つつ(憑憑)

九文里

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宿貰い

私の棲家

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 あの男だった。今朝方雨の中を傘を差さず歩いていた、雨宿りに門の屋根の下に招き入れたあの男が、とっくに雨もあがって日も射しているのに、まだ門の中に立っている。

「あの」
 撫子は、怖ず怖ずと男に尋ねた。

「何をしているのですか?」

「これは、これは、ご主人」
「ここは、私の棲家ですのでここにおるのです」

「す、棲家!」
(何を言っているんだ、この人は)
楓香は撫子の後ろで男を見つめる。

「私は、長年、都の城門の天井に住んでいたのですが、その城門が朽ちて崩れてしまってからは、各地を転々とし、仮住まいをしては住める所を探していたのでございます」
「人の居なくなった崩れかけの小屋を借りたり、山の中の穴の中に住んだりして参りました」

(???都の城門って何処の話しをしてるんだろう。)

「それは、ご苦労されてこられたのですね」

(お母さん、何、同情してるのよ!)

「しかし、いずれもしがない仮住まいでございます。心休まる安住の地ではありませんでした」

「それが、この度、御主人から門を譲り受ける事が出来ました」
「私、実は、居を譲り受けた事は、初めてでして、そのため自分の棲家を初めて持てる事が出来ました。こんなに嬉しい事はございません。誠に感謝しております」

「まあ、困ったわ。そんなに感謝されても」
「ここを貴方にあげたわけじゃないのよ」

「しかし、今朝、御主人はここは私の場所だと仰った。それに、好きなだけ居ていいとも」

「それは、確かに言いましたが、それは雨の降ってる間だけ居ていいと言う意味で」

「成る程、分かりました」

「分かってくれました、申し訳無いけど・・」

「分かった、それは御主人の本意ではありませんね。後ろにいる女に言わされているのですね」

(ええーっ)
 撫子の後ろで聞いていた楓香は、こちらに飛び火してきたので驚いた。

「その女が何を言おうが、既にここの主は、私なのです。私は、ここを人に譲る気はありません」

「訳の分からない事を言って無いで退きなさいよ。警察を呼ぶわよ。家に入れないじゃない」
 楓香は、撫子の横に出てきて、男に怒った。

「私の棲家を通りたいのですか。それならば、通っても構いません。一回1000円貰います」

「はぁ、一回1000円って。バカじゃないの」

「駄目だ、お母さん警察を呼ぶわね」

「仕方ないわね」

 楓香は、スマホを出して警察に電話した。
 事情を話すと、すぐに最寄りの交番から警官をよこすと言う事であった。
 
 「さあ、すぐ警官が来るからね」
 楓香は、男を見てすぐ逃げるだろうとたかを括っていた。が、それは、甘い考えだったと思い知らされる事になるのだった。



 

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