「あら、楓香。どうしたの、裏口から入ってきたの?」
「あの門に立ってる男は何?誰って聞いたら、ここの主ですと応えて、追い払われたんだけど」
「えっ、門に立ってる男?」
「配達の人かしら、呼び鈴が聞こえなかったけど」
「そんな感じじゃなかったわよ。この時期にコート着て、紳士みたいな帽子を被ってたから。言ってる事も変だし」
「えっ、コートを着ている人」
「まさか、今朝、雨宿りに門の中に入れた人?」
「でも、雨が止んで半日以上経つから、もう居ないと思うけど」
撫子は、勝手口を出て、訝しく思いながら門に歩いていった。
そして、その後を楓香も尾いていった。
撫子は、掃除をするため門の前に出てきた。
空は暗い雲で重たく覆われている。
何処からか飛んで来た落ち葉を掃いていると、首筋に水滴が落ちてきた。
空を見上げると雨の筋が見える。慌てて門の屋根の下に入ると、あっと言う間に雨が屋根を叩く音が聞こえてきた。
門から家の玄関まで少し離れているので、雨に打たれて家に入ろうか迷っていた。
すると、道の向こうの方から誰か歩いて来るのが見える。傘を差していない。
雨の中を傘も差さずに歩いているわ。
そう思いながらよく見ると中折れ帽によれよれのコートを着た男が、雨の中を濡れながらやって来る。
その男が門の前までやって来ると、撫子は男に声を掛けた。
「どうぞ、こちらにお入りください」
男は、立ち止まりそれから撫子を見た。
「いいのですか」
「どうぞ、どうぞ」
男は、門の屋根の下にやって来て「ここでいいですか」と聞いた。
撫子は、少し端に寄って言う。
「私は、こちらの場所にいますから、そこはあなたの場所です」
「本当によろしいんですか、これ程の恩恵にあずかるとは、何とお礼を言ってよいのか」
「いえ、困った時は御互い様で」
撫子は、これぐらいの事で、大げさな人だな、と心に過った。
雨が止みそうもないので、撫子は家の中に入る事にした。
「それじゃ、好きなだけ居て下さい」
門を出て大急ぎで玄関まで走り、戸を開けて中に入った。
「早瀬さんの家お寺さんなんだ。じゃあ、お化けとか見たことあるの?」
富貴楓香は、隣を歩いている早瀬夏実に話しかける。
「いや、私は無いけど、しょっちゅう霊に憑依されてる奴は知ってるよ」
「えーっ、そうなんだ」
楓香は、なんと言っていいか分からず、とりあえず相槌を打った。
富貴楓香と早瀬夏実は、高校に入学すると同じクラスになった。
席も近い事もあり、喋っているうちお互い気が合う事が分かってきて、帰り道も途中迄は一緒だ。
今日は、朝から雨が降っていた。その雨も、昼過ぎにはあがり
夕方だが青空も見えていた。
学校からの帰り、楓香は夏実と別れて自分の家に向かった。
撫子は、雨なので家に入ってからは、一目中家の中でマンション管理を委託している不動産会社の書類に目を通していた。
夕方になると、夕飯の支度を始めようと席を立った。買い物に行って無いので、有り合わせの物で何を作ろうか思案していた。
すると、台所の勝手口が凄い勢いで開いた。
「お母さん、あれ何?」
楓香が飛び込んで来たと思ったら、ただ事では無い様子で叫んだ。
「あら、楓香。どうしたの、裏口から入ってきたの?」
「あの門に立ってる男は何?誰って聞いたら、ここの主ですと応えて、追い払われたんだけど」
「えっ、門に立ってる男?」
「配達の人かしら、呼び鈴が聞こえなかったけど」
「そんな感じじゃなかったわよ。この時期にコート着て、紳士みたいな帽子を被ってたから。言ってる事も変だし」
「えっ、コートを着ている人」
「まさか、今朝、雨宿りに門の中に入れた人?」
「でも、雨が止んで半日以上経つから、もう居ないと思うけど」
撫子は、勝手口を出て、訝しく思いながら門に歩いていった。
そして、その後を楓香も尾いていった。
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